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万能すぎる創造スキルで異世界を強かに生きる!/(旧題)創造の異世界転生記 作者:緋緋色兼人

第八章

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129.再びステアニア帝国へ

 <ワープ>で宿屋へと戻ってきた俺は周囲の様子を確認しようとして、意識を周りに向けた。
 その瞬間――前後左右から柔らかい感触が伝わってくる。状況を確認すると左右にエレノアとマリア、前に楓、後ろから彩花とアイリが抱きついてきていた。

「思ったより遅かったねー? 皆、ルイルイが帰って来るのを、今か今かと待ちかまえてたんだよー?」

 右からマリアのうきうきしたような声が聞こえてきたと思ったら、次は後ろから彩花の声が聞こえてくる。

「るいが帰ってきた時に、一番最初に抱きつけた人が一日二人っきりでデートって決めてね?」

「そうなのです! それで勝負してたのです!」

「勝てませんでした」

 次は左からやる気満々のようなエレノアの声が聞こえて、その次は後ろから意気消沈したようなアイリの声が聞こえた。

「今のは誰の勝ちかな? 私とエレノアとマリアがほぼ同時だったから、わからないなぁ」

 楓の言い方だと、誰が勝ったのか、わからないってことかな? 二人っきりで出掛けることはほとんどないからなぁ。
 今度時間があるときにでも、ひとりずつ交代で二人っきりのデートでもするかな。
 だけど、それをするのはレシアさんとティターニアを救って、さらに<エルフ王族から堕ちた者>について調べてからだ。

 それにしても、皆さっき風呂に入ったばかりだからとてもいい匂いがするし、きちんと手入れされた肌はきめ細かく、つやつやしていて、さらに柔らかい。
 まぁ、ここにはリベロさんがいるから、肌が露出されているのは腕くらいだけど。
 しかし……うーん、これは危険だな……すぐ側にはリベロさんもいるっていうのに、今の状態で元気になるわけにはいかない。 
 リサの父親がいる前で、アレを大きくするとかどんな羞恥プレイかと……

 俺は理性を総動員して、なんとか大きくなるのを押さえ込もうと努力しつつ、皆にちょっと離れてもらうことにした。

「少し遅れた。ごめんな? ちょっと牢獄に行って拷問用の魔道具を空木にセットしてきた。あとは……皆少し離れてくれるか? リベロさんの前でだとさすがに少し恥ずかしいから」

 俺がそう言うと、皆はしぶしぶながら離れてくれた。
 自由になった俺は改めて部屋の中を見渡した。部屋の中では、フェンリルとファフニールがベッドで横になって休んでいた。
 フェンリルは抜け毛がないからベッドの上に上がっていても問題ない。抜け毛が酷かったら、後始末が大変だから少し考える必要があるんだけど。
 シルフィとノームはフェンリルの上に乗って毛に埋もれていた。
 リベロさんは紅茶を飲んで休憩してたのかな? 今は椅子に座っている。

 一通りの確認が終わったので、ステアニア帝国へと行くことにするか。
 リベロさんも当然連れて行った方がいいよな。あと伝え忘れていることは……屋敷のことがあったか。

「マリアとエレノアは前に見たことがあって知ってると思うが、ジョージの屋敷を取り壊して、俺たち用に屋敷を建ててくれることになった。早めに工事をしてくれるみたいだ。出来上がったらそこを拠点にしようと思う」

 屋敷のことを知った皆は「きゃーきゃー」言いながら喜んでくれている。

「あと、石動はエウロの爺さんに預けてきたから心配ない。快く引き受けてくれた」

「良かった。これで石動さんは安心だね」

「石動さんにはまず気持ちを落ち着かせられる状況にしてあげないとね。お城で落ち着くかは分からないけど、それでも今までの環境よりは絶対にいいと思う」

 彩花と楓は石動のことを聞いて一安心したようだ。

「よし、遅れてしまったし急いで行くとしよう。リベロさんも用意はできてるかな?」

「ああ」

 リベロさんは立ち上がりながら返事を返してくれた。

「転移をするから皆俺に捕まってくれ。リベロさんも俺の身体のどこかに触れてもらえるかな?」

 俺がそう言うと、リベロさんが近づいて来てから背後に周り、俺の背中に手を置いた。
 女性陣も俺の腕や肩に手を触れた。そういえばマリアも今となっては<ワープ>が使えるようになってるんだよな。今度はマリアにも使わせるかな。

「目的地は……ステアニア帝国に泊まった時の宿屋近くでいいかな。行くぞ! <ワープ>!」

◇◇◇

 <ワープ>を使用した俺たちは、前に俺、エレノア、マリア、リサ、アイリで泊まったことがある『木漏れ日の宿』の近くの広場へと到着した。

 人通りが多い宿屋前よりは目立たないかなと思って、宿屋から少し離れた広場に転移してきたが……辺りには何人かの住民がいたようだ。
 そして、住民たちはいきなり現れた俺たちを見て騒ぎ出した。

「お、おい! 今あいつらいきなり現れたぞ!?」

「な、なんだ? あ、あれが噂の転移魔法か?」

「ん? あそこに黒髪の女の子が二人いるじゃないか。第九騎士団レオニアの人たちじゃないか? 少し前にお披露目をしてたよな?」

「そう言われると、あそこにいるのは黒髪の女の子だな。第九騎士団レオニアの人たち以外に黒髪なんて見たことないし……」

「今回のミドガル王国への出兵も転移魔法で行ったみたいだし、もうミドガル王国を滅ぼして帰って来たのか?」

 見当違いなことを言っている奴らもいたが、普通の住民をどうこうするわけにもいかないし。
 エレノア、マリア、リベロさんへの侮蔑の色が見て取れる視線はうざったく感じたが、脅威にもならいないので我慢して放置していくことにした。
  ガヤガヤとうるさい住民たちの側を通り過ぎながら、俺は目の前にそびえ立つステアニア帝城を視界に収めていた。

