このページではASEC Coin (エーセックコイン)という仮想通貨について検証をしています。 ●ASEC FRONTIER Co., Ltd. [ASEC Coin エーセックコイン] (エーセックフロンティア 公式サイトなし? ) 表題の5つの企業、団体はいずれもASEC Coin (エーセックコイン)という仮想通貨に関連していると思われます。下の3つは勧誘目的の組織と思われ、最後の方で触れることにします。これもTwitterで以下の様なステマが行われていたのを発見したことをきっかけに検証対象にしたのですが関連組織が表題の5つ以外にも非常に多く、長大な検証になってしまいました。 まず調べてみるとこの仮想通貨の検証にはかなり困難があることが分かりました。この仮想通貨の発行元はASEC FRONTIER Co., Ltd.なる企業であり、日本国内での販売代理店が向井(完延)なる人物を代表者とする株式会社ディアマンということになっているのですが、「ASEC FRONTIER Co., Ltd.」についても「ディアマン」についても公式サイトらしきものが全く見つかりません。ネットで取引出来る仮想通貨の発行元や販売元が公式サイトを持っていないという事態は論外としか思えません。この時点でこの仮想通貨がマトモなものとは思えないという結論を出しても良いくらいなのですが、販売目的と思われるブログや同じく勧誘目的の動画、幾つかの関連サイトらしきものは存在するようなのでそれらにある情報を出来るだけまとめて検証することにします。 まず検証対象としたブログや動画についてまとめておきます。 ◆ASEC-Coin.com (エーセックコイン.コム [運営元は投資のKAWARA版.com?] asec-coin.com) 特にプレゼン資料と思われるPDFファイル (http://asec-coin.com/ad/files/doc.pdf) ブログ Youtube 動画 これらの中で公式と呼べそうなものは発行元であるASEC Frotier名義で投稿されている最初の動画だけかもしれません。最初のASEC-Coin.comというサイトは誰が作ったサイトなのか非常に分かりにくいのですが、どうやら「投資のKAWARA版.com」という名義で幾つかのサイトを運営しているグループによるもののようです。この運営元については後述します。そしてこのサイトにはセミナーなどで勧誘する目的に使われているのではないかと思われるプレゼン資料形式のPDFファイルが存在します (http://asec-coin.com/ad/files/doc.pdf)。 2つのブログや2つ目の動画は匿名の個人(?)が投稿している形になっているようです。ちなみに2番目の動画を投稿している「優」という人物は他に「検証13」で検証したノアコイン、「投資全般その9」で検証したD9クラブといった一連の泉忠司案件に関する動画もアップしているようです。 これらの資料の中ではプレゼン資料と思われるPDFファイルが一番情報量が多く、動画の2つ目はPDFファイルの抜粋のようなものです。結果的にPDFファイルを検証の中心にすることになりました。 まず以下はこの唯一の公式情報と思われる動画からのキャプですが、それほど具体的な情報がない上に最近になってログインしないと見られない設定に変更されたようです。とにかくこのキャプの2人の男性がASECコイン事業の中心人物ということのようです。ちなみに動画が限定公開になったことを考慮して、「向井(完延)代表」については顔を隠してありますが「向井完延」で検索するとTwitterのアカウントで本人の写真が公開されているようです。 右側のカセー・チャナオン(Dr. Krasae Chanawongse)博士という人物はASEC Frontier社の最高顧問ということになっており、タイで医師、政治家としての経歴を持ち、アジアのノーベル賞とも呼ばれるマグサイサイ賞の受賞者であると紹介されています。確かにこの人物の名前を検索するとマグサイサイ賞の受賞者リストに名前があることが確認されますし、Wikipedia英語版にもこの人物の項目があって貧しい家庭に生まれて苦学を重ねた後に医師になり、政界に進出して外務大臣などの重職を歴任したという立身出世譚が書かれています。現在はAsian Disaster Preparedness Center (ADPC アジア災害防護センター)という団体の代表(chairman)を務めていることもADPCの公式サイトで確認することが出来ます。 カセー・チャナオン氏が実在の人物であり、その経歴もASECコイン関連で紹介されている内容が基本的に正しく、さらに向井某という人物と面会したことがあるのは事実のようですが、ネット情報で確認出来るのはここまでで現在83歳であるカセー・チャナオン氏がASEC Frontierの最高顧問を務めていてASECコインという仮想通貨の発行に主要な役割を果たしているかについては信頼出来そうな情報が全く出てきません。そもそも最初にも書きましたがプロジェクトの運営元とされているASEC Frontierは以下の動画のキャプに見えるようにタイとバヌアツで設立済みとなっているのに公式サイトらしきものが見つからないことに強い違和感を感じざるを得ません。 さらに分からないのはASEC Frontier社のCEO (最高経営責任者)を務めているとされるDr. タパナ (Dr. Thapana Boonlar)という人物です。 