リポート:餌取慎吾(おはよう日本)
中部地方の公立中学校で国語を教えている、中村先生です。
以前務めていた学校で、次々と増える仕事に追われ、生徒としっかり向き合えない、つらい経験をしたと言います。
中学校教諭 中村さん(仮名)
「これは僕の出退勤記録です。」
当時の1か月の出退勤表です。
1日の平均勤務時間は14時間。
忙しい日は、朝の7時40分から深夜1時まで。
勤務時間は、17時間を超えました。
放課後、翌日の授業準備のほかにも、国や県などに提出するさまざまな報告書や、保護者に向けたプリントの作成。
風邪で欠席した生徒の自宅に電話をかけ、体調の確認なども行います。
さらに増えてきたのが、新たな課題への対応です。
ネットやSNSを生徒たちが頻繁に利用する中、被害に巻き込まれないよう目配りしたり、トラブルに対処したりする仕事が増えたのです。
中学校教諭 中村さん(仮名)
「(生徒の)問題行動がSNSにもぐってしまって、例えば誰かの悪口を書いたとか、そういうのをひとつひとつ、放課後に(生徒を)残して話を聞いて、事実だったら保護者に連絡して指導する。
そういうことも増えてきています。」
業務が増える中、少しでも時間を作り、授業の準備にあてたい。
そう考える中村先生にとって、負担になってきたのが部活動の指導でした。
平日は、朝の練習を含め3時間あまり。
さらに土曜日と日曜日には、試合や大会が集中。
1日4時間以上で、3,000円の手当は出るものの、休みをとれない状態が続きました。
忙しい月の残業時間は、185時間にも及びました。
授業の質にも影響が出始めます。
生徒の理解をより深めるために自主的に作っていたプリント。
こうした丁寧な授業の準備に手が回らなくなってしまったのです。
中学校教諭 中村さん(仮名)
「自分で言うのも情けないですけど、全然だめだなと。
もうちょっと余裕があれば、授業の準備をしっかりして、楽しくて分かりやすい授業ができるはず。」
本来の教員の仕事に手が回らない現状を改善してほしい。
公立中学校の教員たちが、去年(2015年)12月、サイトを立ち上げ、署名を呼びかけました。
教員を中心に集まった署名の数は、2万3,000以上。
今年(2016年)3月、文部科学省に提出されました。
厳しい勤務に追い込まれている教員たち。
こうした状況は、子どもたちのためにも望ましくないという訴えが多く寄せられました。
しかし教員たちにとって、部活動の負担を減らすことは簡単ではありません。
署名をした1人、ソフトテニス部の顧問をしている先生です。
クラスの運営や生徒の指導にもっと力を入れたいと、週6日の部活動を週4日に減らしました。
ところが、保護者から反発され、なかなか理解してもらえなかったといいます。
休日にも部活動をしたいと子どもが望んだら、教員はその期待に応えるべきだというのです。
中学校教諭
「“なんでそんなに頻度を落とすのか”。
“うちの子は(試合に)勝ちたいと思っている”。
(保護者から)直接、携帯電話に連絡がくる。」
部活動の指導による教員の負担を減らすため、先月(6月)文部科学省は中学校の部活動に休養日を設けることや、外部指導員の配置を促す新たな指針を策定することを決めました。
文部科学省 初等中等教育局 木村直人参事官
「先生方が取り組まなきゃならない課題が非常に多くなってきている。
教員が子どもとしっかり向き合う時間を確保する手だてを考えないといけない。」