やしきたかじん曰く「お前(博士)は芸人の目じゃない!」 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(終)

2018年03月09日 やしきたかじん シミケン タモリ 水道橋博士 田原総一朗 町山智浩 藝人春秋 高橋しょう子

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「Aさん、仲直りが出来たらたかじんさんの話でもしましょう」(水道橋博士)

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町山:あれ(水道橋博士のムラっとびんびんテレビ)面白いね~。

博士:あれって本当にネットで無料で見れるバージョンよりも、現場は本当に踏み込んでるんですよ。もう、フェラチオ寸前までやっているんです。

町山:あれの、しみけんが面白くて。

博士:面白いでしょ。セクシー男優ですけどね。インテリ。

町山:変態だよあの人。

博士:スカトロマニアなんですけど。

町山:AV男優なんですけど、普通のセックスに全く興味がなくて、スカトロの方に完全にいっちゃってる。

博士:でも何回言っても、そこを改めないでしょ。

町山:改めないでしょ好きなんだから。

博士:いやいや、彼は、『BAZOOKA!!!』の「地下クイズ王決定戦」で優勝できるほどものすごい頭脳明晰なんですよ。

町山:そうなんですか。ええ~?

博士:「地下クイズ王」って見たことあります?

町山:いや、ない。

博士:薬物の10とかね、裏社会の20、殺人鬼の30、北朝鮮の40とかそんなんばっかりが出題されるんですよ。

町山:ははは(笑)。

博士:地上波でオンエアできないことの知識を競い合う。

町山:ものすごく頭いいんでしょ。でも、変態だよね。

博士:彼はルックスもいいし、たとえば飯島愛がそうだったように、表のタレントとしても全然活躍できる。でもそのためには、スカトロだけはやめなきゃいけない。だってスカトロ男優でゴールデン出てるってどういうことだよ。ゴールデン(黄金)の意味違うわ(笑)。

町山:セックスは良くても、スカトロは好みがあるからなあ。そんな番組に博士が55歳で出てるってすごいなって思った。博士がね。あれでもさ、ボッキしない? AV女優が隣に座ってて。

博士:超ボッキしますよ!!

町山:ね(笑)。


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博士:かつですよ、ほぼ出演しているセクシー女優とツイッターで互いにフォローし合う。これは礼儀としてね(笑)。で、DMとか送れるようになるじゃないですか。その時の俺の、「あ、DM送れるんだ!」っていうドキドキ、ないですよ。

町山:実際送らなくてもドキドキする?

博士:いや、実際に送ってますから(笑)。ボク、私生活でも「浮気童貞」っていう設定を続けてるんですよ、もう5000日くらい続いている。衣笠や金本の記録を超えている。で、それを、もし破る時は、自分の中でもうツイッターで「浮気なう」とか、なんなり書くって宣言してるから(笑)。

町山:『お笑い 男の星座』の中で博士書いてますね。飯島直子さんに電話番号教えてもらったんだけど、で、そこにかけたんだけど、あがっちゃって何も言わずに無言で切っちゃったって。

博士:あの話は『藝人春秋2』の下巻でも、要約して書きましたよ。かなり昔の話ですけどね。

町山:いやー、分かるけどね。


(下巻 P121)
「あー楽しかった! ワタシ、芸能界に友達が少ないんですよ。今度、飲みに行きましょうね!」
 立ち去り際、飯島直子が割り箸の袋に自分の電話番号を書き、ボクに手渡したのだ。
「水道橋ぃ、これはお笑いの神様が与えてくれた最高のネタだぞ! すぐ電話しろ! しなきゃクビだ!」  
 興奮するダンカンからの絶対命令を受けたボクは、その日から、ひとり部屋に籠もった。
 あらぬ妄想に悶々とする夜を重ねた、その時!
「言っちゃえよっ、ガツンと言っちゃえよ!」と飯島直子がボクに語り掛けてきた。テレビに映る缶コーヒー『ジョージア』のCMと現実の区別がつかなくなっていたのだ。
 どうにでもなれ!! ボクは意を決して受話器を取った。
 しかし、呼び出し音が鳴り続けるだけだった。「ピ――ッ」という発信音の後、留守番電話に替わった。
「はっ、博士。すっ、す、水道橋です。あ、あ、あの、帰ったら、で、で、電話を下さい!」
 震える声でなんとかメッセージを残した。
 その日の深夜、再び奇跡が起こる。折り返し電話が掛かってきたのだ!
「もしもし、飯島です。仕事で遅くなっちゃって......」
「............」
 長い沈黙。
「あれ!? 博士さんですよね?」
「ち、ちがいます!」
 親しげに話す彼女の声に動揺したボクは、思わず電話をガチャンッと叩き切ってしまった。
 ジ・エンド!
 行き当たりばったりの出来事とはいえ、小心者芸人のメルヘンチックな、実によくできたオチだった。


