お父さん空君を連れて帰る

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「う〇んこシャンプー」をした翌日、空君は朝からそわそわした感じで家の外に出たり中に入ったりしていた。

 

 

10時半くらいになると

 

「散歩に行ってくる。」

 

と言って出かけてしまった。

 

 

 

この感じは小さい女の子を連れ去ろうとして医療少年院に入った時と同じ。

 

空君が行ってしまった後は、すごく不安で仕方がなかった。

 

 

 

1時間くらい待って帰って来なかったので、我慢できなくなり警察に電話してしまった。

 

 

警察には

 

「ただ散歩をしているというだけで捕獲はできない。捜索願を出してもらわないと。」

 

と言われた。

 

 

私が警察に電話したことが空君に知られるとまずいので、それはできなかった。

 

あきらめて待つことにしようとした時、ちょうど空君が帰ってきて、私は小声で

 

「帰ってきました、もう大丈夫です。」

 

と言って、電話を切った。

 

 

 

ほんとうにほっとしたし、うれしかった。

 

 

 

しかし空君はもうデイケアには行かないという。

 

 

毎日こんなドキドキする思いをしていたのでは心臓が持たない・・・そう思っていた時主人から電話があって、

 

「明日帰る。空は連れて帰るよ。」

 

と言われた。

 

 

 

 

主人の所がベストではないかもしれないけど、毎日何もしないでふらふら歩き回るよりは安全かもしれない。

 

 

 

 

 

日曜日、土曜日に規定の量の薬が飲めたからか、空君は大分しっかりしてきた。

 

この日はふらふら出歩くことはなかった。

 

 

 

 

主人は午前中はソフトボールの練習があり、午後は反省会(=飲み会)で家を空けていた。

 

 

夕方帰ってきた主人は相当酔っていて、ちょっとおかしくなっていた。

 

 

 

 

「おい空!一緒に帰るぞ!」

 

 

空君が嫌だと言うと、主人は空君を押し倒して頬をぺちぺちと打った。

 

 

 

 

「痛いよ。」

 

最初は笑っていた空君も、主人がかなり強く顔をペチペチし始めたので、真顔になってきた。

 

 

 

 

「おいみち!おまえ俺のことがわかるか!」

 

 

みっちゃんに向かって怒鳴り始める主人。

 

みっちゃんが答えられるはずもない。

 

 

 

「わかんないのか!じゃあ俺は誰なんだよ!」

 

 

主人はそう言ってみっちゃんの肩をつかんで揺さぶった。

 

みっちゃん、とんだとばっちりである。

 

 

 

 

 

 

空君は起き上がって寝室に行き、布団をかぶって寝てしまった。

 

 

 

主人は空君を追いかけて行った。

 

 

「おい起きろ!行くぞ!」

 

 

という主人の声が聞こえた。

 

 

 

 

しばらく二人で行く行かないと言い合っていたが、そのうち空君は寝室から出てきて、

 

「お父さんと一緒に行く。」

 

と言い、荷物を詰め始めた。

 

 

 

 

私はその場にいなかったので寝室で何があったのかはわからなかったけど、主人がしつこく空君にいろいろ言っていたのは聞こえていたので、空君が主人に説得されたんだな、と思い、二人を見送ることにした。

 

 

空君は状態が戻りつつある途中だったので少し不安だったが、本人が行くと言ったので行かせてみてもいいかもしれない。

 

 

 

 

家でみんなで夜ごはんを食べた後、4人で車で駅まで行き、私とみっちゃんは空君とお父さんを見送った。

 

 

 

 

 

 

空君との別れ際、お父さん酔っぱらってるから空君よろしくね、と私が言うと、

 

「わかった。」

 

と空君は答えた。

 

 

 

その口調はしっかりしていて、ふつうの状態の空君だった。

 

 

私は少しほっとした。

 

 

 

(逆にお父さんの方が心配だった。)

 

 

 

 

 

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