のりぽから話を聞いてソイツの記事を確認したシンくんは、のりぽを慰めるように言いました。
「心配しなくていいからね、こんなもんで警察なんか動くはずねえってこと、俺も経験上わかってるから。怖くなんかないから、大丈夫だよ。なんか言ってこられることはまず100%ないけど、何が起こったところで分があるのはこっちで、事実関係調べてもらったら向こうは完全に加害者なんだから」
「ちゃうねん、ちゃうねん、そんなんが怖いんじゃないねん」
「どうしたんだよ」
「ソイツが怖い、壊れ過ぎてる、とにかく異常者や、まともやない」
「まあおかしいとは思うけど・・・、イカレちゃいるよね」
この手のヤツらの被害にあった経験がないシンくんは、のんびりした口調で言いました。
「家調べて来られるようなことはまずないから平気、俺たちべつに家の周りの写真上げたりしてるワケじゃないんだし。もし実際来られたにしてもなんだってんだよ、相手は女だろ?全く怖くはねーよ、お前がもし狙われたところでお前は俺が絶対に守る、安心しろ」
そんな問題じゃないのです。
そんなことをのりぽは怖がっているんじゃないんです。
しかし上手く説明ができません。
説明出来ないままこのときはこの話は終わりました。
これ以上何も起って欲しくない。
のりぽはそう思いましたが、このままでは終わらないような予感も、感じていたのは事実でした。
恐怖感のとりこになっているのりぽの代わりに、時々シンくんがソイツの記事を確認しているようでした。
しばらくは何も起りませんでした。
そしてシンくんとのりぽは、二人の覚醒記念日である2月7日を待って入籍しました。
2月13日。
ソイツからの攻撃が始まりました。
「こいつ絶対にあいつの複垢だよな。もうわかってんだよ、文章がそっくりなんだもん。なんだよもう。また付きまといに来やがったのかよ。うぜっ、ああうぜっ!」
自ブログの記事についたあるコメントに、シンくんがうんざりした口ぶりで呟きました。のりぽも見てみました。確かにその人は例のソイツとそっくりな文体を持つ人です。
シンくんは何度かやり取りし、しまいに相手に例のソイツと名指ししました。その人はコメントを返しませんでした。
「やっぱりな。全く別人だったら、ワケわかんねえこと言うなよ何だ?ってなるはずなのに、図星さされて逃げてんでやんの」
そうしたら今度はまた別の中傷するようなコメントが入ってきました。やはり文体も似てるし、記事の内容と言うより、ブログ主の人間性を中傷するような内容です。今度はリンクが消してありました。
「なんだよコイツ、いい加減にしろよ」
のりぽは悪い予感がしました。
その日から、リンクを消した中傷コメントがシンくん記事にどっと届くようになりました。
ソイツらは「複垢、複垢」とシンくんに言いたてました。
シンくんはコメ返しに追われるようになり、仕事も忙しいのに記事も更新したいし、かといってコメントの返しを放置することもできず、イライラしてくるようになってきました。
ある方(女性読者さん)が、温かい励ましコメをシンくんに送ったらものの数分経たないうちに脅迫メッセージのようなモノがその方に届いたということです。
ソイツがシンくんを見張っていることは明らかでした。
おそらく、シンくんにリンクを消したコメを、複数の名前を使って幾通も書き、その返信が来るのを待ってパソコンの前に目をギラギラさせながらかじりついている。朝から晩まで。
自分以外の女とシンくんが絡むのが許せず、威嚇する。
般若の恐ろしい表情で、
死んだ魚のような目で、
パソコンのほの青い光を浴びながら亡者を思わす顔をして。
このままにしてはいけない。
のりぽは本腰を入れて、その恐ろしいものと対峙することに決めました。
吐気がする、喉元まで酸っぱい液がこみあげてくる、動悸がして、二の腕に鳥肌がさあっと立つ。頭が痛くなる。のりぽのトラウマが総動員されます。
でも、このままにはしてはいけない、
だって大切だからです。
のりぽよりも大切な人がおぞましいものに捕われようとしているからです。
祈って祈って、苦しくなったらその都度、のりぽを守るおとうさんの輝かしい無敵の力を仰いで、
のりぽは調査を開始しました。
ソイツの記事をいくつか、最新のものをチェック。更新はされてないようです。以前はかなり早いスパンで記事は更新する人だったようですが、このところありません。恐らく、シンくんに対するストーカー作業で忙しいのでしょう。
もう一度、ソイツの注意喚起記事とやらを確認。そして最近変更された様子のプロフィールをチェックします。
よくよく見るとかなりおかしい。本当におかしい。
プロフィールですが、
自己紹介=私の敵はどうやらエホバの証人じゃないみたいだ。
キライな人=複垢する人(そいつはのりぽがシンくんの複垢だと言って譲らない)
キライなブログ=オカルト・スピリチュアル系
その他にもいろいろあったと思いますがちょっと思い出せません、が、
これ、どう考えてもシンくんに対する挑発です。
問い詰められても、シンくんのことは書いてない、と言い逃れできる程度にシンくんに対する当てこすりです。
おかしいじゃありませんか。
危険!危険!そうアピってる相手をどうしてこんな形で挑発するんですか?
