小ワザの積み重ねで億を達成~JACKさんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・ 情報力を活かす投資術 / JACK

仕事と投資を見事に両立させて1億円を超える資産を築いた個人投資家のJACKさん。そのルーツは1987年のNTT株上場にありました。IPO(新規株式公開)を入り口にして株式投資の世界に入ったJACKさんが、資産を順調に増やせた理由のひとつは情報力でした。

30年間コツコツと投資に取り組み、億超え

主にサラリーマンとして働きながら30年間コツコツと投資に取り組み、億を超える資産を築いたJACKさん。

「他の投資家さんのように代名詞的な必殺技はありません。IPOや会社四季報の早読み、公募増資、立会外分売に株主優待など、兼業投資家でも参加しやすいイベントを狙い、小ワザ、寝技を駆使してここまでやってきました」

JACKさんは今もフルタイムで働いているため、専業の投資家に比べて株に費やせる時間は限られている。不利な環境の中でどう資産を増やしてきたのか、その足取りを追っていこう。キーワードは小ワザだ。

JACKさんが株を始めたのは1987年。まだ大学生だった頃の話になる。

「自分の意思で始めたわけではないんです。母親が株をやっていた関係で、証券会社の営業マンが自宅に出入りしていました。その当時、日本電信電話株式会社、NTTの上場が話題となっていました」

公社の民営化が進められていた時代、政府が保有するNTT株の放出が決定されると、NTT株フィーバーが沸き起こった。

NTT株フィーバーがきっかけだった

「母親に言われるままに申し込みました。売出価格は約120万円でしたが、初値が160万円。1ヵ月もせず株価は300万円に達しました。株は儲かるものなんだなと実感し、NTT株の利益を元手に自分でも株を取引するようになりました。そうは言っても営業マンに勧められるままにソニーやトヨタ自動車といった大企業の株を買っていただけですが」

NTTが上場した時点での日経平均は約2万円。1989年末の日経平均3万8957円に向かって急上昇していくことになる。

「誰でも儲かった時代です。営業マンの話に従っているだけの私も、地合い(相場の状態)がよかったおかげで資金を増やすことができました。自分でも勉強するようになったのは大学を卒業する前後くらいです。少しずつ知識を増やし、やり方を模索していきました。当時も今も共通する小ワザとして『いち早く情報を得る』ということがあります」

株価が反応するような情報をいち早く手に入れて先回り投資すれば、利益を得やすい。そうは言っても、はたして個人投資家に可能なのだろうか。

カエル先生の一言

2013年から2017年5月までのデータによれば、IPOの初値勝率は85%※だったらしいぞ。人気が高くてなかなか当たらないと言われるが、試してみる価値はありそうだ。

会社四季報を定期購読する意外なメリット

「たとえば会社四季報に掲載されている業績予想が前号よりも引き上げられると、株は買われやすくなります。つまり、会社四季報が書店に並ぶよりも早く、その情報を入手することができれば優位性が得られるんです」

そのためには印刷所に忍び込むか、出版元で働くか。JACKさんが選んだのは、どちらでもない。

「四季報予想が修正された銘柄をいち早く読める雑誌があったんです。『オール投資』というマネー誌です。残念ながらオール投資は休刊となってしまいましたが便利な雑誌でした。今でも通用するかもしれないのが、定期購読です」

住んでいる地域などにもよるのかもしれないが、書店に並ぶより数日早く定期購読者の自宅に届くことがあるという。いつも書店で購入している人は定期購読に切り替えると投資のチャンスがあるかもしれない。

「情報という意味では、夕刊紙も注目です。夕刊紙では株式投資の記事が掲載されることがあります。そこで推奨銘柄として載った銘柄は翌日、上昇することがあります」

夕方に読んだ推奨銘柄を買えるのは翌日の朝。それでは遅い。ライバルより早く情報を得るにはどうしたらいいのだろうか。

「私の経験上、東京駅の売店には夕刊紙が午後の早い時間帯に届くことがあります。もし14時に夕刊紙を入手できれば、掲載された推奨銘柄をその日のうちに注文できる。夕刊紙を読んで翌日に買う人よりも先回りして買うことができるわけです」

東京駅周辺で働いている人は注目してみるとおもしろいかもしれない。JACKさんの特徴はこうした小ワザの引き出し。ちょっと面倒だけど、それを乗り越えれば優位性が得られるような小ワザを億劫がらずに実行しながら資産を増やしてきた。

対面取引口座にもよさがある

「今はネット証券で取引する人が多いと思います。手数料の低さもありますし、『証券会社の営業マンと話すのは面倒だから』と思う人もいるのではないでしょうか。しかし、営業マンとの会話から投資のヒントが得られることもあります。たとえば――」

