【米南部オースティン=佐藤浩実】米ウォール・ストリート・ジャーナルは9日、米半導体最大手のインテルがシンガポールに本社を置く通信用半導体大手ブロードコムの買収を検討していると報じた。他の半導体メーカーに対する買収案件とともに評価を始めているという。インテルは日本経済新聞の取材に「M&A(合併・買収)に関する噂にはコメントしない」と答えた。
ウォール紙の報道によれば、ブロードコムが同業の米クアルコムに1170億ドル(約13兆円)規模の敵対的買収を表明していることに関して、インテルはこの買収が成立して競争上の大きな脅威になることを警戒していた。買収が進展しそうな場合に“防衛策”としてインテルがブロードコムに対する買収に名乗りを挙げる案を考えているという。ブロードコムの時価総額は9日終値ベースで1092億ドル、インテルは2433億ドル。
ブロードコムは昨年11月にクアルコムに対する買収を提案。クアルコムの取締役会が拒否したことで、金融機関や議決権行使の助言会社も巻き込んだ両社の攻防が続いていた。本来は3月6日のクアルコムの株主総会で株主が買収の是非を判断するはずだったが、米政府機関の対米外国投資委員会(CFIUS)が安全保障上の懸念があるとの理由で総会を1カ月延ばすよう要請した。
ブロードコムは9日に米議会に宛てた手紙で、買収が安保上の脅威にならないよう「5G」など次世代の通信技術への研究開発投資を維持することや、国防に関わるような事業を売却しないことを表明している。ただ、買収の行方は混沌としている。
インテルは「噂には答えない」とする一方、「我々は過去30カ月間に(車載半導体を手掛けるイスラエルの)モービルアイや(米半導体メーカーの)アルテラを含む重要な買収を行っており、顧客や株主のためにこれらの企業の統合成功を重視している」とコメントした。