博士:これも最近、何回も言ってるんだけど、『ムラっとびんびんテレビ』で、高橋しょう子っていう、セクシー女優と共演してて、もし高橋しょう子と浮気童貞を破れるんだったらいいんじゃない? っていうのを、カミさんに相談したのね。高橋しょう子のAVのDVDを見せながら(笑)

町山:これだったらいいでしょ、これだったら許すでしょ、みたいな?

博士:「この娘、こんなに綺麗なんだよ!」って言って。

町山:それバーンって殴られて終わりでしょ。

博士:いや、違う、違う。カミさんに「パパ、これだったらいい!」って言われたんだよ。

町山:え、言われたの? 「これだったら私しょうがないわ~」って。すごいなそれ!(笑)

博士:ボクが、いろんなところで、浮気童貞、浮気童貞っていうのが迷惑なんだって。カミさんがやらしてないみたいに言われるのがイヤなんだって。「いいよ! いいよ、こんな娘だったら」って。
 で、渋谷のロフトでやった吉田豪の生誕祭でも言ってたんだけど、具体的には吉田豪とコンバットRECに止められたんだけどさ。DMで、高橋しょう子さんと会話したときのドキドキドキっていうのがすごかった。

町山:それが一番いいかもよ。それ以上しない方がいいかもしんない。

博士:もちろん、結果的に「やってない」から今、言ってるんだけど......。
 で、今年の都知事選にカミさんと一緒に行ったときに、投票で入れる相手がいないわけですよ、右も左も駄目。小池とか。鳥越とか、全部駄目でしょ。それで、その時に頭の中は「高橋しょう子に入れたい、入れたい」とずーーっと思ってたから、そしたら候補者の名簿に「高橋しょうご」って奴がいたんですよ。若いやつ。そんで「高橋しょうご」って思わず書いて、カミさんの前で「俺、高橋しょうごに入れる!」って。

町山:「ねえ、入れてもいい? 入れちゃうよ」とか言いながら。ハハハ。

博士:わー! 俺、高橋しょうごに入れてるー!!

町山:「ああ、入ってるー」とか言いながら。 アハハハ。2人して頭おかしい(笑)。でもね、こういうバカなことしてた方がいいでしょ。

博士:うん。楽しい。こういうくだらない話が一番いい。
 橋下徹の生放送降板事件の、本当は2週間前、町山さんがMXテレビにゲストで来たときに、コメディ映画の特集をしたの。で、喜劇俳優のサシャ・バロン・コーエンを紹介してね。『藝人春秋2』で週刊文春の連載の時にはサシャ・バロン・コーエンっていう人の章があったんです。単行本化した時には落ちたから分かりにくいんだけど、サシャ・バロン・コーエンっていう人は、ケンブリッジ大学卒業の超インテリなんですよ。イギリスのアカデミー賞もとるほどの、だけど、映画の中では、常にちんちん出してる。本物のね。


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町山:必ず出すね。ちょっと自慢なんだろうね。

博士:日本で言えば、京大出の宇治原くんが、江頭2:50の芸風で売れている、みたいな。しかも新作映画が出れば、その公開週は必ず興行収益一位になるの。日本以外では。年収は20億円超えているし、ブラッド・ピットやトム・ハンクスを超える、マネーメーキングスターなのね。

