財務省が「有罪」なら、朝日新聞の挙証責任は一層重い

2018年03月11日 01:00

朝日新聞の「続報」記事(9日朝刊より)

森友学園国有地を巡る決済文書の書き換え疑惑は、財務省が週明けに複数の文書が存在することを認める方針を固めた模様だ。共同通信の速報では「書き換えがあった」と認める方針を固めたと伝えているが、日経新聞は「書き換え疑惑が濃厚になった」と指摘しながらも、「複数の決裁文書が存在するのを認める」「複数文書の存在は認めるものの、現時点では実際に書き換えに関与した職員や時期、動機などは分かっていないもよう」などと抑制的に伝えている。

財務省が“有罪”であるかどうか、“罪状”の詳しい内容については、国会に報告された内容を見た上で正確に論評すべきと思うので、週明けあらためて取り上げたいと思う。

財務省は説明責任を果たそうとしているが、朝日新聞の状況は同じだ

しかし、財務省の決裁文書の書き換えも異例であるが、朝日新聞の報じ方も同じく異例であることは前回書いたとおりだ。仮に真実が、朝日新聞が報じた通りの100%の内容であったとしても、10日時点まで同紙が事実上入手した(紙面では「確認した」)という文書の中身について写真はない等の状況が続いている。

私が朝日記事を「怪文書未満」と書いたのは嫌味でも皮肉でもない。怪文書はリアルに存在するが、朝日が政界を大混乱に陥れている「書き換え文書」は、断片すら提示されていないことをさしている。前回記事のタイトルは「財務省に説明責任はあるが、朝日新聞も挙証責任がある」と銘打ったが、本稿執筆の11日未明時点の情勢は「財務省は説明責任を果たそうとしているが、朝日新聞も挙証責任がある」といったところだ。つまり朝日側の状況は変わっていない。

政権と財務省の対応に一義的な責任があるとはいえ、国会を混乱に陥れた直接のきっかけは朝日新聞なわけだから、朝日新聞の入手した文章はますます検証される必要がある。新聞記事は所詮“要約”にすぎない。この期に及んでまさかとは思うが、「結果オーライ」の可能性がまだ僅かにあるのは、池田信夫和田政宗氏が指摘するように、朝日が入手(確認)したのは、中途時点のドラフトの可能性も排除できないからだ(可能性は低くなっているが)。週明けに財務省が報告するものと同一なのかどうかこの状態では検証の術がない。

もしかしたら、近畿財務局職員の自殺や佐川氏の辞任、そして財務省が認めるという情勢変化を踏まえ、11日の朝刊以降で一定のものを出す可能性もある。しかし、再三繰り返すが、もし朝日がこのまま未来永劫、物的証拠を全く開示しないまま、麻生財務相の引責辞任、はては安倍政権の倒閣という事態につながってしまうとなると、悪しき前例を残すことになる。

文字だけの倒閣記事が招く恐ろしい事態

そういうと、左派連中は「安倍首相擁護で負け惜しみをしているんだろう」などと、私のことを中傷するんだろうが、これも前回書いたように、朝日が嫌いだからそうした指摘をしているのではない(そもそも朝日とこの件で直接論戦はしていないので負けるも勝つもない)。

なぜ悪しき前例となるのか。「こんな文書がありますよ」と文字だけの倒閣記事が横行することになれば、挙証の努力が不十分で、取材も甘くなる劣化記事が増えるだろうし、情報源あるいは書き手の政治的意図に基づく印象操作がこれまでよりも幅をきかせやすくなる。報道する側に対する検証材料がなくなることで、ある種のリミッターがなくなる。

そうなると、時の首相や大臣を陥れたくなった行政機関職員が、意図的に捏造して新聞記者にリークをしても「まあ、森友の時も文書の写真は出なかったし、新聞社の信用力で押し切れるだろう」と利用されてしまう危険が増えるだろう。あるいは、仮に左派政権が誕生した時に、読売や産経が本当にあるのかどうかもわからない、国会論議の中身と本当に同一なのかどうかもわからない「代物」に基づいて報道をし、断片的な話だけで国政をひっくり返す世論が形成することにつながることを許容することになる。

「情報源秘匿」と「一定の挙証」の両立の努力を

朝日が証拠を提示していないことへの批判について、私の古巣の大先輩のお一人、中村仁さん(元読売新聞大阪本社社長)は「報道・取材の自由を守るという基本原則への理解が足りない」と指摘されていた。私に対するお叱りの意味も込めていたのだろう。また、同じく大先輩の橋本五郎・特別編集委員もテレビで取材源の秘匿の必要性から理解を示していたとも聞いた。

もちろん、私はすべての情報を出せと言っているわけではない。不用意に出すことで情報源を守れなくてはジャーナリストの一丁目一番地の鉄則を果たせない。その上で、大先輩のお二人には恐縮だが、私は2点の理由から異論がある。

時の政権への異常なネガティブキャンペーンを繰り広げるほど、かつてないほど政治性を帯びるようになってきた、いまの新聞社を信頼しすぎていると思う。時の政権を倒すだけの影響力を持ちうるからこそ、読者や社会がその“権力行使”が適切なのか検証されるようにしておかなければならない。また、私が新聞社をやめてから広報の仕事を経験してきたことも踏まえれば、政治やビジネスの広報PR戦術の近年の高度化は、記者たちが思っている以上だ。これをネガティブに評価すると「世論操作」のテクニックは年々狡猾になっており、報道する側のリミッターが緩くなればいくらでも利用されかねない危険がある。

倒閣に繋がりかねないニュースであるからこそ、「情報源秘匿」と「社会的責任による一定の挙証」の両立の努力はしなければならない。情報源特定につながりかねない部分を排除しての断片的な写真、あるいはイラストによる部分再現のような最低限の努力もないまま、週明けから「麻生辞任」「安倍退陣」の喧騒に私たちは巻き込まれてしまうのだろうか。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事
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