この人物は最高顧問であるカセー・チャナオン氏の政治家時代の右腕として活躍していた人物でチャナオン氏の意向によってASEC社のCEOに就任したという説明がされています。そしてDr. タパナには「信じがたいほどの圧倒的な経歴と実績」があると紹介されています。 そこでこの人物についてチャナオン氏と同様にASECの主張を確認しようとしましたが「圧倒的な経歴」として挙げられている項目に出てくる企業や団体名を検索しても情報が極めて乏しいのです。 例えばASECが提示するDr. カセーの経歴の筆頭に挙げられている「BBRC Group Co. Ltd. 会長」ですが「BBRC Group」を検索してもそれらしい情報が殆ど見つかりません。そこでPDFファイルを再度詳しく見たところ、この人物の名刺らしきものが登場していることに気が付きました。以下のキャプは名刺と思われる部分を無理矢理に拡大したものです。 PDFファイルの一部を無理矢理拡大しているので画像が荒くなっている上にタイ語(?)で書かれている部分が多いのですが、英語で書かれている部分を抜き出すと以下の様に読み取れます。 >BBRC Group >Professor Dr. Thapana Boonlar >Tel +662-742-6200 >Mobile +665-1875-1900 >E-mail Thapana@Thapana.net ここで興味深いのはメールアドレスです。ビジネス用のメールアドレスの後半は勤務する会社の公式サイトのURLアドレスと一致する場合が多いはずですが、このメールアドレスの@以下のドメイン名の部分は「Thapana.net (タパナ.ネット)」となっておりBBRC Groupという企業名ではなく本人の名前に一致します。違和感を感じたのでドメイン名「Thapana.net」を検索してみると「Thapana.net」がDr. タパナが代表を務めるロジスティックス(物流)関係の会社の名称であることが判明しました(http://www.thapana.net/)。 そして奇妙なことにASECコイン関係で出てきたDr. タパナの「信じがたいほどの圧倒的な経歴と実績」の中にこの「Thapana.net」という会社は含まれていません。一方で「Thapana.net」のサイトにもDr. タパナの履歴書(英語表記)がPDFファイルとして用意されていました。 そしてこの経歴とASECコインの資料に出てくるDr. タパナの「経歴と実績」は殆ど一致しません。Dr. タパナの2つの経歴の冒頭部だけを抜粋してみます。 ◆ASECコインの資料にあるDr. タパナの経歴冒頭部 ・BBRC Group Co., Ltd.会長 ・GG Group Co., Ltd.会長 ・Ozone Smart Co., Ltd.会長 ・ASIAN INSTITUTE OF LOGISTICS会長 ・Advisor Sub-Committee on regions, art and culture, and tourism group. National Legislative Assembly. 宗教と芸術文化と観光副閣僚理事会のアドバイサー ◆Thapana.netのサイトにあるDr. タパナの経歴冒頭部 ・President, Asian Institute of Logistics Foundation ・President, Sealine Corporation Ltd. ・President, Advanced Business Development Co.,Ltd. ・Advisory Board, The Senate – Information Technology Sub-Committee ・Advisor, Logistics Development Committee, Industry Council of Thailand 勿論、まとめた時期が異なれば履歴項目が変化してくるのは当然ですが、2つの経歴で一致しているのは「Asian Institute of Logistics」という団体名だけです。ここまで異なるのは異常としか思えません。そしてThapana.netの経歴の中にASECコイン関係と思われる役職は全く出てきません。 またASECコインの勧誘資料にはDr. タパナの職歴紹介の一環として例えば「BQ Group」という企業(?)が出てくるのですが検索してもFacebookのページぐらいしか見つかりませんし、そのページに見られる会社ロゴなどはASECコインの勧誘資料と一致するものの企業活動や連絡先など具体的情報が殆どありません。 同様にASECコインのプレゼン資料でDr. タパナの実績としてかなりの行数を費やして紹介されている「タイ・ダイヤモンド・シティ」についても公式サイトらしきものが存在しており、日本語版サイトまで用意されているのにサイトの内容は極めて具体性を欠いています。例えば5つ星のホテルとかゴルフコースがあるとされているのにそれらホテルやゴルフ場の名称や連絡先、アクセス情報など全く記載がありませんし、リンクも見当たりません。さらにアクセス数の解析サイトでこのサイトを調べてみるとこのサイトへのアクセス数はほぼゼロのようです。ASECコインの資料で紹介されていたDr. タパナのFacebookについても単に存在しているというだけで殆ど情報がありません。 