「今度、自動車業界に特化した投資信託が発売されるんですよ、JACKさんもどうですか?」

なんて営業マンに言われたら、「いいですね~。考えておきます」と返す一方、JACKさんはこんな風に考える。

自動車業界に特化した投資信託が組成されれば自動車関連株に大口の買いが入る、だったら投信が組み入れそうな銘柄を先回りして買っておこうか――。

「もちろん、投資を始めた直後からそんな発想ができたわけではありません。自分で勉強するようになってから、実地で学んでいきました」

このように小ワザを駆使して働きながら投資を始めたJACKさん。中編では人生を大きく変えたIPOについて語っています。現在募集中のIPOについて知りたい人はこちら

*ご留意事項
本記事内の各種データについては、過去の実績を基にSMBC日興証券が分析したものであり、将来の成果等を保証するものではありません。IPOのデータは、REITとインフラファンドを除いたものです。IPOに関する手数料・リスク等の情報はこちら

第1回 メガネで集中度を測る。「集中力」を見える化したらわかってきたこと

今よりも、仕事ができるようになりたい。それは量を増やしたい、質を上げたい、あるいはその両方だとして、それをかなえるために、私たちは、何をすればいいのでしょうか?
スポーツで成績を伸ばしたい場合は、肉体を鍛え、練習を積めばいい。では、デスクワーカーが今より仕事の成果を上げるにはどうしたらいいのか。
答えは「頭の使い方を知り、思考力を鍛える」です。私たちが普段、仕事で使っているメインツールは「頭」。それにも関わらず、その使い方をまるで知らないという不思議な状況にあります。どうしたら集中力を高められるか、普段どのように目の前の課題を解いているか、どうしたらアイデアが生まれてくるのか、あなたは意識できていますか? おそらく、「なんとなく」やっている方がほとんどでしょう。

この連載では、その「なんとなく」を論理的に解説し、思考力を高めるための方法論をお伝えしていきます。方法がわかれば、再現できる。何度も繰り返すことで、思考力を鍛えることができるのです。ではまず、仕事の生産性を上げる重要なポイントとなる、集中力の話から始めていきましょう。

金魚よりも集中力の低い現代人

私たち現代人の集中力はどれくらい続くと思いますか? マイクロソフト社の研究チームが2015年に発表したレポートには、集中力に関する衝撃的なデータが紹介されています。現代人が連続して集中できる時間は平均8秒、というものです。ちなみに、金魚は9秒です。餌を注視したりしている時間がそれくらいあるということですね。

「まさか、金魚に負けるなんて」と思うかもしれません。でも、少し自分に置き換えて考えてみてください。1点を見つめ、何か一つのことを考えてくださいと言われた場合、すぐに別のことを考えてしまいませんか?
職場で一つの作業に集中するのは、さらに困難です。平均的なビジネスパーソンは、1時間に30回メールチェックをしていると言われています。IT系の企業では、MessengerやLINE、グループウェアなども加えると、数分に1回通知がくるなんてことは当たり前でしょう。移動中もずっとスマホを見て行動していますよね。
きっと、宇宙人が地球を観察しているとしたら、人とスマホのどちらが主人なのか、わからなくなるのではないでしょうか。私たちは情報を消費しているのではなく、情報に消費されていると言っても過言ではありません。人が情報を消費する時代は、とっくに終わってしまったのです。

さて、こんなに気を散らす情報があふれる時代で、仕事に集中して成果を出すにはどうしたらいいのでしょう。
集中力を上げたい、と思ったときにするべきこと。それは、今自分がどのくらい集中しているのかを数値化することです。それには、「集中力」を測る測定器が必要になります。
ダイエットでも、自分の今の体重を知ることができないと、何キログラム痩せればいいのか、その体重を減らすには何をすればいいのか、計画が立てられませんよね。何かの目標を達成するには、自分の現在地を知り、行動して、それがどういう結果をもたらしたかフィードバックを受け、やり方を修正してまた行動して……と繰り返すことが必要です。いわゆる、PDCA(plan-do-check-act)サイクルをまわす。

しかし日常の仕事に関して、そういう数値的なフィードバックを受けたことはほとんどないのではないでしょうか。日々の仕事というのは、基本的にDoばかりなのです。事前にあまり計画も立てないし、終わった後にチェックもしない。もちろん売上等の数字は出ますが、「仕事のやり方」についての数値的フィードバックはほとんどないのです。

