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 仮想通貨交換所大手のコインチェックは2018年3月8日の会見で、資金洗浄(マネーロンダリング)に使われかねない匿名性が高い仮想通貨は取り扱い停止も含めて再検討すると表明した。経営状況の一部も公開し、顧客の口座数が累計170万、事件直前の2017年12月の月間取引高は4兆円に迫っていたことも明らかにした。記者との質疑応答で説明した。

 コインチェックは同日午前に、金融庁から2度目の業務改善命令を受けている。前回はシステムリスクへの対応が問題視されたが、今回は経営体制の見直しや顧客補償に関する金融庁への適切な説明に加えて、資金洗浄対策を取ることや取り扱い通貨の各種リスクを洗い出すことが求められた。

 コインチェックは「DASH」や「Zcash」などの匿名性が高い仮想通貨も取り扱い、取り扱い通貨の多さを売り物にしている。一方、金融庁は同社の資金洗浄対策を問題視し、同社がみなし業者のまま登録を受けられていない理由の1つと見られている。

 会見では金融庁の業務改善命令を受けた点に複数の質問が出た。大塚雄介最高執行責任者(COO)は「取り扱い通貨全てについて(資金洗浄を含む)リスクを洗い出していく。取り扱いを継続するかしないかを含めて再検討する」と発言した。大塚氏は事件当日の1月26日や日本円の出金再開を発表した2月9日には全ての通貨の取り扱いを継続すると発言していた。

会見に臨んだ和田晃一良社長(左)と大塚雄介最高執行責任者(右)
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 これまで非公表としてきた経営状況についても一部を開示した。現在の顧客の口座数は累計170万。月間取引高は2017年7月に2800億円台だったが、事件前月の2017年12月には3兆8537億円にまで拡大していたという。この半期でも取引高が爆発的に増えていたことが分かる。

 事業構造については、利用者間の送金を仲介する「取引所」(本誌や金融庁は交換所と呼称)と、仕入れた仮想通貨を利用者に販売する「販売所」の2つで構成。取扱高は取引所が2割、販売所が8割を占めるという。

 自社の仮想通貨の持ち高を売買して利益を上げる自己勘定取引は手掛けていないとした。仮想通貨を顧客に販売するレートと現在のレートの差額である「スプレッド」が同社の収益源という。競争が少ないオルトコイン販売のスプレッドは比較的利幅が大きいとされる。販売所でのスプレッドが同社の大きな収益源といえそうだ。

 同社が仮想通貨「NEM」の取り扱いを始めたのは2017年4月。同社が取り扱い当初に仕入れていないNEMを顧客に販売していたという一部報道の真偽を確かめる質問も出た。大塚氏は「仕入れていないNEMを販売した事実はない」として報道を否定した。