BitTorrent Inc.にuTorrentを売却したのはSpotifyだった

TorrentFreak

2008年秋、Spotifyが最初のベータ版を公開した際、我々はSpotifyを「海賊版音楽のオルタナティブ」と評した。

Spotifyはその当初から、より良いユーザ・エクスペリエンスを提供することで、海賊版サービスとの競争を試みてきた。それから10年が経ち、同社は大きく成長した。

そして、Spotifyはニューヨーク証券取引所に10億ドル規模の上場を予定するまでに発展した。海賊版音楽の問題は完全に解決したわけではないが、数千万人の海賊ユーザを正規の顧客に転換させた。

Spotifyは主要レーベルの支援を受けた海賊版対策の処方箋と見られているが、同社が海賊の流れを汲むものであることは否定できない。

スウェーデンの新聞社「Breakit」は、Spotifyの初期従業員である開発者ルドヴィグ・ストリゲウスにスポットライトを当てている。

過去にファイル共有に関わっていた彼は、Spotifyの株式を多数保有しており、億万長者の仲間入りも間近だ。保有株式の詳細は不明だが、スウェーデンメディアによると、10億クローネ、1億ドル超の価値があると見られている。

ストリゲウスは2005年9月、BitTorrentプロトコルがまだまだ目新しい存在だった時代に、uTorrentを立ち上げた人物だ。当時、多くのBitTorrentクライアントが肥大化に向かうなか、uTorrentはミニマリスト・アプローチをとった。もちろん、必要な機能はすべて備えていた。

uTorrrentは注目を集め、わすか数ヶ月で数百万人のトレントユーザにダウンロードされ、短期間のうちに主要ファイル共有ツールの地位に上り詰めた。

uTorrentは公開から1年と経たずして、BitTorrent社に買収され、今日に至る。これはよく知られた歴史だが、ここには欠けたピースが存在する。

ストリゲウスのプログラマとしての才能が、Spotifyの関心を惹きつけ、BitTorrent社の数ヶ月前に買収していたと言われていた。複数の情報筋によると、Spotifyはサービス開始以前の2006年にuTorrentを買収していたという。

しかし、その目的については意見が分かれていた。主にテクノロジーに関心があったのだという人もいれば、ストリゲウスが目当てだったという人もいる。

「SpotifyはμTorrentを買収したが、本当に欲しかったのはルドヴィク・ストリゲウスだった」と、Spotifyの元CEOアンドレアス・エーンはBreakitに語った。

Spotifyは買収の数ヶ月後、BitTorrent社にuTorrentを売却しているが、ストリゲウスが同社に残ったことを考えれば、この説明は事実なのだろう。ストリゲウスにとっても、莫大な富を生むSpotifyの株式を手に入れたのだから、悪い選択ではなかった。同時に、Spotifyにとってもストリゲウスの獲得は重要であった。

才能ある開発者がSpotifyに必要なP2P技術の実装に尽力してくれたことに加え、BitTorrent社への売却は、野心的なストリーミングサービスの開発のための資金をもたらした。

uTorrentとその開発者なくして今のSpotifyはない、などというのはいささか誇張であろうが、当時のSpotifyにもたらした影響は非常に大きかったといえる。

ファイル共有的側面は、初期のSpotifyアプリでも顕著だった。当時、Spotifyユーザに配信されたストリーミングトラフィックの大部分は、P2P接続を介したものであった。

あるいは、Spotifyがベータ版時代に、パイレート・ベイでのみ流通していた音源も含め、海賊版MP3を使用していたとも言われている。

SpotifyがuTorrentを一時的に所有していたという事実はほとんど知られていない。BitTorrent社が「uTorrent AB」の買収を発表した際も、Spotifyに言及されることはなかった。というのも、当時はSpotifyがほとんど知られていなかったためだ。

世は移ろう、ということなのだろう。

Spotify Owned uTorrent Before BitTorrent Inc. Acquired It – TorrentFreak