Dr. タパナについて調べれば調べるほど違和感が強くなるのを感じざるを得ません。ASECコインの資料に登場したDr. タパナの名刺の画像も何らかの手段で手に入れた本人の名刺に適当な書き込みやロゴを付け加えて捏造したものではという疑いが生じます。だからこそ名刺の社名とメールアドレスに奇妙な齟齬が生まれているのだと思います。結論としてASECコインの資料にあるDr. タパナの経歴は全くのデタラメであり、幾つかのサイトなどは虚偽の経歴を支える舞台装置として作り上げられたものという疑いが極めて濃厚と考えざるを得ません。そしてASECコインのプロジェクト自体に関する信頼性も極めて低いという結論を出さざるを得ません。Dr. カセーについてもDr. タパナについても勝手に名前を使われた可能性が充分に考えられます。ASECコインを販売して得た資金でタイ国の貧困問題を解決するプロジェクトを実行するなどという説明も全てデタラメと判断します。そもそもコインの発行元であるASEC Frontierについて実体が存在するかどうか極めて疑わしいと考えざるを得ません。 一方で日本でASECコインを販売する代理店とされている「株式会社ディアマン」についても調べてみましたが、公式サイトも所在地情報なども全く見つかりません。法人登録を探すと「株式会社ディアマン」で以下の5社が引っかかりますが、3件に関してはホームページが見つかるものの仮想通貨を扱っているようには思えません。一方で東京都港区南麻布と神奈川県大和市の2つの「ディアマン」については検索しても情報が出てきません。
そもそもきちんと法人登録しているどうかさえ疑問ですが、適切な情報開示がなされていないことは間違いありません。タイの発行元については真偽が入り混じっているにしろ整理するのも大変なほどに大量の情報が提供されているのに日本の代理店については極端に情報隠しに徹しているのです。情報を開示出来ないような代理店については信用には値しないと判断せざるを得ません。この件については再度触れることにします。 そしてASECコインが実際に仮想通貨として通用するかどうかについてですがPDFファイルには以下の様な異様な部分があります。何とASECコインには通貨としての利便性は期待出来ないと断言されていて投機目的のみで購入を薦めているのです。 これまでの仮想通貨の検証でも散々指摘してきましたが、単なるデジタルデーターに過ぎないビットコインの価格が上昇したのは多くの人がビットコインの仮想通貨としての利便性を認めてビットコインを購入することを希望し、供給が限られているのに需要が増加したからです。ASECコインのプレゼン資料にも需要が発生するから市場原理によって価値も上昇するという説明もあるのです。 それなのに仮想通貨として全く期待出来ない仮想通貨の価値が投機のみで上昇するなどという主張は明らかに常識にも自らの主張にも矛盾しているとしか思えません。さらに上のキャプの下から2行目に見えますが、 >コインの価値は10倍どころか1万倍、10万倍に高騰が予測できる といった記述には何の根拠もあるとは思えませんし、仮想通貨バブルが起こるのは確実といった主張も全く評価する気になりません。 そしてこのASEC-Coin.com (エーセックコイン.コム)からダウンロードしたPDFファイルには「購入申し込み」と書かれたリンクが用意されており、リンク先 (https://asec-coin.com/ad/form/newpcs/)には購入申し込み書が用意されています。個人情報や購入金額(購入は最低10万円から10万円単位)などを記入する欄がありますが、以下のキャプはその申込書の最後の部分です。 最後に「Copyright(C)2017 投資のKAWARA版.com」と書いてあります。これがこのサイトの運営元に関する記述かと判断して調べてみると「投資のKAWARA版.com」という名義のサイトが確かに存在することが分かります。また仮想通貨関係を頻繁に検索しているからでしょうが、以下のキャプに示すような「投資のKAWARA版.com」のバナー広告をしばしば見ていることも思い出しました。 >一般会員: 無料 >正会員 : 月額3980円 となっていて無料の一般会員と有料の正会員があるようです。ここでは一般会員と正会員の違いが分かりませんが、「投資のKAWARA版.com」という会社は他に「仮想通貨長者.com」というサイトも運営しており、「投資のKAWARA版.com」の会社概要にあるのと同じ福岡市の同じ住所が記されています。 >株式会社 投資のKAWARA版.com >〒810-0073 福岡市中央区舞鶴3-1-27 理研第二ビル3F >TEL:0120-788-826 何故2つのサイトを運営しているのかよく分かりませんが「仮想通貨長者.com」のサイトの方が会員へのサービス内容は詳しく書かれています。 >◆仮想通貨長者.com 無料 >これからくるであろう仮想通貨元年の波に乗り遅れないよう、仮想通貨について、あらゆる情報をお届けいたします。また仮想通貨の調査依頼も承っています。 >◆投資のKAWARA版.com一般会員 無料 >トラブルを起こしている運用会社や運用案件の情報をお届けしたり、気になる投資案件や、実際に投資している案件の調査依頼を行うことができます。 >◆投資のKAWARA版.com正会員 月額3,980円 >危険な投資案件やトラブルを起こしている会社のもっと詳しい情報がほしい、潜入調査をしてほしい。そのようなご要望にお応えしてワンランク上のサービスをご用意しました。正会員にアップグレードするには、まずは通常会員にご登録いただく必要がございます。アップグレードを希望する場合は、当サイトから無料登録後、メールにて配布される詳細資料をご覧ください。 要するにメルマガのようなものだと思いますが、危険な投資先に関する情報を提供するだけでなく、有望な投資先に関する情報も提供するようです。この「有望な投資先」として紹介される投資先が何なのかは分かりませんが、ASECコインの購入申し込み書に「投資のKAWARA版.com」と記されていることからしてASECコインへの投資を推奨される可能性が高いものと思われます。つまりこれは投資詐欺を告発する正義の味方を名乗って実は投資詐欺に誘い込もうとする悪質な勧誘方法という疑いが濃厚です。 さらに「投資のKAWARA版.com」に会員登録した人向けの推奨投資先ではないかと思われるのが、Team-Jones (チーム・ジョーンズ team-jones.net, joker-j.com, www.j-labo.info)という極めて怪しげな投資です。この案件に関しては以前に検証してあるので「投資全般その3」を併読してください。 「投資のKAWARA版.com」と「チーム・ジョーンズ」の結びつきは「投資のKAWARA版.com」を検索して見つかってきた「辛口!情報商材判定士 (http://baloon1969.com/)」と題するブログで判明しました。このアフィリエイト報酬目的と思われるブログは最近削除されたようですが現時点(2017年5月)でGoogleのキャッシュに情報が残っており、「投資のKAWARA版 Team Jones 投資情報」という2015年10月18日付の記事で投資詐欺の被害に遭うことを避ける為に「投資のKAWARA版 Team Jones」というサイトに登録することが推奨されていました。そしてこの記事にあった連絡先情報が以下です。 >特定商取引に基づく表示(Team Jones) >運用事業者: MARKET DRAGON HOLDINGS LIMITED >日本サポート委託会社: 株式会社TJビジネスサポート >所在地: Suite688 Kemp House 152CityRoad London EC1V 2NX >メールアドレス: support@team-jones.net >価格: 無料 そしてこのURLやメールアドレスのドメイン名の部分(team-jones.net)の部分はまさに「チーム・ジョーンズ」の3つのURLアドレス(team-jones.net, joker-j.com, www.j-labo.info)の1つに合致しますし、現時点で をクリックすると投資のKAWARA版のサイト にリダイレクトされるのです。「投資のKAWARA版」と「チーム・ジョーンズ」が同じグループによるものであることは確実でしょう。これは「投資のKAWARA版」を詐欺勧誘の窓口に使っている大掛かりな詐欺グループによるものと結論せざるを得ません。 さらにASECコインの勧誘に使われていると思われる組織がもう一つあります。ASECコインの販売代理店である「ディアマン」代表の向井定延という人物の名前を検索して見つかってきた「一般財団法人デジタルカレンシーファウンデーション (dcf.or.jp)」という団体です。この財団の評議員として向井某の名前が見えます。 財団の概要は以下の様になっています。 >名称 一般財団法人デジタルカレンシーファウンデーション >英名 Digital Currency Foundation >所在地 〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町9-17 TOC 第三ビル5F >電話番号 03-6455-1301 >FAX番号 03-6455-1302 >設立年月日 2015年9月11日 この渋谷区の住所は「検証12」のフートコインの検証や「検証14」のホールドコインの検証で登場した株式会社ダエグの住所の一つ(渋谷区桜丘町9-17 TOC第三ビル508)に酷似しています。そしてダエグのサイトにこの財団法人発足の記事があるようです。 さらに評議員の田中秀明という名前は株式会社ダエグの代表理事、理事の森本竜也という名前は同じくフートコインの検証で登場した一般社団法人BizLaboの代表理事と同姓同名、おそらくは同一人物であることにも気が付きました。さらに理事長の上杉柾之、理事の春名幸雄という名前も「検証9」で検証した仮想通貨・コバンの発行元である株式会社LastRootsの取締役の名前と一致します。どうやらこれらの仮想通貨の発行に関与している人物、組織の間には密接な関係があるようです。 そしてこの怪しげな人たちで構成されている財団の目的については >私たちは、暗号通貨の無限の可能性を探求し、広く世界に普及させる事を目的とした財団法人です。 となっており、少なくとも2016年7月まではセミナーを行うなどしていたようです。セミナーで怪しげな仮想通貨への投資勧誘が行われていた可能性は濃厚です。言うまでもありませんがASECコインへの投資は推奨出来ません。 |
2. 検証対象目次・索引 >