本当に危険だと思っているのなら、もっと無難な事柄を書き込むべきです!
これは明白な挑発です、ハッキリとあおりたてています!
火薬庫の前をくわえタバコでうろつく番人、危ないじゃないかと指摘したら、え?俺はタバコが吸いたいだけであって爆発したらいいなんて思ってないよ!
性犯罪の前科がある欲求不満の人間の前でキャミ一枚でああ~ん、あついわ~、なんてやりながら、誘ってるワケじゃないと、
そんな言い訳は通用しない!
注意喚起文を何度も読みます。
なにやら、脅しなんかにわたしは屈しない!みたいな一見カッコいいようなことを書いてあります。(これも記憶からの文章なのであいまいですが)
そこでひと考察。
この人、何を脅されてるって書いてるんだか意味わかってんのかな。
脅し、これには脅す側の目的意識があって初めて発生する行動の要求。例えば、身代金誘拐なんかわかりやすい。子どもの命を盾どって、金を目当てに脅迫するワケです。そこには脅してる側の要求が必ず存在します。
「脅しなんかに屈しない!」
この人の頭の中に、何かの要求をシンくん(脅し記事を書いたのはのりぽですが、この場合のりぽはソイツにとって複垢で架空の人物らしいのでシンくんと表記します、あーややこしい)から求められているけどそれに応じないと言ってるワケだ。
こういう言葉選びは実は重要です。何気ない語彙選択のように見えて、文責者の本音が刻印されているモノ、それが文章なのです。侮っちゃいけません。
暴力や犯罪を許しません!ならまだしも、ソイツは「脅しに屈する」などという言葉を選びました。選んだ言葉には意味がある。「脅されて」要求事項に「屈しない」つまり何らかの要求をのまない、と言ってるのです。
のりぽの書いたあの記事を読めば、まともな人なら、「ソイツの支持をしてる者はソイツから離れろ、ソイツ本人は心を入れ替えろ」という論旨であることは伝わると思います。しかしソイツはまともな人ではないため、何らかのすり替えが頭の中で発生しているはずなんだけど、それが何なのかわからない。
ロバート・レスラーが言った名文句、「深淵を覗く者は深淵に覗かれている」
こうした病んだ人間に心の波長を合わすのはつらい、本当に気持ち悪くてたまらないのだけど、止めるわけにはいかない。
改めて何度か目を通してみます。
これまでのソイツの行動パターンを全てなぞって、これらの資料と照らし合わせて考えます。
シンくんからもらった古いメールを読み、古い記事を読み、出来事に因果関係がありそうな日付の記事とコメントをチェックします。
今までのりぽを苦しめてきた奴らの言動を、今までのりぽが読んで蓄えてきた資料を、それらの情報を頭の中で何度も何度も何度も反芻します。気持が悪くなり、頭がガンガン痛み、何度も祈りながらそうします。
じわじわとわかってきました。
ソイツが、シンくんのある恋愛記事から勘違いの思い込みをし、シンくんをつけ狙ってきたことはすでに読者のみなさんにお聞きいただいています。
本当に本気でシンくんが犯罪者で危険人物だと思っていれば、それを暴こうと思っていたのなら、そこにこだわるはずだけど、のりぽという女が出てきたときから、それはどうでもよくなったようです。なので、ソイツの言ってるシンくん危険人物説はソイツ自身で覆したも同じ。
シンくんに愛されてるという思い込み地点から一歩たりとも動かないソイツは、のりぽというポッと出のワケのわからない女を不倫騒動で葬ろうとしました。しかしシンくん自らが公表しました、のりぽとは真面目な交際で、結婚するつもりだと。
ソイツはショックだったはず。
しかし、シンくんの明かしたもう一つの秘密に、ソイツは全力で目を向けます。
シンくんがDID(多重人格障害)
それなら、
のりぽを存在しない女にしてしまえばやっぱり「パパさん」はわたしのものだ!!!!
それで、のりぽは消し去られたのです。いない女にされてしまったのです。
ソイツがのりぽを徹底的に無視し、ちょっと応援コメをシンくんに書いただけの女性に牙をむくのに、のりぽは放置、この理由がはっきりしました。
のりぽがシンくんの人格の一人であれば気にする必要はない。
シンくんが結婚したとか言うのもシンくんの妄想なのだ。
まだシンくんは自分のことが好き、自分を愛してる、
気を惹こうとしてこんな小細工(結婚する女がいるように見せかけるとか)使ってくる!
そんな小細工には引っかからないわよわたしは!
わたしを試して圧力をかけているのね!
そんな圧力(脅し)になんか屈しないんだから!
ほの青いパソコン画面の光を受けながら、ソイツは笑っているようです。
歪んだ笑いです。
続きます!