スマホを支える縁の下の力持ちセット

スマホのない生活……いまではもう想像が難しくなってきたひとも多いのでは? 道案内にカメラ、動画の閲覧、スケジュール管理、メールなどなど、さまざまな場面でスマホは私たちを助けてくれます。そんなスマホの中身の部品ですが、じつは日本の会社がたくさん関わっています。どんな技術について、どんな会社が関わっているのかを知ると、投資のヒントが見つかるかもしれませんね。

【三井金属鉱業】の極薄な銅箔は世界シェア90%

「μm」(マイクロメートル)という単位が示すのは1ミリの1000分の1。こんな小さな単位、普段の暮らしではまず意識することがありませんよね。でも今、あなたのポケットやカバンの中のスマホにも、薄さ1.5μmの「銅箔」が入っているかもしれません。

銅箔はスマホなど精密回路の配線材料として使われる材料です。この銅箔の分野で世界トップクラスの企業が「 三井金属鉱業 三井金 5706(東証1部)非鉄金属 4,600 (15:00) +30 (+0.65) 前日終値 4,570  (03/08) 始値 4,620  (09:00) 高値 4,690  (09:51) 安値 4,590  (13:35) ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」。三井金属の銅箔「Micro Thin™」は世界で90%と圧倒的なシェアを誇っています。20年前には、12μmだった三井金属の銅箔は現在、1.5μmまで薄くなっているそうです。イメージがわきにくいかもしれませんが、1.5μmは「髪の毛の100分の1」の薄さだそう。

銅箔はスマホのみならずパソコンなどあらゆる電子機器に使われているため、三井金属の銅箔が活躍する場面はこれからますます増えていくかもしれません。「需要増加に対応するため、銅箔の生産能力を増大する」なんて発表もあったくらいで、薄い銅箔に熱く注目してみては?

これがなきゃスマホの画面は真っ白! 【日東電工】の偏光板

スマートフォンの画面にも日本の企業の技術が活かされています。そのひとつが「 日東電工 日東電 6988(東証1部)化学 8,618 (15:00) +13 (+0.15) 前日終値 8,605  (03/08) 始値 8,712  (09:00) 高値 8,866  (09:52) 安値 8,555  (13:36) ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」の「偏光板」。この偏光板がないとスマホの画面は白く光るだけ。おもしろい動画も、撮影したはずの我が子の写真も映りません。偏光板が光の透過を制御してくれるから、スマホの画面がさまざまな映像を映し出してくれるのです。

頼もしいことに、その偏光板で世界トップレベルの技術をもつのは日東電工。2016年には、ディスプレー分野で最大の学会「SID 2016」で、世界のディスプレイ産業に多大な影響を与えた製品として日東電工の超薄型の偏光板が選ばれました。スマホの液晶ディスプレイが薄くなり、大きくなり、きれいになっているのも、日東電工の偏光板の貢献によるところが大きいのです。

日東電工は今年創業100周年を迎えます。もともと「粘着テープ」を事業の柱とし、おむつから医療用品まで暮らしのさまざまな場面を支えてきた日東電工。スマホからおむつまで幅広く活躍する日東電工ですから、その技術は次の100年にも求められることが多そう!

スマホの機能のあちこちに【アルプス電気】

2016年に大ヒットしたスマホゲーム『ポケモンGO』。「近所にレアなポケモンがいるらしい」と、スマホ上の地図を見て、見つけたポケモンを実際の景色を背景にして撮影し、画面をタッチして捕まて……そのゲーム要素には「スマホらしさ」がつまっていました。

でも、そうやってポケモンGOを楽しめるのは、「 アルプス電気 アルプス 6770(東証1部)電気機器 2,701 (15:00) -10 (-0.36) 前日終値 2,711  (03/08) 始値 2,719  (09:00) 高値 2,760  (10:06) 安値 2,685  (13:35) ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」のおかげかもしれません。アルプス電気がつくる「磁気センサ」は現在地情報を知るために不可欠な部品です。また、カメラレンズを動かしてピントを調節してくれるアクチュエータもアルプス電気の得意分野。それにタッチパネルディスプレイも作っています。スマホのさまざまな機能を支えている会社がアルプス電気なんです。

スマホ関連が好調だった影響もありアルプス電気は2018年3月期営業利益は前年比51.7%増と会社予想を発表 。これからは車載向け市場にも注力し、スマホ向けビジネスと車載向けビジネスの両輪化をめざしていくとしています。アルプス電気の部品が自動車をどう便利にしてくれるのか、楽しみですね。

