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告白ーその1

私は、父の会社に入ることを決心した、と前回書いたが実は確たる決心をもってそう決めたのではない。
公務員をしていた、と書いたが本当はその時にはすでに公務員は辞めていた。なぜ辞めたのかは後日書くとして、父が亡くなった時は何の仕事にも就いていない状態だった。これから何をするかも決まってはいなかった。そんな宙ぶらりんの状態でいた時に父の死という最大級の不幸が襲ってきたのだ。
従業員や親戚の方からは、是非後を継いでほしいとの要請があった。しかし、自分には自信がない。でも
専務や常務や従業員の助けを得てならなんとかやっていけるかもしれない、という希望的観測もあった。それよりなにより今現在定職についていないという事実を考えるとき、わたしの心で甘い声がささやいた。これから何をするかの展望もない状態での今後の生活に対する強い不安がある。民間会社に勤める自信もないし、独立して自営業を始めるにしても果たして上手くやっていけるかどうかわからなかった。それなら、このまま父の会社に入れば社長という地位は得られるし、給料もサラリーマンよりははるかに沢山もらえる。気の向かない業種ではあるが、それさえ我慢すれば安定した生活は当面確保できる。それがいい。そうしろ。そうするしかいまのお前には選択肢がないじゃないか。―ーーそういった甘い声が聞こえていた。
そんなわけで私が父の会社に入ることを決心したのは、何もこの会社の為に身を粉にして働こうとか会社を維持し発展させていこうといった殊勝な心構えがあったわけではないのだ。ただ、あったのは利己的な考え方、功利的な考え方だけだった。そうすることが自分にとって都合がよかっただけなのだ。

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開​設日​: ​20​05​/6​/2​8(​火)​


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