町山:アメリカやイギリスでは誰でも知っているコメディアンです。

博士:だから、コメディアンで、頭の良い人は、チンコを出すのが、本来、コメディアンの主流だよっていう話を延々と町山さんが、MXテレビで言ってる。

町山:だって、サシャはいつもチンコ出すじゃん。

博士:その時に、「バカなことをやってないとバカになる」って。この本の中にもキーワードで出てきますけど、それを町山さんが言うんですよ。それ橋下徹事件の2週前の出来事だから、俺はその時点で洗脳されているの。「バカなことをやらないといけない、いけない、いけない。いつやるの、今でしょ!」って(笑)、『たかじんNOマネー』でね。

町山:でも、あれはギャグに見えなかったもん。

博士:見えないんですよ。めちゃめちゃ滑ってるって、自分でも、そうこの本にも書いてる。だって、そもそも『サンジャポ』の橋下徹の生放送降板事件を誰も覚えてないから。本人ですらポカンとしてるんだもん。でもね、お笑いって、時が経つと、スベっているのも面白いんですよ。本気であのときは「スベっていた!」って言う人は無粋っていうか。お笑いの価値観が広くないんです。


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町山:威張っている人って逆だよね。威張っている人はバカなことしないようにしてる。バカに見られたくなくて、みんなに尊敬されたくて、みんなに「すげー!」って言われたい人が威張っている人なんですよ。慎太郎とかこんなこと絶対AV女優と対談しないじゃないですか。

博士:確かに石原慎太郎は、「慎太郎のムラッとびんびんテレビ」って、やらないね(笑)。

町山:絶対失敗談を話さない。猪瀬さんもそうですよ。グラムロックみたいなロンドンブーツはいたり自虐ギャグはしない。

博士:あの千葉の伝説的年齢不詳のロッカー・ジャガーみたいな格好をして欲しいね。絶対受けるよ(笑)。


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町山:青山さんも俺はかっこいい、強いって思われたくて一生懸命。それって、ものすごく痛々しい。

博士:年をとればとるほどね。

町山:猪瀬さんが5,000万円をカバンに入れる記者会見は本当に悲しかった。普段からバカなことやってたら、そんなに悲しくなかった。だから、たけしさんが本当に偉いなと思うのはさ、必ずバカに見られようとするじゃない。偉くなってドンドンドンドンみんながこうやって上げちゃうから、被り物したり、訳の分からない格好したり、鼻の下にマジックで鼻水描いたりするじゃないですか。みんなが上げようとするから、無理やり自分を下ろそうとする。地に足をつけようとする。それって、自意識の問題ですよね。

博士:たけしさんは、芸人っていう存在はそういう存在なんだっていう自覚の強さはあると思いますよ。人を笑わせること、影響を与えることは、どんな方法でも上品であり、人に威張ったり、人を制するようなことって下品でしかない。これは芸術や芸能をする表現者の一番大事なことだと、ボクも思ってますよ。今、辿り着いた気持は。


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町山:たけしさんが昔からずっと言い続けていたのは、「森繁になるな!」ってこと。森繁久彌さんは昔は、スケベな社長役しかやってなかったのに、いつの間にか晩年は人の道を問う人になってて、愛とは、とか、人とは、って言い出すのは、おかしいじゃないか、って。それで、たけしさん、森繁さんがいるとこに出かけて行って、かぶりもので無理に絡んでお笑いテロをしかけてた、何回も何回も。

博士:そうそう。日本アカデミー賞でね。森繁批判を本人の前でやって。「何時まで生きているんだ、順番を守れ森繁!」って。すごいよ。

町山:あなた昔、下品なギャグやってた人じゃない。なんでこんなところで持ち上げられて、えらそうに上から目線でもの言ってんだって。森繁さんを引きずりおろしたかったんだね。たけしさん、すごくはっきりと、自分は上がった分降りるって決めてるから、バカな格好するじゃないですか。それって多分、自分を外側から見る視点があるんだよね。タモリさんなんかもある。

博士:ある。ある。もちろん、さんまさんにもある。

町山:ある人とない人で差がつくんですよ。なくなっちゃうと、「100m12秒4」とか言っちゃう。

博士:「屋根の上のバイオリン弾き」なんて威張ってちゃだめなんですよ。死んでるのか、生きているのかわかんない、「雲の上のバイオリン弾き」くらい行かないと(笑)。俺たちもそういう漫才やってた。そういう感覚じゃないと。神格化されて地上に降りてくるような、何で芸人が名優になるんだ! って。そういう批判精神でしたよ。たけしさんは。

町山:鶴瓶さんなんかもね。映画とかテレビとかでいい人、いい人、いい人って思われると、チンコ出すでしょ。「みんな忘れるな! 俺はこういう奴だぞー」って。あれって正気を保つためだと思うよ。

博士:チンコを人前で出せる人か出せない人かっていう芸論を、談志師匠がずっとやってるのを知ってます?

