ローラ・アシュレイの店舗

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 英国発の家庭用品・アパレルブランド「ローラ・アシュレイ」が日本から姿を消してしまうかも知れない。

 ローラ・アシュレイを東アジアで展開する「ローラ・アシュレイ・ジャパン」が事業から撤退し、2018年9月までに全店舗を閉店する方針であることを2月2日に発表したのだ。

◆実は日本では「イオン傘下」だった

 ローラ・アシュレイは1968年にイギリス・サウスケンジントンに1号店を出店。1985年に日本初出店を果たすと、ポップな花柄をモチーフとしたデザインの家庭用品やホームウェアなどのアパレル商品は広く受け入れられ、人気となった。

 1986年にはジャスコグループ(現:イオングループ)主導のもと、イギリス「ローラ・アシュレイ」社との共同出資で「ローラ・アシュレイ・ジャパン」を設立。全国の百貨店や駅ビルを中心に、グループの利を生かしてイオングループの大型店への出店もおこなっていた。また、近年はサンリオやユニクロとのコラボレーションも行ったことも話題となった。

 そう、実は「ローラ・アシュレイ・ジャパン」はイオン傘下の企業が展開していたものだったのだ。

 イオングループは、2018年9月にイギリス「ローラ・アシュレイ」社との契約満了を迎えるのに伴い、契約を更新しないことを発表。日本国内の108店舗(2月現在、アウトレット店を含む)は全て閉店させる方針だという。同社は台湾や香港でも「そごう」などの日系百貨店を中心に出店しており、それらの国外店舗も閉店となる可能性が高い。

◆イオン内よりも「都市部中心」での店舗展開だった

 イオンは、今回の撤退を「新たな成長に向けた既存事業の再定義、事業分野の見直し」であるとしており、それ以上の発表はおこなっていない。しかし、今回の事業撤退は長らく「ローラ・アシュレイ」が主戦場としてきた都心型商業施設や百貨店業界の不振も影響しているのではないだろうか。

 ローラ・アシュレイの店舗は近年イオンへの出店も増えて来たものの、現在もその多くは百貨店、駅ビルに入居しており、旗艦店の1つである表参道店は路面店だ。ローラ・アシュレイはいわゆる「百貨店ブランド」のなかでも比較的若い世代に受け入れられてきたものであり、百貨店としても手放したくないであろう。しかし、多くの店舗は「1地域1店舗」で、首都圏でこそ店舗は多いものの、大阪市のような大都市でも僅か2店のみ。その一方で地方への出店も多く、例えば九州内でも9店を有しており、その多くが地方百貨店などの都心型店舗だ。イオンとしては自社ショッピングセンターへの出店を行いたい思いもあれど、急速な郊外シフトを図ることが難しかったという背景もあるのかもしれない。

 こうした海外ブランドの「ライセンス契約終了」といえば、かつて英国の人気ブランド「バーバリー」を展開していた三陽商会も思い出される。しかし、三陽商会は英国「バーバリー」側から契約打ち切りを迫られたものであり、今回の例とは少し異なったものであるとみられる。

 2018年現在、日本国内の「バーバリー」は英国バーバリー本社が同社の日本法人を通じて直営展開しており、現在も日本での販売が続けられている。その一方で、経営の屋台骨であったバーバリーブランドを失い業績不振に陥った三陽商会は、この2月に港区青山の自社ビル「青山ビル」を売却することを決めている。

 ローラ・アシュレイは、とくに地方では百貨店や駅ビルなどの一等地に店舗を構えていることが多く、今回の全店撤退方針は商業施設運営側にとっても頭が痛い問題であろう。

 しかし撤退を決めたとは言え、ローラ・アシュレイは知名度も高く、世代を問わず人気ブランドとなっていることには変わりない。近い将来、バーバリーのように英国法人主導での日本再進出も大いに考えられるが、果たしてどうなるであろうか。今後の動きが注目される。

<取材・文/若杉優貴 撮影/淡川雄太(ともに都市商業研究所)>

【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」