南極大陸にある絶海の孤島群、デンジャー諸島で人知れず密かに繁殖していたアデリーペンギンの巨大コロニーが発見された。
ここで75万組以上のつがいが確認され、総数にすると150万羽以上が生息していることとなる。この数はこの島以外の南極半島全体を合わせた数よりも多い。
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前人未踏の秘境にはアデリーペンギンの巨大コロニー
この発見は、わたしたちの住む地球にはまだまだ知らないことがたくさんあることを思い知らされるだけでなく、研究者に希望を与えてもくれる。これまで、気候変動のせいで、アデリーペンギンの数が急速に減少しているという危惧があったからだ。
不思議なのは、南極の北西端沖に位置するこの孤島群が、150万羽ものペンギンの棲み処になっているなどとはこれまで誰も考えもしなかったことだ。
「つい最近まで、デンジャー諸島がペンギンの重要な生息地だとは知られていなかった」と言うのはストーニー・ブルック大学の生態学者ヘザー・リンチ。
以下の動画で、ものすごい数のペンギンのコロニーを見ることができる。
Previously Unknown “Supercolony” of Adelie Penguins Discovered in Antarctica
世界から隔絶された場所だからこそ守られていた
デンジャー諸島はまわりをぶ厚い海氷に囲まれた文字通り最果ての地。つまり、世界から隔絶されて誰にも気づかれなかったため、気候変動や人間の活動の影響から守られていたということだ。
だが2014年、NASAの人工衛星がこの群島でおもしろいものをとらえた。映像にはここにペンギンが生息していることがわかる糞化石あるいは糞そのもの、汚れのようなものが多数写っていたのだ。
2015年、本当にペンギンが生息しているのか、実情を探りに研究チームが島に降り立った。
到着したとき、おびただしい数のペンギンがいるのに驚いた。目で直に数えたり、ドローンを飛ばして数をカウントした結果、75万1527組のつがいがいるのがわかった。これは南極半島のトータル数よりも多い。
研究者のひとり、ルイジアナ州立大学のマイケル・ポリートは、その数にただただ驚愕したという。
「島のまわりの水は、ペンギンで煮え立っているようだった」ポリートは言う。
「単に南極のアデリーペンギンの大規模コロニーがあるという事実だけではなく、デンジャー諸島は、南極西岸で危惧されているような最近の気候変動の影響による個体数の減少という心配はないように思われる」
巨大ペンギンコロニーの発見が様々な真実を教えてくれる
デンジャー諸島のペンギン数を明らかにすることは、研究者に将来の変化への重要な基準点を与えてくれる。
また、ここのペンギンが増えているのに、ほかのコロニーでは減少している原因を理解する助けにもなる。
「例えば、南極東岸のアデリーペンギンのコロニーは、西側で見られるコロニーとは違う」ウッズ・ホール海洋研究所のステファニー・ジャヌヴィエルは言う。
「わたしたちはその理由を知りたい。海氷の拡大状況と関係しているのか? 食料調達事情なのか? わたしたちが知らないなにかが原因なのかもしれない」
研究チームは、この東西のペンギンコロニーの違いの原因をもっと理解するだけでなく、デンジャー諸島を守り続ける政策をしっかり確立するつもりでいる。
「この興奮するような発見は、氷の世界に生き続けているこの驚きの生き物について、いかにもっと学ぶことがたくさんあるかをわたしたちにおしえてくれます」WWF(世界自然保護基金)のロッド・ダウニーは語る。
「乱獲と気候変動の二重の脅威からアデリーペンギンを守るために、南極沖海域の緊急保護を強化することにもなります」
この研究については、Scientific Reports誌で発表されている。
References:theguardian / eurekalert / smithsonianmag/ written by hiroching / edited by parumo
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