このページでは以下を検証します。検証項目は順次追加の予定です。 検証を始めます。 この項目はYahoo知恵袋での質問に対する回答として書いたものです。 最初に書いておきますが状況はかなり複雑で全体像を把握するのが非常に困難です。既に閉鎖されたサイトなども存在するようで実際には多数の怪しげなグループが暗躍してそれぞれ偽サイトを立ち上げている状況と思われます。おそらく少なくない被害者が既に出ているものと思われますが何故こんな状況が許されているのか理由はよく分かりません。 まず知恵袋の投稿を元に調べてみると現時点(2018年3月上旬)で非常にややこしいことに表題のサイト以外にもコピペして作ったとしか思われないサイトが少なくとも4つ、表題のサイトを合わせれば5つも確認されます。後述しますが同様のサイトがいくつか存在していたようであり、全部で類似のサイトが幾つあったのかさえよく分かりません。とりあえず現在確認されるサイトは以下の7つです。最初の5つは検索で出てきたもので残りの2つは知恵袋に新たに出た質問に登場したサイトです。これだけで非常に怪しい印象を受けます。 7つのサイトは互いに酷似していて殆ど見分けがつきませんが、既に始まっているPre-ICOの売れ行き状況はそれぞれのサイトで何故か全く異なります。例えば表題のサイト (www.ton-sale.com/)では2018年3月4日現在で予定販売数1200万枚の内、89%が売れているとなっていますが、 5つ目のサイト(gram-ico.info/)では同時刻に予定数の32%しか売れていないことになっています。 ちなみにアクセス数を解析出来るサイトで調べてみるとアクセス数では5つ目のサイトへのアクセス数が1日当たり550回ほどで10回以下のアクセスしかない他の6つのサイトよりもかなり多いようです。7つも同じサイトがあるのは明らかに異常ですが7つのサイト全てが怪しいサイトなのか、それともどれか1つは真正のサイトで他の6つが詐欺を意図したサイトなのかこれだけでは分かりません。それでも同じサイトとしか思えないサイトを全部確認するのも大変なので以下の検証では主に表題のサイト(www.ton-sale.com/)と表題のサイトからダウンロードしたホワイトペーパーを検証していくことにします。 まずこれらのサイトにある記述を読むとこの案件は紙飛行機型のアイコンで知られるインスタントメッセンジャーを提供しているTelegram (テレグラム)が募集しているICOということが強調されています。日本ではLINEがメッセージアプリとしては最も使用者が多くてテレグラムはメジャーな存在ではないのでしょうがホワイトペーパーによれば世界的には2億人のテレグラムのユーザーいて、それらのユーザーを中心にTONトークンという仮想通貨を普及させる予定となっています。この説明が本当ならばそれなりに普及が見込める有望な仮想通貨という印象を持つのがむしろ自然でしょう。ちなみにGRAMというプロジェクト名(?)はテレグラム(Telegram)という単語の後半部に由来し、TONというトークンの名前は用意されているホワイトペーパーによればTelegram Open Networkの頭文字を取ったもののようです。 まずこのテレグラムというメッセージアプリの開発元の創設者、運営者はPavel Durov (パーヴェル・デューロフ)という人物です。Wikipedia英語版やTech Crunchの記事によればロシア出身のパーヴェル・デューロフ氏はロシアで運営していた「VKontakte.com」というSNSサイトの経営者の地位を株主の造反で奪われてロシアを脱出し、現在はドイツで弟のPavel Durov氏と共に非営利の法人としてテレグラム (www.telegram.org/)を運営しているようです。表題のGRAMのサイトにある運営者の項目にも創業者兼CEO (最高経営責任者)、共同創業者兼CTO (最高技術責任者)としてデューロフ兄弟の名前が出ています。つまりTONトークンの発行事業に関してもこの兄弟が責任者ということになります。 テレグラムの経営を主導するデューロフ兄弟が仮想通貨事業でも主導的役割を担い、2億人というテレグラムの利用者を仮想通貨の利用者として想定しているのですから当然テレグラムの公式サイト (www.telegram.org/)でも仮想通貨事業に関して何らかの記述があるものと考えたのですが関係するような記述は全く見出せませんし、7つもあるGRAMのサイトへのリンクも全く見つかりません。そこでさらにPavel Durov氏のTwitterアカウントやテレグラムのTwitterアカウントを見たところ、関連すると思われる投稿を見出しました。まず2018年1月21日付のデューロフ氏のツイートです。「GRAMを買わないかというオファーを見かけたら以下のテレグラムのアカウントに情報を寄せてください」と書かれています。情報を提供先とされたテレグラムのアカウントは既に閉鎖されているようです。 この投稿に対して数十件の情報提供の投稿がTwitterへの返信の形で寄せられ、それぞれの投稿者が複数のサイトについて報告するとともに真偽を問うています。例えば以下の投稿では「telegramfoudation.org」というサイトが偽物なのかという質問に対してテレグラムの公式アカウントからそのサイトは偽物であるという回答投稿が付いています。 ちなみにこの「telegramfoudation.org」というサイトは現在では閉鎖されたのかリンクをクリックしても「502 Bad Gateway」というエラーメッセージが表示されるだけです。このURLアドレスは現在確認される7つのGRAM (TONトークン) 関係のサイトのURLのいずれとも異なるので少なくとも8つ目のGRAM関係のサイトが存在していたと考えざるを得ません。