集中力は「まばたき」で計測できる

では、集中力を測る装置、とはどういうものでしょうか。私たちが目をつけたのはメガネです。なぜなら、集中力は「まばたきの回数」や「視線移動」などで測ることができるからです。
テトリスをプレーしている人のまばたきの頻度を調べた実験(※)からも、それがわかります。まだ序盤でブロックが積み重なっていないときは、まばたきの頻度が高いのですが、上の方までブロックが積み重なってピンチになってくると瞬きの頻度は低くなる。人は集中するとまばたきが少なくなるのです。まばたきの頻度から、集中の深さを測ることができます。

※小川ら(2015)ヒューマンインターフェースシンポジウム2015

しかし、ずっと目を開いていると、目が乾いてきて逆に集中できなくなる。たまには、まばたきも必要です。つまり、集中している状態というのは、低い頻度で安定したリズムのまばたきをしている状態なのです。それを実証するために、私たちは特殊なメガネを使ってベテランと新人の茶筒職人のまばたき安定度を比較しました。
仮説は、ベテランのほうが集中できているだろうというものだったのですが、結果もずばりその通り。新人はまわりから話しかけられたりすると、すぐまばたきの安定度が落ちてしまいます。でも、ベテラン職人は時間が経つにつれて安定度が上がっていく。継続して集中できていて、時間の経過とともに集中の度合いが高まっていきます。

集中が継続するというのはどういうことかというと、リラックスできているということでもあります。集中とリラックスは、シーソーのように片方が高いと片方が低いというイメージをもたれているのですが、そうではありません。
生理学的に説明すると、集中しているときは交感神経がはたらいていて、リラックスしているときは副交感神経がはたらいている。これは、どちらかが活性したらどちらかが不活性になるというものではなく、両方活性させることができるのです。リラックスしていると、長時間集中することができます。

そして、集中力の深さを測るための最後のポイントは、姿勢です。まばたきが安定するためには、呼吸を安定させることが必要。それには、正しい姿勢をとることが必要です。子どもの頃、授業中などに「背筋を伸ばしなさい」と言われたことはありませんか。これはただ見栄えを良くするためでなく、集中力を持続するという意味があるのです。

「アタマ」「ココロ」「カラダ」で数値化

さて、この「まばたきの頻度」「まばたきの安定度(リラックス度)」「姿勢」の3つで、集中力を測れるということがわかりました。ここで、まばたきを計測するのに使ったメガネについて簡単に説明しておきましょう。
このメガネは、メガネブランドJINSが開発した「JINS MEME」というものです。JINS MEMEには3点式眼電位センサーと加速度センサー、ジャイロセンサーがついていて、それによりまばたきや視線移動、体の動きを補足できるようになっています。

私たちはJINSと協力して、「まばたきの頻度」「まばたきの安定度」「姿勢」を「ポイント」という単位で表示するアプリ「JINS MEME OFFICE」を開発しました。集中したい時間を設定して、JINS MEMEをかけて作業をすれば、その時間内でどれだけの時間、集中状態にあったかが表示されます。一見まじめに机に向かっていても、まったく集中できていなければそれがわかってしまうのです。

しかも3つのポイントを見れば、どこに問題があって集中できていなかったかもわかります。まばたきの頻度は「アタマ」、まばたきの安定度は「ココロ」、姿勢は「カラダ」のポイントとして表示されます。
「ココロ」に問題があるときは、呼吸をゆっくり整えればいい。集中していると息を止めてしまう人がいるのですが、それだと継続性が落ちてしまいます。また、「カラダ」に問題があるときは姿勢を正せばいいのです。「アタマ」のポイントを上げるのは、少し難易度が上がります。まばたきの頻度が多いということは、目標行動の設定が適切ではない、ということです。つまり、自分の実力に対してものすごく難しいことをやっているか、あまりに簡単すぎることをやっているか、どちらかということ。自分の実力より少しだけ上の目標設定ができれば、まばたきの頻度は低くなり、「アタマ」のポイントは上がります。

これをどう適切に設定するか、というのは、次回お話する、「フロー」という超集中状態に入る方法と深く関わってくるので、そこで説明しましょう。

それでは、今回のポイントをまとめておきましょう。

●集中力は、「まばたきの頻度」「まばたきの安定度」「姿勢」の3つで測れる
●低い頻度で安定したリズムのまばたきをしている状態が、集中力が高いとき
●集中力を高めるポイントは、呼吸をゆっくり整え、姿勢を正し、適切な目標行動を設定すること

次回は、目の前のことにすごく集中できていて、能力を最大に発揮できているような状態「フロー」について説明していきます。