先週の記事で書いた通り、トヨタは驚異的な勢いで新技術の発表を続けている。
今度はエンジンとトランスミッションである。トヨタは2010年ごろから推進してきたTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)改革で、21年までに19機種、37バリエーションものパワートレインの投入をアナウンスしている。内訳はエンジン系が9機種17バリエーション、トランスミッション10バリエーション、ハイブリッド系システム6機種10バリエーションという途方もないものだ。
ハイブリッドはともかく、いまさらなぜ内燃機関なのかと訝る向きもあるだろう。トヨタによれば、今から12年後、30年ごろの見通しは年産1000万台を超えるトヨタの新車の中で、燃料電池(FCV)とバッテリー電気自動車(BEV)が100万台。マイルドハイブリッド(MHV)を含むハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(HV)が450万台。つまり合計550万台と全体の過半が何らかの電動デバイスを含む電動化車両になる。
しかし見方を変えれば、この中で内燃機関を持たないのはFCVとBEVの計100万台に過ぎない。言うまでもなくHV系にはエンジンが必要だ。つまり依然として900万台の車両には内燃機関が用いられる。
これをもって「日本のガラパゴス化」と言う人は例によって絶えないだろうが、そんなものはあと3年で先行きがはっきりする。「内燃機関廃止!」と騒いだ欧州メーカーが本当に約束通り19年にエンジンをゴミ箱に放り込んでいるかどうか。それは嫌でも目の前に現実として現れるだろう。実は答えはもう出ていて、当初威勢良く「エンジン廃絶」を唱えた各社は、後で問い詰められてこっそりと「ハイブリッドはやります」と内容を修正しているのだ。
さて、現実的な話。BEVやFCVはゆっくりと増えていくだろうが、それらが向こう10年や20年でエンジンを完全に駆逐する未来は来ない。変化はゆっくりと進んでいく。そしてその間も人類はモビリティを必要としており、その9割を支えるのは内燃機関である。それが分かっているからトヨタはこれだけの物量作戦を展開してパワートレイン改革を実行していくのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ますます厳しい時代になった今、これまでと同じビジネスのやり方が通用するとは思わな い方が賢明だ。そうした中、先行く変革者たちは何を考え、どう行動しているのだろう
体の状態を知ることができるセンシングアイウェア「JINS MEME」を2015年に発売し、世間を驚かせたジンズ。プロジェクトを育てた井上一鷹氏を突き動かす信念に迫った。