「ついにピーター・ナヴァロが帰ってきた」――。
いま米ホワイトハウス(WH)のスタッフの間で持ちきりの話題である。
ドナルド・トランプ米大統領は3月1日、ホワイトハウスで開かれた国内の鉄鋼、アルミニウム業界幹部との会合で、「鉄鋼とアルミニウムの輸入増が米国の安全保障を脅かしている。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の課税する」と発言。同2日の東京株式市場の日経平均株価は一時630円超安となった。
トランプ政権主要幹部は、実はこの制裁関税問題を巡って真っ二つに分かれ対立した。
課税すべきと主張したのはウィルバー・ロス商務長官、ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、ピーター・ナヴァロ通商製造業政策(OTMP)局長。
そして強く反対したのがゲイリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、ジェームズ・マティス国防長官、ヒューバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)だった。
ワシントンのベルトウェイ内(日本流に言えば、永田町と霞が関)で取り沙汰され、話題となったのは、皮肉にも対北朝鮮強硬派のマクマスター氏と慎重派のマティス氏が手を握り、強硬な通商政策は同盟国との関係を悪化させるとして反対論を唱えことだ。
ここで注目すべきはナヴァロ氏の復権である。
昨年1月にトランプ政権が発足した当初、対中強硬派として知られるカリフォルニア大学アーバイン校教授だったナヴァロ氏は、WHに新設された国家通商会議(NTC)委員長として同ウエスト・ウィング(西棟)2階の真東にある最も広いスペースの執務室を与えられるなど、鳴り物入りで政権入りした。
だが、著書『米中もし戦わば―戦争の地政学』(原題:”CROUCHING TIGER” 2015年刊行)でも分かるように、ナヴァロ氏は筋金入りの対中強硬派である。