イントロダクションIntroduction
大人の入り口に立つティーンエイジャーの揺れ動く感情を、サンパウロの降り注ぐ日差しの中でみずみずしく映し出した青春映画がブラジルからやってきました。本作の元になったのは、ダニエル・ヒベイロ監督が2010年に手がけた『今日はひとりで帰りたくない』(I Don't Want to Go Back Alone)。各国の映画祭に出品されたこの短編映画が熱狂的な人気を博したことで、監督自らの手で同じキャストを起用して長編映画化。本作は第64回ベルリン国際映画祭でFIPRESCI(国際批評家連盟賞)とテディ賞に輝き、日本ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014で脚本賞を受賞。2015年のアカデミー賞外国語映画賞ブラジル代表作品にも選ばれるなど、ブラジルのみならず、2014年の世界の映画シーンを代表する青春映画の1作となった『彼の見つめる先に』が、満を持して日本でも劇場公開になります。
本作に欠かすことができないのが「音楽」。クラシック好きのレオに、転校生のガブリエルが「好きな曲なんだ」と教えてくれるのは、スコットランドの人気バンド、ベル・アンド・セバスチャンの「トゥー・マッチ・ラヴ」。ポップで爽やかなこの名曲に乗せて綴られる彼らのキラキラと輝く日々は、優しさと美しさに満ちて、老若男女関係なくほっこりあたたかい気持ちにさせてくれることでしょう。思春期特有の言葉にできない気持ち。そして人生を鮮やかに変えていく、かけがえのない出会い。そんな誰もが経験したであろう心情が、「自分に自信を持っていいんだ」という監督のメッセージとともに描き出されます。
ウォルター・サレス(『セントラル・ステーション』)、フェルナンド・メイレレス(『シティ・オブ・ゴッド』)、ホベルト・ベリネール(『ニーゼと光のアトリエ』)をはじめ、日本でも人気の高い名匠を輩出するブラジル。そんなブラジル映画界が注目する新たな才能が、本作のダニエル・ヒベイロ監督です。サンパウロで生まれ育った自身の高校時代の体験も投影させたという『彼の見つめる先に』で長編映画デビュー。世界映画評NO.1サイトRotten Tomatoesでは「92%絶賛」を獲得し。新人ながら一躍注目の監督に躍り出ました。日本で公開されるブラジル映画といえば、社会問題を扱った映画の印象が強い中で、本作は同性愛や盲目といったテーマを扱いながらも、誰もが登場人物に共感できるような、世界に通じる普遍的な感覚を持った新世代のブラジル映画と言えるでしょう。