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赤字や運転士不足が叫ばれる路線バス。今年2月には岡山県を中心とした両備グループが赤字路線バスの4割を廃止すると発表するなど、業界は崖っぷちに立たされている。

◆高速バスや補助金で赤字路線を穴埋め

 毎日の通勤通学で多くの人が利用する路線バス。鉄道のあまり走っていない地方を旅するときにも重宝する存在だ。しかし、日本の交通を支える路線バスが、今危機に陥っている。交通ジャーナリストで全国のバス事情に詳しい鈴木文彦氏は、なんと「全国のバス路線の約8割は赤字」と話す。

「バスは鉄道と比べて赤字額が少ないので、ローカル鉄道に関する議論の際に、『持続可能な交通機関』としてよくバス転換が挙げられます。しかし、実際は問題が山積みなんです」

 バス路線の維持に危機感を覚える自治体は少なくない。北海道根室市のある職員はこう語る。

「市内の路線バスにはすべて補助金が入ってます。だから鉄道が危機だと言っても、市としては『バスではなく鉄道を使って』とは言いにくい。財政も厳しいなか、補助金もいつまで続けられるか……」

 全国のバス事業者の主な収益は路線バスに加え、高速バスと貸切バスの三本柱で、これまでは高速バスや貸切バス、一部の黒字路線で赤字を埋め合わせてきた。高速バスは変わらず堅調だが、最近では貸切バスが厳しい状況になっているという。ご存じのとおり、’00年、小泉政権下規制緩和によって新規参入が相次ぎ、運賃の値下げ競争が加速。乗合バス路線を持つような既存事業者の多くが、赤字を補う重要な柱である、貸切バス事業の縮小や撤退に追い込まれてしまったのだ。

「団体旅行が減って市場が縮小していたところに規制緩和ですから、価格競争にしかならない。格安のツアーバスには既存のバス会社では対抗できません」(鈴木氏)

 規制緩和以降、貸切バス事業者は約3倍にまで増え、競争はさらに熾烈なものになった。’16年に起きた軽井沢スキーバス転落事故は記憶に新しいが、こうした事故も規制緩和による価格競争が一因とされることもある。

「3年前に運賃の値下げに制限が設けられ、一定の歯止めはかかりました。しかし、多くの事業者が撤退したあとでは、少し手遅れでしたね」(同)

 大きな柱を一本失い、バス事業者の収益の頼みの綱は高速バスと都市部を走る一部の黒字路線のみ。田舎を走る赤字路線の穴埋めも追いつかず、自治体などの補助金頼みの路線が増え続けている。

 赤字路線に苦しむ民間バス事業者の代わりに、地方交通を救う存在としてもてはやされたコミュニティバスも現状は芳しくない。ちなみにコミュニティバスとは、自治体主体で運行される路線バスのことだ。

「公共交通空白地帯を走るのが趣旨なので、そもそも黒字にはなりにくい。大都市圏ならまだしも、地方都市が簡単にマネしても意味がないんです。結果、空気を運ぶだけのコミュニティバスが全国に広がりました」(同)

 自治体のコスト負担によってかろうじて運行されているのだ。

<バス会社の3大収入源>

[路線バス]大都市圏では黒字だが……
 大都市圏や輸送量の多い区間を走る路線は黒字になりやすい。しかし、人口が少ない地域の路線のほうが多く、こちらは大赤字

[高速バス]豪華車両を投入して好調
 いわゆる夜行バスもこちらに含まれる。個室などを取り入れた豪華な車両も人気があり、バス事業者にとっては重要な収入源

[貸切バス]かつてのドル箱も今や低迷
 団体旅行の減少などもあって、’00年の規制緩和以降、価格破壊が進行。大手の事業者の撤退が相次いでしまった

― [路線バス]が消滅する! ―