町山:いや知らない。

博士:出せるやつはすごいって言って、あいつは出せないこいつは出せるって言って。
 小朝は出せない、たけしは出せる、鶴瓶も出せる、とか、具体的にあるんですよ。で、たけしさんと共演した時は、談志師匠は、いつも出していましたね。

町山:それ、キンタマをゴムで引っぱんなくてもいいんだよね? ビューーーンって。それは痛いから勘弁してくれって問題だけど。

博士:俺は本当にチンコを出せる人だって自分では思ってるから。むしろ、芸人なのに人前で洋服を着ているのが恥ずかしいくらいで。

町山:だから俺を本番中に脱がしたんだ。

博士:そう。さっきのMXテレビのコメディ特集の最後に、散々、喜劇論を言って、で、共演していた、高橋ヨシキさんが、「じゃあ、そう言う自分が脱げよ!」って。

町山:生放送なんだけど、ヨシキが、「博士、町山さん脱いで脱いで!」って。

博士:最後のワンカットで脱ぐの。

町山:あれディレクター介入しなかったからね、あの時ね。

博士:そう。最後、ふたりがフルチンで終わるっていう。

町山:全く介入しないんだディレクターが。何にも言わないっていう。俺と博士だけで決めて勝手に脱いで、スタッフが何も口出さない。どういう番組なんだあれ一体。

博士:あれも、もう、なかったことになってる。結構な事故なんだけど。リリーフランキーが『いいとも』に連れてきたラブドールも、これ本に詳細に書いてるけど、全くなかったことになってる。


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町山:『笑っていいとも』では、ラブドールいけないの?

博士:俺、今まで、テレビを長年見続けたけど、本当に客が引いてるときにマンガの吹き出しで音がするっていう描写あるじゃん、それリアルに見たのあれだよ。「ヒィーーーー!」って。もう、そのフキダシが見えるくらい、それくらい引いた。

町山:リリーさんのラブドール、見たけど、怖いんですよ。博士に連れられて、ニッポン放送で生放送中のリリーのところ行こうって誘われて行ったら、そこにラブドールが座ってたんだけど、俺、気がつかなくて。誰も言わないから。で、動かないから、よく見たら人形で。俺、死ぬほどビビった。

博士:あの時、リリーさんが『オールナイトニッポン』やってて、しかも共演者が、ラブドールと一緒にやってるんですよ。もう、何年も会ってないって言うから、俺が町山さんを無理やり連れて行ったの。

町山:俺、事前に何にも聞いてないから、怖かったよあれ。

博士:みうらじゅんさんや、リリーさんがやってることが本当のバカですよ。

町山:『笑っていいとも!』でやった時に、結局あれはなかったことになって、再放送もされない。

博士:日曜日の増刊号じゃ放送されなかった。YouTubeには残っているから、皆さん、見て確かめて欲しい。

町山:ラブドールはちゃんと服着てたから、削除すべきものでもないのに。

博士:あの時はリリーさん......俺が振るときに、ラブドールって言ったのを、タモさんは「ラブラドール」だと思ってたから。リリーさんと一緒に住んでる犬が来るんだと思ってた。それで次のコーナー行ったときに、「タモさん、今ラブラドールだと思ったかもしれないけど、ラブドールですから」って耳打ちしたら、そしたら平然と「あ、そうなの」って。何にも動じない、タモさん。

町山:しかもそれ車椅子に乗せてきたんでしょ。ホラーだよね。

博士:本当にこの本の中で描写を丁寧にやってるから見てください。こんなの『笑っていいとも!』でやったの? って。それでワンコーナー、誰も笑わないのに「お~、結構柔らかいねえ」とかタモさんだけが笑って、ラブドールをいじり倒して、次のコーナーではぱーっと消えてた。これ描写が正しい。

