大傑作だ・・・ 。
『また、片想う。』2巻まで読了。切ない...。この作品を読んでいると、本当に魂レベルで切ない気持ちになってくるから困る。読後の余韻が尋常じゃない。すげー切ないっす。
でも、面白いから読むのを止められないんだよなぁ...という心の葛藤もあって、そういうことを考えさせられるってことは、やっぱり魅力のある恋愛漫画なのだろうなぁとも思う。
心情描写の組み立て方がとても丁寧で、気付いたらグッと作品の世界観に惹きこまれる。感情移入し始めると、もうダメ。死んでしまう。正直、読むのに少なからず心的エネルギーを要する作品だ。読む前は気合を入れて臨もう。
いや、読むのに気合いがいるラブコメってなに?って感じだけど、あまりにも登場人物たちの心情が繊細に描かれるもんだから、こんなん気楽に読めんわ!ってのが率直な感想です。でも、凄く面白いのでオススメしたい。
"想いを伝える"難しさ
主人公の清瀬詩帆は、幼馴染の野方司に小学生の頃から日常的に告白をされていた。「清瀬のことが好きだ」。気負いなく想いを伝えてくる司に当初は困惑していた詩帆だったけれど、いつの頃からか彼女は、彼からの告白を気にとめなくなっていたのである。
あまりにも言われ続けると、“好き”の価値がわからなくなってしまうのだ。きっと、からかって言っているだけ、本気で言ってるわけじゃない。そう思えてしまう。
加えて、「私は今のままがいい」と、詩帆がモノローグをこぼす描写も味わい深いポイントの一つ。幼なじみの司と中学からの友達である元明、いつもの3人で過ごす今の関係性が心地いい。だから、心のどこかで今の日常が壊れてしまうのを恐れている自分がいる。それを彼女はきちんと自覚しているのである。
しかし、司の想いが本当であることを彼女が理解することで物語は動き出す。「告白」には勇気がいる。それは、もう元の関係には戻れなくなる決断をすること。踏み切って「想いを伝える」というのは決して簡単な事じゃない。だからこそ、きちんと返事が欲しいのだと。
もう、甘酸っぱすぎてキュン死しそうな破壊力である。脳が溶けそう...。司が自分の想いをきちんと言葉で伝える姿にグッとくるし、それを聞いて赤面しまくる詩帆もかわいいしで、控えめに言ってもやば過ぎる。なんなのこの作品?読者を悶絶死させにきてるの?
あまーーーーーーい!
しかも、詩帆の初々しさがたまらなくかわいくて、もうニヤニヤしかない。スピードワゴンも言葉を失うレベルに甘々。手をつなぐイベント一つでここまで悶えさせてくるなんて、もうムリって感じです。ニヤニヤし過ぎてこれ以上は死んでしまう。
真っ正面に好きと言われ赤面しまくりながら「はい」と答える詩帆がかわいいし、司のことを考えながら悶々として布団の上をゴロゴロしてるのもかわいいし、 初めてのデートで服選びに迷いまくるのもかわいい。
この漫画やべーわ、電車の中じゃ読めねーわってくらい、詩帆の女の子っぷりにノックアウトさせられてしまう。
「真っ当」に青春しまくっていてスゲー眩しい。この作品、自分が好んで読む王道ラブコメとはまた一線を画するジャンルの恋愛漫画なんだけど、ホントめっちゃ良いんだ...。男がきちんと告白するところとか見ても、どことなく少女漫画テイストなんだろうなぁと思う。
その証拠に、司と詩帆の共通の友人でもある元明が、2人のデート現場を見て、詩帆への恋心を芽生えさせる展開が描かれるわけですが、男性向け王道ラブコメではまずこんな展開ありえませんからね。
タブーもタブー。しかも一番やっちゃいけないパターンのやつですよ。ラブコメのヒロイン、しかもメインヒロインが主人公以外とラブがコメるなんて、男性をメインターゲットにしてるラブコメ漫画では絶対にあってはならんわけです。
2人のヒロインが主人公を奪い合う三角関係はどんと来いですけど、その逆パターンなんて誰得もいいところである。ラブコメってのは浪漫であり、夢だから。
エゴだろうが何だろうが、もし大好きな作品で誰得三角が発生したら、読者はド肝抜かれて一生寝こんじゃいますからね。ヒロインと主人公が幸せにイチャイチャしている様子を堪能することこそがラブコメの醍醐味なり!(断言)
って、えええええええ!??
