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「ウチのじーちゃんが作った渋谷モヤイ像が…」孫のツイートが奇跡を起こした! その知られざる美談とは?

[2018年03月09日]

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渋谷モヤイ像の「洗浄」ビフォーアフター。洗浄前(左)は夕方、洗浄後は朝と、撮影した時間は異なるが、その違いは一目瞭然だ

〈ウチのじーちゃんが作った渋谷モヤイ像が排気ガスや喫煙所からの有害物質により汚れきっていて悲しい。なんとかしたい〉

そんなツイートが“奇跡”を呼んだ。瞬(またた)く間に拡散された閲覧数は40万を超え、その過程でTBSの番組制作者の目に触れたのだ。

ツイートの主は、都内の高校で体育を教える植松創さん(36歳)。ツイートにある「じーちゃん」とは、渋谷駅西口のモヤイ像を制作した大後友市(だいご・ゆういち)さん(故人)のことだ。

そこで、孫である植松さんを直撃、モヤイ像に起こった奇跡とその知られざる歴史を聞いた──。

「TBSの番組でモヤイ像を洗浄することになったんです。プロの清掃業者が高圧洗浄機を持ってきてくれて、芸人のスリムクラブさんや僕たちも一緒に洗浄しました。詳しくは番組を見ていただきたいですが、おかげですっかり綺麗になって、天国のじーちゃんも喜んでいることと思います」

渋谷駅西口にモヤイ像が置かれたのは1980年のこと。新島(にいじま)の東京都移管100年を記念して島から寄贈されたものだ。都心の南160kmに位置するこの島には、至るところにモヤイ像が建てられている。

モヤイ像の素材は新島とイタリアのリーパリ島のみで採掘されると言われる「コーガ石」で、新島での埋蔵量は約10億トンと推定されている。ガラス質を含んだ軽石なので加工しやすいという利点がある反面、汚れやすいのだという。島の澄んだ空気とは違い、バスロータリーに面し、喫煙所に隣接した渋谷駅のモヤイ像が汚れてしまうのも無理はない。

古くからコーガ石は新島で建築用石材として利用されていたが、これを用いて初めて工芸品を作ったのが大後さんだった。

「元々、じーちゃんはこけし彫り職人でもあったのですが、こけしは島の伝統工芸じゃないし、何かオリジナリティが欲しい…と考えて、コーガ石に顔を掘ろうという発想が生まれました。モヤイ像はじーちゃんの発案なんです」

もちろんイースター島のモアイ像にかけているわけだが、そもそも「モヤイ」とはなんなのか? 渋谷モヤイ像に添えられた石碑にはこう書かれている。

〈新島には古くから『モヤイ』と呼ぶ美しい習慣があった。それは島民が力を合わせる時にのみ使われた。いわば共同の意識から生まれた素朴な人々のやさしい心根を表すものであった。『モヤイ』は島の歴史とロマンを秘めた言葉なのである〉

沖縄にも「もあい(模合)」と呼ばれる、人々の相互扶助システムがあった。おそらく語源は同じなのだろう。「じーちゃんの口癖はロマンだった」と植松さんは言葉を続ける。

「自分のロマンはモヤイ像だとずっと語っていました。モヤイ像を新島の観光シンボルにすべく、東京各地に像を建てた。最期まで言っていたのは『伊豆半島から見てもわかるくらい巨大なモヤイ像を新島の山の上に建てたい』と。さすがに大反対されて叶わなかったですが(笑)」


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