 そのまま人通りの多い通りを皆で歩きながら、俺は周りを観察していた。
 しかし、前に来た時も思ったが、帝都だけあってスタラバヤは本当に人が多いな。
 さまざまな店も至る所にあるし、なにより目に付くのは奴隷だな。人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、それに前は見掛けなかった魔族の奴隷もいた。
 全種族の奴隷が普通にいるのか、ここには。ステアニア帝国は見事なまでの奴隷国家だな。

 そのように周囲を観察しながら歩いていると、もうすぐ城門という所で、前方から黒い服装に黒い頭巾をかぶった者たちがこちらに近付いて来た。
 さっきから敵意なく俺たちを観察している者がいると感じていたが、こいつらか。

「あれはダークラス隊よ! 帝国だと恐れられている部隊ね」

 俺の横を歩いていた楓がそう言った。
 ダークラス隊ってのは確か……彩花たちを助けたこともあったんだよな。それに、リサとアイリがクロスたちから解放されるきっかけになったんだよな。

「あっちから何かをして来たら返り討ちにするけど、まずは話してみるか」

 俺の言葉に皆が頷いてくれた。
 数秒もすると、あちらの集団と俺たちの距離は一〇メートルほどになった。
 相手は二〇人はいるかな? 俺は相手を観察しながら、まず相手の出方を待つことにした。

「この先は帝城へと続く道だ。そこにいるアヤカ・テンドウ、カエデ・ヤシマと一緒にいるということは、お前が『ルイ』という者か?」

 集団の中の一人が俺にそう言ってきた。

「ああ。そうだな。俺のことを知っているようだな。お前らはダークラス隊とかいう奴らだろう? そこを遮るようなら押し通る。死にたくなければ――どいていろ」

 俺は軽く殺気を放ちながらそう言った。
 すると、集団の中から一人の男が出てきた。

「あーあ、怖い怖い! 君はキースを子ども扱いして殺したんだろう? キースを子ども扱いして殺せる者などここにはいない。いや、赤ん坊扱いというのならステアニア帝国にもいないなー。まぁ、一対一の闘技大会と、なんでも有りの殺し合いは別だけどね? 僕らが一番得意なのは暗殺だからねー。それにしても……仕事だったとはいえ、あのときは君たちを助けてあげたのに、こんな男を連れてくるなんてねぇ。まさに恩を仇で返すとはこのことだよー」

 その男はそう言って、彩花と楓を指差した。

「あなたはロウガ?」

「あららー。アヤカ・テンドウ、君は前までは『ロウガさん』って呼んでたのにねー。随分と強気になっちゃって」

「ふん、あの時は私たちは誓約の腕輪をはめられていたし、なによりステアニア帝国を利用してやったのよ! どう!? 悔しい? 私たちを異世界召喚した結果が今の状況よ? あなたたちの立場なら、もうミドガル王国へ攻め入った軍隊がどうなったのか知っているんじゃないの?」

「今度はカエデ・ヤシマかー。うんうん、そうだよ? 俺たちの隊長がそこにいる雌犬に世話になったらしいからねー」

 この副隊長のロウガという男は随分と飄々としているな。しかし、今こいつは聞き捨てならないことを言った。
 雌犬とはエレノアのことを指していたのだろう。こいつらは許さないと決意して、俺は一気に魔力を練り上げて一言呟いた。


「<グラビディステイフル>」

 ダークラス隊の頭上に虚空から黒いモヤが発生して、それがロウガ以外の者たちの頭上に一気に広がった。
 ダークラス隊が異変に気が付くと同時に、全てが終わっていた。

「うわ……エレノアを馬鹿にされただけでここまでするんだ? るい君さすがだね!」

 うーん、なぜか楓の目がキラキラしている。そして、俺はダークラス隊だったものに目を向けた。
 そこにはすでに人の姿を成していない――潰れに潰れてミンチ状になった物があった。
 他の人の反応も気になったので見てみると、彩花とアイリは目を伏せていて、エレノアとマリアは普通の顔をしていた。

 対人で重力魔法レベル9の<グラビディステイフル>を使ったのは初めてだが……自分で使っておきながら、これは……グロいな……
 この魔法の効果は虚空から黒いモヤを発生させてそれが超重力となり、対象を一気に圧殺するものだが……
 目の前の光景を見て、今後は対人にはこの魔法の使用を控えようかな? と思ってしまった。
 これは目に毒過ぎるから、普通に殺した方がいいな……

 今の一瞬で部下っぽい奴らを全員失ったロウガは放心状態になっていた。
 んー、かなり強くて副隊長だって聞いていたけど、さすがに今のは強烈だったかな?
 しかし、今のあいつは敵だ。わざわざ一番情報を持っていそうな副隊長を残してやったんだから、こいつに情報を聞くとしよう。
 あれ? でも、さすがにさっきの中に隊長はいなかったよな? んー、それは考えても分からないからいいか。

「おい! ロウガ! お前に聞きたいことがある! 俺が聞いたことには正直に答えてもらおう。もし、嘘を付いたら……お前もそこにいる奴らと同様にミンチになると言っておく」
アルファポリスから書籍化予定のため近日中に削除予定です。

本日、新作の「魔王ゲーム ~底辺魔王の成り上がり~」を投稿しました。
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