え、なにこの展開?こんなパターンある?甘酸っぱい青春恋愛漫画だと思ったのに、めちゃくちゃド肝抜かれまくったんだが.......。
信じがたい超展開だが、司が交通事故で死んでしまうのである。おいおい、さすがにビビったぞ...。詩帆と司がとても真っ当に恋愛していただけに絶望感が尋常じゃない。こんなん寝込むわ・・・。三角関係どころじゃないっつーの。
しかも、めちゃくちゃ切ないのが、詩帆がまだ司に「好き」の言葉をきちんと伝えていなかったところである。司は何度も何度も自分に言ってくれていたというのに....。
「好き」。たったの2文字さえ届かない。幼稚園の頃から一緒で、あれだけ言うチャンスはたくさんあったのに、もうその想いを伝えることは叶わない。あまりにもむごい状況である。
加えて、やるせない気持ちをただただ叫ぶことしか出来ない詩帆の姿がこれまた光る。この作品凄いわ。表情で哀愁を表現するのが上手すぎて否が応でも感情移入させられてしまう。読んでるだけでつらい。
しかし、ここからの展開に更にド肝を抜かれ、思わず感嘆してしまった。ここまでの強烈な展開は、物語の導入に過ぎなかったのである。
"想いを伝える"ために
世界線を越える...!
第一話を読んだ時点で、こうなることを誰が予想しただろうか。想い人を失い、「好き」を伝えられず後悔の渦中にいた詩帆は正体不明の女に願う。ただ「好き」の想いを伝えたい、と。その結果、司が交通事故に遭っていない別の世界線へと移動するのだ。
まさかのSF設定がぶっこまれたのである。急展開に次ぐ急展開で脳が揺さぶられまくったが、しかしこれが非常に読ませるストーリーで圧巻。ページをめくる手が止まらない。
切ない......。
そう、司が生きているこの世界線では、詩帆と司は幼馴染ではないどころか、出会ってさえいない間柄だったのだ。しかも、詩帆がいた場所には、別の少女がいるという追い討ち。あまりの切なさに、死にたくなってくるな!もの悲しすぎるでしょ...。
自分だけが相手のことを知っていて、相手が自分のことを知らない、いわゆる記憶の一方通行パターンは、本当にしんどいテーマだ。しかも、この作品の場合は幼稚園から積み上げてきた思い出がある分、その積み上げてきた重さの分だけ切なさがのしかかってくるからなぁ...。
顔も、声も、何もかもが本人なのに、それでも本当にこの人は自分の知っている司なのだろうかと、悲嘆に暮れ、涙を流す詩帆の姿はもはや直視できない。あまりにも、残酷で痛々しい。高校生の少女が抱えるにはあまりにも重たすぎる現実だ。
しかし、それでもゼロからまた同じ時間を共有し始める2人の姿には思わず胸が打たれる。自分のことを知らなくても、きちんと向き合って話せば、そこにはあるのは心地よい司の優しい声。
どんな世界に行っても、きっと、詩帆は何度でも司を「好き」になる。このワンシーンに読者を惹きつけるすべてが凝縮されている。記憶がすれ違っても、どれだけ切ない想いをしても、司に「好き」の気持ちを伝えたい。
この物語はただ、そんな、“想いを伝える”少女のためのお話だ。SFという大技を混ぜてもそこは決してブレない。だからこそ、こんなにも惹かれるのだと思う。
残酷な現実の中に、細くともあたたかい希望がスパイスとして見え隠れする。そのストーリーが最高に美しい。作者のタチバナロク先生の表現力と発想力には舌を巻くってもの。
ここからが本当の本番だ...!
ここまでも最高に熱かったけれど、実際は本当の見せ場はここからでしょう。詩帆に感情移入しまくれるようにここまでのストーリーは描かれてきたわけだけど、この世界線では詩帆の立ち位置には秋津さんがいることを忘れてはいけない。
結局、詩帆と秋津さんは同じ立場なのである。ゆえに、詩帆が司と結ばれたらイコール秋津さんの想いが届かないわけで。正直、どっちも応援したい気持ちがあるけど、どう転んでも切なくなること必至なので、めちゃんこ辛いな!だが、同時に期待大だ!
切なさを越えて、僕らは本物の夢を見るんだ...。
恋愛&SFストーリーとして、いま最高に輝いてる作品でしょう。まだ全2巻なので超おすすめ!