オーストラリアの島で見つかった手紙入りの瓶は、132年前にインド洋に流され、漂流してきたものだった。
2018年1月、イルマンさんの一家は友人たちとともに、オーストラリア西岸沖にあるウェッジ島をドライブしていた。ウェッジ島はパースの約160キロ北に位置する。車が砂浜で立ち往生してしまったため、トーニャ・イルマンさんと友人のグレース・リチアードさんは周囲を散歩することにした。
そして、車に戻る途中、落ちていたゴミに目を留めた。茶色の瓶で、何やら浮き彫りの文字が書かれている。本棚にでも飾ろうと、トーニャさんはそれを拾い上げた。(参考記事:「南太平洋の無人島にゴミ3800万個、日本からも」)
息子のガールフレンドが瓶の中をのぞいてみると、たばこのようなものが入っていた。
一行は注意深く中身を取り出した。その物体はきつく巻かれ、1本のより糸で留められていた。ドライブを終えて自宅に到着すると、一行は湿った紙をオーブンで乾かし、より糸をほどいた。物体は約20 x 15センチの紙切れで、後に、世界最古の瓶入りメッセージだと判明した。(参考記事:「瓶入り手紙、最古記録とその歴史」)
トーニャさんの夫キム・イルマンさんは英「Guardian」紙(オーストラリア版)の取材に対し、「本当に思わぬ幸運でした」と振り返っている。「これ以上ないほどの幸運です」
69年がかりの壮大な海流調査
当初、イルマン夫妻は懐疑的だったが、2日後、西オーストラリア博物館を訪ね、海洋考古学担当のロス・アンダーソン氏と面会した。
アンダーソン氏は年季が入った紙切れの文字と、船長が記入した書類の筆跡を比較し、このメッセージが1886年6月12日に書かれたものであることを突き止めた。つまり、131年223日前のメッセージを発見したということだ。また、アンダーソン氏によると、この瓶はドイツの帆船「パウラ」号が英国ウェールズのカーディフから現在のインドネシアに向かっている途中、インド洋上で海に投げ込んだものだという。この点については、すでにドイツ海軍観測所の専門家も確認済みだ。(参考記事:「沈没船から17世紀の王家のドレス見つかる」)
当時、ドイツの船員たちは69年がかりの実験を行っていた。何千もの瓶を船から投げ込み、世界の海流を調べていたのだ。それぞれのメッセージには、瓶を投げ込んだ地点の座標、日付、船名が書かれていた。トーニャさんが見つけた瓶のメッセージにも、これらの情報が記されていた。
書かれていた座標を見る限り、この瓶は発見場所からおよそ1000キロ離れたオーストラリアの西側で海に投げ込まれたようだ。そこから1年以内に漂着し、砂の下に埋まった可能性が高い。瓶のコルクは砂の下で乾燥し、その後、風雨にさらされて抜けたと、アンダーソン氏は分析する。パウラ号の母港はフランス、マルセイユだったようだ。(参考記事:「【動画】日本軍と交戦した空母、水深3千mで発見」)
これまでのところ、ドイツの実験で投げ込まれたメッセージは、ほかにも662個回収されている。最近では、2015年4月にドイツで108年前の葉書が発見された。(参考記事:「1世紀以上前の瓶入り手紙を発見、最古の記録か」)
イルマン一家は2020年まで西オーストラリア博物館に瓶を貸し出す予定で、現在、一般公開されている。
キムさんが開設したウェブサイトには、「これまでの人生で最も素晴らしい出来事です」と書かれている。「132年近くも発見されず、風雨にさらされながら、完璧な状態を維持していたのです。本当に信じられないことで、私は今も興奮しています」