社長は「平成の名経営者」第1位【日本電産】

社名よりも社長のほうがもしかしたら有名な会社かもしれません。「 日本電産 日電産 6594(東証1部)電気機器 17,045 (15:00) +25 (+0.14) 前日終値 17,020  (03/08) 始値 17,340  (09:00) 高値 17,370  (09:00) 安値 16,835  (11:21) ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」の創業者であり社長を務める永守重信さんです。永守社長は日本経済新聞が行なった「平成の名経営者」ランキングで1位(2004年)、日経ビジネスの「社長が選ぶベスト社長」の調査でも1位(2014年)、著書を出せばビジネス街のベストセラーとなるカリスマ社長です。

それだけ社長の評価が高いのは、もちろん社業が順調だからこそ。世界シェアを見ると、ハードディスク用モーターでは80%と圧倒的なグローバルトップを誇り、CDやDVD用モーターでも60%と世界屈指のモーターメーカーとして活躍しています。業績を見ても4期連続最高益(※)。
日本電産はスマホの世界でも活躍していて、アップルが発表するサプライヤーリストを見ると「Nidec」(日本電産の英語社名)の文字が。

iPhone 6Sから採用された感圧タッチ機能には小さな振動モーターが使われています。モーターといえば日本電産。ツルッとした画面を触ると指先にリアル触感を返してくれる触覚フィードバックは、注目される技術のひとつです。日本電産の新しい強みとなるかもしれませんね。

※2016年度以降はIFRS、それ以前は米国会計基準に基づきます。

スマホを支える人づくりは【メイテック】

スマホを支えるのは部品だけではありません。どんなモノだって、それを作るのは人。モノづくりは人づくりでもありますよね。スマホの部品を開発したり、設計したり、エンジニアたちの努力があって、今のスマホが生まれています。

そうしたエンジニアを育てている会社が「 メイテック メイテック 9744(東証1部)サービス業 5,990 (15:00) +80 (+1.35) 前日終値 5,910  (03/08) 始値 6,030  (09:03) 高値 6,130  (09:11) 安値 5,940  (13:33) ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」です。グループ全体で9000名のエンジニアが在籍するメイテックですが、その特徴は正社員としてエンジニアを雇用し、育てていること。雇用体系が安定していれば、エンジニアも安心してスキルアップに励めそうです。

メイテックの技術者は数、質、単価いずれも業界トップ、派遣先を見るとトヨタ自動車やパナソニック、三菱重工業、キヤノンなど日本を代表する製造業の名前が並びます。スマホばかりか日本の製造業全体をしっかりと支えてくれるメイテック。メイテックへの投資は、日本のモノづくりを支える人への投資、ということでもありそうです。

いかがでしたか? 今回紹介した部品や素材のメーカー、人材派遣などの会社は日ごろ、意識することの少ない分野かもしれません。日々の暮らしと直接結びつかなくても、スマホを通じて考えれば身近な存在に思えてきますよね。「あれ、意外と身近じゃん」と思ったら投資先として検討してみると、縁遠く感じられた会社がもっと身近に感じられるかもしれませんね。

今回のテーマで取り上げた上場企業

三井金属鉱業
日東電工
アルプス電気
日本電産
メイテック

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テンバガーをつかめ!〜10億円投資家・たーちゃんさんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・ テンバガー(10倍株)を見抜く着想法 / たーちゃん

ある専門職として働きながら株式投資を行なっている投資家のたーちゃんさん。42歳にして、その資産は10億円を超えています。20代にして投資観を確立し、目標を達成してきたその道のりには、これから投資家としての一歩を踏み出そうとする人への示唆があふれていました。

「自由億」を達成した個人投資家の原点とは

「『おまえはなんでそんなに金持ちになりたいんだ?』と、高校生のころからよく言われていました。だから進路を決めるときも、偏差値や社会的な評価よりも、『どの大学、どの学部に行けば金持ちになれるか?』という視点でした。ただ、実際にお金を得てみても、別に使い道があるわけじゃない。服はユニクロでいいし、チェーン店の食事で充分満足しちゃうんで(笑)」

そう振り返るのは、「自由億」(資産10億円を示す個人投資家用語)を達成した「たーちゃん」さんだ。成功への原点は大学卒業を間近に控えたころに起きた、ある事件だった。

「ある資格試験に落ちてしまった。同級生のほとんどが合格するような試験でしたから、もう少し勉強すれば翌年、合格ラインに達することはわかっていた。だったら1年間、試験勉強だけに費やすのはもったいない。そこでひたすら投資の勉強をしたんです。株、不動産、それに税金も」