町山:俺が当事者だったら、びっくりする。怖い。

博士:怖いでしょ。ましてや、いいともの観客なんか...。

町山:引いたからね。真っ青だ。

博士:「ちょっと連れてきます」って言って、連れて来た時の、ヒーーーーーッて。すごかった。
 あれも、前日の友達の輪で、ボクも事前に用意した言葉ではないから、ただ言葉に窮して咄嗟に「彼女連れてきてくださいよ」って言ったからね。そもそもリリーさんに繋がるって知らなくて。本番前の打ち合わせを細かくしてなかったから。

町山:最初から決まってるんじゃないんだ、あれ。

博士:何人かの候補って言われてたけど、最終的にリリーさんに決まったっていうところまで打ち合わせができてなかった。

町山:あっ、そんなもんなんだ。

博士:本当はしてるのかも分からない。でも生放送でこっちもさ、スタンバイで何やろ何やろってテンパってやってるじゃん。ディレクターもそれをこの候補でって、最終的にっていうところまで行かなかった。
 だから咄嗟に電話がかかってきた時に、リリーさん、まあ、当時もボクは会ってたから。高円寺でやった、みうらじゅんさんとラブドール2体と一緒のトークLIVEも行っていたんで。既にリリーさんの新しい彼女のリリカさんも紹介済みだったの(笑)。人形を連れて居酒屋で飲みに行ったんだから(笑)。

町山:タモさんがさ、もともとは放送禁止用語を言いまくる人だったってみんな忘れてるんだろうね、知らないんだろうね。キャンタマって言ってたよね。キャンタマだったら良いだろって(笑)。

博士:そうそうそう。

町山:キャンタマだといいのかな?

博士:たけしさんなんか、ずっと「コーマン」って言ってるよ。放送の度に「コーマン、コーマン」って。これって女性器の逆さ言葉だからね。

町山:放送の規定にないからいいってことなんだろうね。

博士:しかも洋七師匠が浮気スキャンダルになった時ね、81年くらい。梨元なんかに追いかけられて、洋七師匠が直撃されるんだけど、隣にたけしさんが居て、言ってる言葉全部放送禁止用語なの。それでワイドショーで全部流せないんです。

町山:放送妨害のために放送禁止用語言うんだ。

博士:そう。ずっと「そうです。こいつは、オマンコしました、死刑にしてくだい」って。「え、オマエ、かみさん以外とオマンコしたの?」って。

町山:使えないように。

博士:いや~あれは高度だったな(笑)

町山:すごいね、それね。みんなやった方がいいね。

博士:みんなやった方がいいけど一瞬で消えるっていうね。西原理恵子さんだって、「オマンコ」って言葉を言っただけで、MXテレビのレギュラー消えたからね。

町山:俺、消えなかったよ。

博士:え、どこで言ったの?

町山:TBSラジオ。

博士:あ、言ってたね。今でも、ちょくちょく言ってんじゃん。

町山:しょっちゅう言ってるけど、なぜか、抗議もなかったですね。

博士:それこそ、うちの相棒なんて、爆笑問題とTBSラジオで10年ぶりかなんかで共演して、最後に感想はどうですかって聞かれて、「あ~いい、オマンコができた」って。それなのに昼のレギュラーになったからね。まさに、その番組が「たまむすび」ですよ。

町山:上手い! 玉、ひっぱって結ぶの? 痛そう!

博士:玉袋筋太郎なんだからいいんじゃない?

町山:今、NHKは彼をどう呼んでるんですか?

博士:玉ちゃん。

町山:あーそうなんだ。やっぱり玉袋筋太郎はまずい。

博士:だめなんじゃない? 本当に初期の頃は「知恵袋賢太郎」って変えられて。本人のテイストがなさすぎる。

町山:水道橋博士という芸名は、博士みたいってことでつけられたんですか?

博士:ひょっこりひょうたん島に出てくる博士。あんな感じだったんですよ。俺が弟子入りした時。背が低くて、べっこうのめがねをかけていて、目つきも悪くて自分で見てびっくりする、それで水道橋博士。
 当時、たけしさんがTBSでたのきんと一緒にやってた。その時に「たまきん!」って連呼してたの。

町山:えっ。「たまきん全力投球」はオールナイトニッポンのコーナー名でしょ。

博士:だけど、元々は『たのきん全力投球!』ってTBSの番組名がありきだから。

町山:たけしさん出てたの?

