森友学園の土地交渉をめぐる、財務省の「決裁文書書き換え疑惑」

朝日新聞が3月2日に特報してから国会で取りざたされ、財務省による調査が進んでいた、この問題。
その報道によると、もともとの決裁文書から「特例」という文言や、交渉経緯が丸ごと削除され、国家議員に開示されていたという。
当初は報道の真偽を問う声もあがっていたが、関係者の自殺や、当時理財局長だった佐川宣寿・国税庁長官の辞任が重なり、疑いは深まっていた。
さらに3月10日。「週明けにも財務省が書き換えを認める方針」と共同通信などが報じたことで、潮目は変わった。

翌11日。新聞各紙は、問題をどう報じたのだろうか。BuzzFeed Newsでは、各紙を比較した。
読売新聞「事態収束 見通せず」

読売新聞は、1面トップで報じた。これまでの経緯を表付きで掲載している。
記事では「国会答弁と矛盾するととられかねない部分などを削除」としており、書き換えのあった箇所については、朝日新聞の報道を引用している。
そのうえで、政府・与党が「幕引きを図りたい考え」である一方で、政府内には「麻生財務相の責任問題に発展しかねない」という声があると紹介した。
2面では、与野党幹部の発言を一覧にして紹介。「与党は政府に丁寧な説明を求めて今国会を乗り切りたい考えだが、事態の収束は見通せない情勢となっている」としている。
毎日新聞「佐川氏 指示か」

毎日新聞も、1面トップ、2面、社会面で展開。佐川氏が「問題の責任者として書き換えを指示した可能性が高い」と指摘した。
変更箇所については、「特殊性」という文言の削除などがあったとし、佐川氏が「事前の価格交渉はなかった」としていることから、「森友への国有地販売の特殊性を否定しており、決裁文書は佐川氏の答弁に沿うように書き換えられた可能性」と踏み込んだ。
2面でも「麻生氏の進退焦点」との見出しを掲げ、「与党内にも麻生氏辞任につながるとの見方がある」と指摘しつつ、安倍首相が「政権の屋台骨である麻生氏を守る姿勢を崩していない」とした。
政府筋の「麻生氏は書き換えの事実を知らなかった」というコメントも紹介。一方で、佐川氏が書き換えに関与したことを示唆する政府関係者のコメントも引いている。
日経新聞「書き換え疑惑深まる」

日経新聞は1面で比較的小さく展開。「複数の決裁文書が存在する」としたうえで、「意図的に書き換えたとの疑いが濃厚になった」と慎重な書きぶりだ。
「政権運営への悪影響は避けられない」とし、森友学園の問題が発覚した2017年2月以降の書き換えであれば「都合が悪い事実を隠そうとした疑い」が出てくる、としている。
また、「書き換えはただちに法律違反ではない」としながらも、「公文書管理法の趣旨に反するとみる専門家は多い」「内容次第では刑法上の罪に該当する場合もある」とした。
5面では「森友書き換え 疑問多く」との見出しを取り、朝日新聞の報道を引用しながら、これまでの経緯を淡々とまとめている。
東京新聞「行政が国民欺く行為」

1面トップで東日本大震災関連の記事よりも大きく展開した東京新聞。「麻生氏 進退に波及も」との見出しも踊る。
解説記事では、「安倍政権に深刻な打撃」と指摘。「安倍晋三首相への忖度から公文書が改ざんされたのか」としつつ、首相や昭恵夫人の関与への疑念が「強まった」とした。
そのうえで、「財務相が決裁文書を書き換えていたとしたら国民を欺く行為と等しく、行政の中立性は根底から崩れる」と厳しく批判。首相は「全容を解明する責任から逃げることはもはや許されない」とした。
改変箇所についても「交渉経緯や『特殊性』といった文言が削除されていた」と指摘。3面では「誰が何のために」と、社会面では「疑惑の核心隠し」と大きく展開している。
産経新聞「改竄ではなく訂正」

1面トップで「森友文書 書き換え認める」との見出しを掲げた産経新聞。「麻生氏 辞任せず」という小見出しもある。
「書き換えは決裁文書に付随する関連文書の複数箇所」と具体的な内容には触れていない。そのうえで、政府関係者の言葉を引用し、改変は「麻生太郎副総理兼財務相の進退に関わる話にはつながらない」「佐川氏の指示によるものではない」とした。
2面では、自民党幹部の「改善ではなく訂正はあったようだ」というコメントを引用。「公文書偽造」には当たらないとの見方を紹介したほか、検察幹部の「事件というより政局の話という印象」という言葉もある。
一方で公明党の山口那津男代表が、麻生氏に「説明責任を」と求めたコメントや、政権を批判する野党や識者の「不都合な点を隠したとしか思えない」などとするコメントも掲載した。
朝日新聞「首相 『財務省が全力を』」

一連の報道で独走してきた朝日新聞の1面は、東日本大震災関連の記事のみ。
3面に関連記事があるのみで、安倍首相が財務省に対し、調査に「全力で取り組んでもらいたい」と述べたことに言及。
首相は記者から佐川氏の辞任と麻生財務相の任命責任について質問されたものの、「財務相が記者会見でお話しした通り」と言及を避けたことも紹介している。
そのうえで、財務省が聞き取り調査を踏まえた結果を3月12日にも与野党に報告するとし、「与野党は今後の国会運営について協議する」などと指摘。
与野党幹部のコメントも紹介するなど、淡々と報じている。
こうして読み比べると、記事の書き方が大きく異なっていることがわかる。
日経新聞の慎重な書きぶりが印象的だ。その日経と、読売新聞が朝日の報道を引用し、変更箇所を伝えているのもめずらしい。
毎日新聞、東京新聞は批判を強めている。なかでも署名解説を入れている東京は、かなり強く一連の問題を批判している。
特報を重ねてきた朝日新聞の冷静さも際立つが、コメントの引用が中心の産経新聞の「改竄ではなく訂正」という見出しは他紙にはないトーン。問題に対するスタンスがよく伝わってくる。
いずれの新聞も「麻生財務相の責任が争点になりうる」という見方に違いはない。3月12日以降、問題はどう動いていくのか。注目される。
Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.
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