「政府閉鎖」寸前を繰り返す米国のヤバい状態
鳥獣が跋扈する米国の財政リスクを見失うな
米国の政府機関閉鎖は、わずか3日で終了した。「相変わらずのから騒ぎ」という印象が強いが、債務上限引き上げでの混乱や財政赤字の拡大等、米国財政をめぐるリスクが着実に高まっていることは見逃せない。まともに予算を決められない異常事態に慣れてしまうのは禁物だ。
政府閉鎖は共和党の圧勝で終了
「なかなか良い交渉手腕だな」
米国のドナルド・トランプ大統領は、上院共和党を率いるミッチ・マコネル上院院内総務を、こう褒めたという。暫定予算の期限切れで1月20日から始まった政府機関の閉鎖は、2月8日までの暫定予算の成立により、3日目となる1月22日に終了した。あっけない幕切れである。
閉鎖の引き金は移民問題での共和党と民主党の対立だったが、結果は共和党の圧勝だった。民主党はバラク・オバマ前政権が始めた若い不法移民に対する本国送還の猶予措置(DACA)を継続するよう求めたが、マコネル院内総務は上院での審議を約束したのみで、譲歩らしい譲歩をせずに、民主党を切り崩した。
民主党には、計算違いが重なった。「大統領と議会の多数党が共和党である以上、世論が政府閉鎖で責めるのは共和党」というのが、民主党の計算だった。確かに、全米規模の世論調査では共和党を責める割合が高かったが、トランプ大統領への支持が強い州では、「民主党は国民より不法移民を優先している」との声もあった。
間が悪いことに、今年11月の中間選挙で改選となる民主党の上院議員には、そうしたトランプ大統領の支持が強い州を地元とする議員が多い。民主党の結束は、長続きしなかった。
トランプ大統領の“静けさ”も誤算だった。民主党は、「取引(ディール)」好きのトランプ大統領なら、議会の共和党指導部を差し置いて、自ら民主党との妥協に乗り出すと踏んでいた。仮にディールが不発でも、必ずやトランプ大統領は問題発言を行い、世論は民主党に味方する。そんな計算もあったはずだ。
ところがトランプ大統領は、マコネル院内総務等の進言を受け入れ、表舞台に出ようとしなかった。想定外のトランプ大統領の行動に、民主党は出口を見失った。