博士:出てたよ。その後、『突撃HOTスタジオ』で、たのきんと一緒にコントをやってましたよ。

町山:えっ本当に? あ、お客さんで、「たのきん」ってなんだか分かる人? ああー、分かんない人もいますね。田原俊彦と野村義男と近藤真彦。

博士:眼鏡の野坂なつみさんの旦那さん、あ、ヨッチャンのことだけど。

町山:ジャニーズで「たのきん」ってすごいね。社長が好きなものだから。

博士:YOU! それはだめだよ!(笑)

町山:たのきん好きー、みたいな。

博士:そのコントの中に出てくる、「木人28号」をあやつるキャラクターが、水道橋博士だったんですよ。だから、水道橋博士っていう名前は前からあるんだなって、つけられた後に思った。お茶の水博士のパロディの水道橋博士なんですけど。総武線の駅で言えば、お茶の水の一歩手前の。

町山:俺も覚えてるんですけど、昔、博士って目がぎょろっとしてた。

博士:ぎょろっとしてた。ものすごい目つき悪かったね。

町山:今、田原総一郎さんみたい。特に田原総一郎さんに似てきましたね、最近。

博士:それ飼い犬がね、飼い主に似てくるって言う現象なんですよ。長年一緒に住んでいると、野村監督とサッチーが同じ顔になってくるのと同じ現象です(笑)。
 俺、1年半くらいかけてDVD企画で田原総一郎、全部の著作を読んで、それで、50年前に撮った、テレ東時代のドキュメンタリーを研究していたから。

町山:研究しすぎて。顔まで似ちゃった。

博士:これ、田原総一朗の章で本にも書いてますけど。本当そうなんですよ。


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町山:俺、田原総一郎さんと1回しか仕事したことないんだけど。そん時デーブ・スペクターと一緒だったの。デーブさんと2人で座ってて、いきなり「デーブ!」って、田原さんが。「ブッシュ大統領って知ってる?」って。

博士:ははは(笑)。

町山:あのデーブがシャレで返せなかったもん。「??」って。絶句。

博士:そのパターンで一番有名なのは、「朝生」に出てきた思想家? みたいな人に「聖徳太子って知ってる?」って。「知ってるよ!バカにしているのか」って、そのひとが尋常じゃないほどに切れまくるという。YouTubeの名シーンだけど(笑)。

町山:田原さんのあれは一体なんなの?

博士:あれは話法。田原話法です。

町山:あれ、わざとやってる?

博士:わざとやってる。俺、初めて『スコラ』の対談で会った時に、「小泉純一郎って知ってる?」って言われたもん。

町山:とんでもないよあれ。相手がどういう反応すると思ってるの? わけ分かんないよ。

博士:あれ何なんだろうね。相手の意表をつこうとしてるのかね。威圧するみたいな。

町山:びっくりして二の句がつげないんだもん、デーブ・スペクターが。田原さんの意図が分からないから、あのデーブさんも反応できないじゃん。

博士:ああいうので機先を制するという、話術だと思う。

町山:「これで勝った!」みたいに? すげえなもうそれ。

博士:だって、高齢者の性の問題やってて、こないだ、これも原稿にも書いてるけど、NHKで。『クローズアップ現代』か。さあ、高齢者には性の...って真面目にやってて。「え? で、このあと何やったの? このあと何やったの?」って。生放送なのに。風俗店だけど、「この後やったの? この人と」。

町山:それって、ものすごく悪いことしたみたいだよ。

博士:で、最後「田原さん、今日は高齢者の性の問題について...」って、「いやそんなことはどうでもいいんだよ。天皇だよ、天皇の問題だよ!」って。すぅーっと終わっていった。

