日銀:金融政策は8対1で現状維持-片岡委員が引き続き反対
日高正裕、藤岡徹-
片岡審議委員の反対は5会合連続-議案提出は見送り
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事前調査はエコノミスト全員が金融政策の現状維持を予想
The Bank of Japan (BOJ) headquarters stands in Tokyo, Japan.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg日本銀行は9日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を8対1の賛成多数で決定した。片岡剛士審議委員が5会合連続で反対した。
誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。
片岡委員は2018年度中に物価目標を達成することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう長期国債の買い入れを行うことが適当として現状維持に反対した。物価が「2%に向けて上昇率を高めていく」という発表文の記述についても、「可能性は現時点では低い」として反対した。物価目標の達成時期が後ずれする場合は追加緩和を講じることが適当とも主張した。議案の提出は見送った。
日銀は発表文で、景気が「緩やかに拡大している」との判断を据え置いた。海外経済は「総じてみれば着実な成長が続いている」として、前回1月の「総じてみれば緩やかな成長」から修正。住宅投資は「弱含んで推移している」とし、前回の「横ばい圏内の動き」から引き下げた。
黒田東彦総裁と中曽宏、岩田規久男両副総裁の現執行部にとって、任期満了を控えた最後の決定会合となった。政府は16日、黒田総裁の続投と副総裁に雨宮正佳理事、若田部昌澄早稲田大学教授を充てる人事を国会に提示。衆参両院で所信聴取が行われた。4月の次回会合は新体制の下で迎える。
野口麻衣子シニアエコノミストは電話取材で、「政策に関しては今回だけではなく、しばらくは現状維持というのがコンセンサス。この先は、体制が変わって新しい風がどう反映されるかが注目だ」とした上で、「政策は少なくとも今年は現状維持とみている」と予想した。
市場の関心は4月以降に
エコノミストに行った調査でも全員が金融政策運営方針の現状維持を予想していた。市場の関心はすでに4月以降の政策運営に移っている。
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物価上昇の勢いに欠ける中、早期の正常化観測も後退している。調査でも年内に引き締めに向かうと回答したのは全体の27%と前回調査(47%)から減少。1月の生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)は前年比0.9%上昇、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは0.4%上昇にとどまる。日銀は4月会合で20年度までの見通しを示し、「19年度ごろ」としている2%達成時期を改めて精査する。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは「しばらく政策は動かせない」とみる。黒田総裁が正常化を進めたくても「コアコアCPIが0%台前半では難しい」と指摘。若田部氏などリフレ派、鈴木委員に代表される正常化推進派、徐々に出口への地ならしを進めたい黒田総裁や雨宮氏と、政策委員会は「三分の様相となり、にらみ合いが続く」と予想している。
会合結果の発表前は1ドル=106円70銭前後で取引されていたドル円相場は発表後もほぼ変わらず。黒田総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は19日、「議事要旨」は5月7日に公表する。