しかしこの投稿以外の情報提供投稿、真偽を問う投稿に対しては運営側から真偽を確認する回答は付いていません。 さらに時期がさかのぼりますが、2017年12月22日にはパーヴェル・デューロフ氏のアカウントから以下の投稿が為されてます。テレグラムからの公式発表は全てテレグラムの公式サイトで発表するので他のサイトにある情報は全て偽情報の可能性が高いという警告です。 この投稿に対して仮想通貨事業のニュースは偽情報なのかという質問投稿が付いていますが、パーヴェル・デューロフ氏の回答は仮想通貨の件について直接回答せずに複数の偽サイトを確認しているので注意してくださいというだけのものになっています。 少なくとも現在見ることが出来るデューロフ氏の投稿には仮想通貨事業が詐欺であると直接的に明言するものは見当たらず、曖昧な印象を受けます。しかし以下の3つのサイトにはデューロフ氏が明確にテレグラムによるICOを否定した投稿をしていたという記述があります。いずれの記事にもデューロフ氏によるTwitter投稿のキャプ画像が付いていて投稿日は2018年1月16日となっています。 ▼A to Z FOREX 「Gram ICO is a scam, Telegram CEO says」 但しこれら3つのサイトはいずれも口コミサイト的なサイトのようであり、情報源としての信頼性はあまり高くないように思いますし、デューロフ氏がScam (詐欺)と断言しているのは「gramtoken.io」という特定のサイトなのか、それともテレグラムの仮想通貨と称するGRAMに関するサイトの全てを否定しているのか曖昧です。ちなみにここで出てくる「gramtoken.io」というサイトもこの項目の最初に列挙した7つのGRAM関係のサイトのいずれともURLが異なるので9つ目のサイトということになるかもしれません。但し少なくとも9つ存在していたと思われるサイトのいずれかが真正のサイトであるならばデューロフ氏が真正のサイトに言及しないということは想定し難いように感じられます。 さらに検索を続けているとテレグラムが実際に仮想通貨を発行して巨額の資金を調達したという記事がここ数日で複数出ていることに気が付きました。但し資金調達はまず巨額の資金を投入出来る大口の投資家限定で行われたようです。例えばForbesという大手のメディアに2018年3月2日付で出た「Dear Crypto Enthusiasts, Forget The Telegram ICO, It's Not For You (仮想通貨の熱狂的なファンの皆さん、テレグラムのICOは貴方向きではないので忘れましょう。)」というタイトルの記事から一部抜粋します。 (デューロフ氏の出身国である)ロシアでは既にプロの投資家がテレグラムのICOにお金を投資しているけれどもこれは(限られた投資家だけに開かれた)プライベートセールの形で行われており、アメリカから参加出来るのはプロの投資家だけであるとなっています。その最低投資額はテレグラムの部外者の場合には2000万ドル(1ドル=100円で計算して20億円)、デューロフ氏の「お友達」の場合でも最低50万ドル(同じく5000万円)からの投資になると書かれています。さらに記事の続きにはこのICOで売られたトークンには最低2年間のロックアップ期間(転売出来ない期間)が設けられていて近い将来の上場も予定されていない、つまり長期投資家専用のICOであるといったことも書かれています。また一般の投資家が参加出来る一般的なクラウドセールの形でのICOは予定されていないといった記述もあります。そしてテレグラムのICOでの資金調達額は「anywhere from $4 billion to $5 billion. (40億ドルから50億ドル程度)」つまり1ドル=100円で計算して4000億円かから5000億円程度というこれまでのICOの中でも1番の巨額になるとも書かれています。(この資金調達額については複数のメディアで全く異なる数字が出ていますがこの検証では本筋ではないので深く追及しません。) テレグラムのICOがこういった巨額の資金を投資出来る大口投資家限定で行われていたのだとすれば本項で検証してきたような誰もが投資出来る形になっている複数のサイトは全てテレグラムのICOが行われるというニュースに乗じておそらく複数の詐欺グループが立ち上げた詐欺サイトということになりそうです。複数の詐欺サイトが出現している件については同じForbes誌の「Telegram ICO: Scam Among Cryptocurrency Scams」と題する2018年2月17日付の記事に記述があって具体的には以下の7つの詐欺サイトが確認されていると書かれています。 gramtoken.io tgram.cc ton-ico.com ton-gram.io grampreico.com tgram.cc gramtoken.tech 驚くことに本項目の最初に確認した7つのサイトはこの7つの詐欺サイトと全く重複していません。驚くほど多くの詐欺サイトが存在していたことになります。これらの中で特にデューロフ氏もTwitterで注意を呼び掛けていたという「gramtoken.io」という詐欺サイトについてはTech Crunchというサイトに2018年1月20日付で詳しい記事が出ていて1月半ばに閉鎖されるまでに500万ドル(5億円)以上を騙し取ったと噂されていると書かれています。 テレグラムがこれだけ多数の詐欺サイトが出ている現状を認識しながら何故もっと明確に警告を発しないのか非常に疑問ですが、厳重な注意が必要と思われます。 |
2. 検証対象目次・索引 >