町山:高齢者の性についての番組でしょ。

博士:それなのに、天皇の生前退位を言い出す。

町山:そういう番組じゃない。

博士:そう。ずっとそれしかやってないのに、「その話はいいんだよ! 天皇の退位の問題だ」って。生放送。暴走老人とはあのこと。

町山:どうしたらいいのそれ。

博士 それも書いてるよ。ここ、ここ。


(下巻 P297)
 田原総一朗は、今も意気軒昂だ。とっくに80歳を超えているが、先日も生放送でやらかした。
 2017年5月18日、NHKの報道情報番組『クローズアップ現代+「高齢者だってセックス」言えない〝性の悩み〟』に、高齢者代表で出演したところ......不規則発言を連発した。
「ちょっと余計なこと聞くけど、さっき風俗店でね、本番以外のことをやると。何やるんですか?」
「(NHKの司会者に)あなた、奥さんとセックス語ってる?」
 そして番組の最後にも、司会者がまとめに入ろうとすると唐突に吠えた!
「性の問題はいいよ! 天皇がね、お気持ちを表明された。これはね、明らかに生前退位のためには皇室典範を改正して欲しいという気持ちなんだ。政府は皇室典範改正に反対なんだ。安倍さん、何しているんだ。おかしいでしょ!」
 老いてなお盛んなのは、言論だけにとどまらない。 
 愛妻に先立たれる辛さを誰よりも知り、妻への〝殉愛〟〝殉死〟を旨とする全身過激恋愛家の田原総一朗なのだが――。
 

博士:こんなの生放送で対応できないでしょ。うちの北野オフィスにダースレイダーってラッパーが入ったの。東大中退、お父さんは、ニュースステーションの解説員の和田さん。その人が、俺の直属の下になって、マネージャーが同じだから。彼がこないだ『朝生』に出て、そしたらいきなり、田原さんに「だまれ!」って言われて。

町山:それ、もう司会者じゃないよ~。

博士:Abemaの『NEWS RAP JAPAN』っていう番組にゲストにきて、ダースレイダーが司会で。めっちゃ喋れるから、東大も出て、ラップもできるし。能力的には本当、「朝生」の司会もできるレベルの人なんで、それで田原さんに「出てくれ!」言われて、出演したら、生放送で喋ろうとしたら「黙れ!」って言われるあの理不尽。

町山:もうむちゃくちゃ(笑)。ところで、博士は田原さんの2代目になんないんですか。朝生の司会。

博士:無理無理無理!!

町山:なんで~?

博士:いや、あんなのやったら、ノイローゼになるわ。

町山:田原さんが始めたのって、博士よりも若かったよね。

博士:若い若い。でも無理だね。そういうところでいうと、自意識の壁っていうか、自分はできないんだなって思う。日テレの『オジサンズ11』って、『しゃべくり7』の前番組の司会をやったんですよ。それこそ、小倉智昭さんから、テリー伊藤さんから、徳光さんから。福留さんとか司会者が全員11人集まって、その総合司会がボクですよ。

町山:すごいね。みんな還暦越えばっかり集まって。

博士:ヤッ(薬丸)くんや、羽鳥さんも居たけどね。でも、皆、一角の司会者で冠番組を持つひとじゃない。それで1時間番組で、それぞれのマネージャーとか全部ついて、本番やった後にさ、みんな、そりゃあ、各自が自分勝手じゃん。

町山:そりゃね。彼らみんな司会者だから。

博士:そう。本番前に、「うちの小倉のオンエアみたら、20何秒しかないんですけど」とかそれぞれに裏方さんがいて、みんながみんな抗議しててさ。俺、あの番組やっていて完璧ノイローゼなったもん。できないね。
 ああいう時に、爆笑の太田くんなんかは、そういうのを平気で、自分だけのワンマンショーやって、自分が「総理」になっちゃう。俺の方が偉いに決まっていると思える自意識で、まぁ大雑把に出来る人だと思うんだけど、俺は本当に全員に発言機会を回さなきゃいけないと思う方だからさ、それで資料を毎日、こんなに読んでさ、緻密にやろうとするでしょ。
 だから、「ああ、やっぱ俺には出来ないんだな」と思ったね。当時は。今なら、もう腹をくくってるから、出来るかもしれないけど、当時はもう能力的に俺には出来ないんだっていうのが分かった。

町山:入れ替わってても、あんまり分かんないかもしれない。田原総一郎さんと。

博士:あの番組で、一番面白かったのはさ、元・日テレの福留さんもいたのね。あの時に、『オジサンズ11』のメンバー全員にヒゲをつけたの。日本は髭のアナウンサーがいないって話題から。