なぜお金の勉強だったのか。そこには「お金持ちになりたい!」という強い気持ちがあった。

「同級生は先に社会へ出て稼ぎはじめる。彼らよりも稼ぐためには何かを身につけないといけない。試験勉強だけでは無理だろうから、別の武器を持とう――そんな気持ちもありました。コンプレックスの裏返しですね。あいつらに負けたくないと。その1年間、お金についての本は100冊以上読みました。人生で唯一、猛勉強したといえる期間です」

「人生最初で最後」の猛勉強

古典となった本から最新刊まで目につく本をかたっぱしから購入、コアとなる部分をノートにまとめながらひたすら知識を蓄えていった。

「古典となっているような株の本がメインでしたし、財務やファイナンシャルプランナーの本も読みました。大学では学んでいない分野なので、最初はまったくわからない。泣きそうになりましたが、『ひと足先に働いてる同級生を追い抜くためには、これをやらんと負けや』と、そんな気持ちでした。人生であれだけ勉強した時期はないですね」

資産を増やそうとするなら最初から投資に費やしそうなものだが、知識を蓄えることから入ったことがたーちゃんさんらしさだ。

「じつは大学生時代に株を買ったこともありました。昔、『セガサターン』というゲーム機がありました。それがものすごい好きだったんです」

1990年代、プレイステーションとともにゲーム業界を盛り上げたセガサターンはやがて後継機のドリームキャストへと移行する。

「しかし、これが思ったほどは売れなかった。そのころ、ゲーム雑誌でセガの役員が『ドリームキャストの不振でうちの株価は下がっている。今買えばきっと儲かる』といったようなことを言っていたんです。ゲーム雑誌とは思えない記事ですが、ゲーマーだった僕はそれを信じて買ったんです」

アルバイトで貯めた50万円をセガ株に投じた。その経験があれば、なおさら、「勉強よりも投資を」と発想しそうなものだが、たーちゃんさんは違った。

「数十万円の資金しかないのに売買しても意味がないだろうと考えていました。株を買うよりは本を買おう、知識を蓄えようと。それに、じつはセガ株のあと、ネット証券が登場し、売買コストが低下したことでデイトレードしたこともあるんです。ただ、全然ダメで結構減らしてしまった。株のことが何もわかっていなかったんですね」

いくらなんでも安すぎる――目をつけたのは金

投資で武器となるのは知識と元手だ。知識を蓄えたたーちゃんさんは無事に資格試験にも合格、社会へと羽ばたいていく。

「残業が多く休日出勤もある仕事だったので、残業代は貯まるし、使う時間もない。投資の元手がある程度作れたとき、チャンスに思えたのがゴールドでした」

2011年には1トロイオンス2000ドル間近まで達したが、2000年代初頭には300ドルを割っていた。

「いくらなんでも安すぎると。ゴールドは『一生に2回、買い場がある』と言われるんです。その1回目が今なんじゃないかと」

元手がある、知識も蓄えた。たーちゃんさんは満を持して買っていった。しかし、買ったのは金そのものではない。

「金が2倍になるなら金鉱株、つまり金を採掘する会社の株は2倍以上に上がる。それがわかっていたので、金そのものではなくオーストラリアの金鉱株を買いました。ただ、日本株だと住友金属鉱山くらいしかないし、保有する鉱山の規模が小さい。そこでオーストラリアの金鉱株を買ったんです。倒産寸前で株価も地に落ちていましたが、金の価格さえ戻れば株価は急騰するだろう、と」

当時の貯金のほとんど、600万円で一点買いしていった。

「倒産しても構わないという気持ちでした。それに仕事は相変わらず残業続きだったため、頻繁に売買する時間もない。買ったら寝かせっぱなしです」

トラック運転手の年収急騰 1400万円!

寝かせたまま3年が過ぎた。

「すると、300ドルを割っていた金が800ドルまで上がってきた。『コモディティ(商品)の時代』と言われるようになり、資源国であるオーストラリアの労働環境も激変していました」

トラック運転手の年収が1400万円を超えるほどの好景気が到来していた。

「さすがに高すぎる。嫌な気配を感じたので金鉱株を売りました。買値から約10倍です」

再デビュー戦を「テンバガー」(10倍株)で飾った。金価格は2.5倍ほどの上昇だったから、「金が上がるなら金そのものではなく金鉱株を買う」という思惑は的中したことになる。

「ただ、その株はさらに上昇を続け100倍になりました。そこまで持っていられれば、なおさらよかったですね(笑)」