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父の思い出

既に書いたように、私の父はほとんど家にいなかった。大阪の自宅にはたまに帰ってくるだけ、という時期が長く続いた。私が小学生の頃からそうだった。だから、私は母と妹と祖母という女三人の中で育ったようなものだ。
父がほとんど家にいなかったため、悲しいことに私には父への愛着というものがまるでなかった。たまに帰ってきても、どこかのおじさんが帰ってきたかのような感じで、自分の父親が帰ってきたのだという意識も感情もなかった。これは本当に悲しいことである。自分の父親を父親だと心の底から認識出来ていないということなのだから。父が帰ってきても嬉しいという感情は起こらなかった。なにか緊張している自分がいたように記憶している。
父には何度か叱られた。怒ったときの父は恐かった。大声で怒鳴られたのを覚えている。その恐怖感はいまも私の心の底に残っているようだ。父はよくものを買ってくれた。ものを買うことで私への愛情を表現していたのかもしれない。それが、父の優しさだったのだろうか。
いずれにしろ父の思い出で楽しかったことは何ひとつない。あるのは、自分の父親でありながら親愛の情をもって接することが出来なかった悲しく寂しい思い出だけである。

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開​設日​: ​20​05​/6​/2​8(​火)​


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