町山:あ、日本にはいないねえ。

博士:日本にはいない。だから、つけた途端に、俺が「アルジャジーラ放送です」ってやったんだけど、全員ヒゲだからさ、それはそれで「面白い!」って受けて(笑)。そしたら、福留さんが小倉さんに対して、本番中だよ、指差して「小倉ちゃん、上も下もヒゲついてんじゃん!」って言ってね。

町山:頭の上にも(笑)

博士:受身がとれないよ。あれは!! あれから福留さんは、テレビ界から消えてったよね。あまりにもガチンコ発言が多かったから。

町山:最強の選手が集まってんじゃん。しゃべりに関して。

博士:そうそう。そういう意味では小倉さんはすごかったよ。1分間フリートーキングって言って、とにかく1分間で落とさなきゃいけない話をさ、みんなしゃべりのプロだからやるんだけど、俺は司会者だったからさ、全員のチェックシート、「このネタこういう風にやります」っていうの聞いてるんだけど、小倉さんは事前にネタを一切準備していないの。順番も最後でいい、全員がやって、誰かがまったくやってないようなネタを自分はアドリブでやるからって。で、実際、出来るんだよ。一分で落とす話を。アナウンス能力が凄かった、そういう意味ではプロです!! 頭(ズ)抜けていた!

町山:毛並みがいい!

博士:毛並みがいいねえ~(笑)。そういうのは客観的に認めるよ、俺はやっぱ。


(音楽流れる)


町山:ずっと続くんですか? 「男の星座」づくりは、今後も。

博士:連載は続いているし、読み返してて、まだ書ける、まだ書けると思って。3作目をもう出したいんだけど、周囲から、ちょっと落ち着いてくださいって。

町山:思ったのは、博士がこういうことできるのは、この中でも書いたけど、もう自分は「あの世」にいるんだっていう意識で書いているからじゃない? 芸能界っていうのは、普通の人には体験できない「あの世」なんだって書いてる。たけしさんの弟子として認められたときに、もう自分の人生の目的は達成したから、あとは余生なんだって。

博士:「あの世」と「この世」のキーワードとテーマは、それは1作目のまえがきから続いてて。「この世の物とも思えぬあの世コーナー」ってたけしのANNから引用してる。

町山:自分が芸能界にいることに対して絶えず疑いを持ってる。「俺、此処にいていいのかな?」みたいな。

博士:今、あの世かな、この世かな、みたいな。感覚は抜けない。

町山:そう。それを、やしきたかじんさんに見抜かれてて、「お前は芸人の目じゃない、記者の目だ、観察者の目だ!」って。観察者だと思うよ。そこが面白い。他の芸人さんと決定的に違うのは、全然芸能界に染まってない。一般人の常識で芸能界を見ている。


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博士:それを、やしきたかじんが、『研ナオコとたかじんのシャベリタリーノ』って東京の番組で、テリー伊藤さんがゲストに出てて、ボクのことを言った瞬間、偶然見ていたんだけど、それまで会ったことなかったのに、その時、自分が見抜かれたっていう感覚は忘れられないね。

町山:スパイだと見抜かれてる。

博士:もう、たかじんはボクの正体は分かってるっていう。

町山:ジェームス・ボンドみたいに会った瞬間「ジェームス・ボンドです」って言わない人だからねえ。だから、やしきたかじんさんすごいって思ったもん。

博士:あの人も元々記者体質だからね。新聞部出身、学生時代は新聞記者志望だったんだからね。元々。だからジャーナリスティックなお笑いをやってて。だけど右傾化していたっていうのは、それはAさんの......。

町山:Aさんね。最初の方に出てきた話だからみんな忘れてるかもしれない。やしきたかじんの番組のプロデューサーで、「虎ノ門ニュース」とか「ニュース女子」の仕掛人。

博士:名前言えないけど......是非、訴えて下さい(笑)。そして、その後、ノーサイドになって、仲直りが出来たら、たかじんさんの話をゆっくり話しましょうよ。

町山:色んな現代の政治に対する提言も含んだ博士の男の星座の旅は続くということで、みなさんどうもありがとうございました。

博士 ありがとうございました。(終|文中敬称略)


(2017年11月30日〈文春トークライブ 第20回〉
町山智浩×水道橋博士『言霊USA』vs.『藝人春秋』より)

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