政治ネタが減っているとお嘆きの諸兄へ

2018年3月9日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今年にはいってから、あるいはもっと以前からなのかもしれないが、当欄では、リアルな政治の話題を、直接に扱うことをはばかっている。

 読んでいるみなさんは、特段にそういう印象を抱いていないかもしれないが、書いている当事者である私の側では「政治から距離を置いている」という自覚を持っている。

 理由は、簡単に言えば、めんどうくさいからだ。

 政治向きの話題は、それらについて観察を続けること自体がそもそもやっかいな作業であるわけなのだが、それ以上に、事実関係や背景を調べるのにいちいち煩瑣な手続きを求められる泥んこ仕事だったりする。記事として仕上げるのにもそれなりの手間がかかる。なにより読解力の低い読者や、狂犬みたいなアカウントからの定型的な反応に対応することが、死ぬほどめんどうくさい。

 そんなわけなので、多少気になるといった程度の話題には、自然と食指が動かなくなる。これは以前、自分でもこうなるだろうと予想していた事態で、まことによろしくない。

 一方で、政治の話題を遠ざけていると、コメント欄にその点を高く評価するご意見が思い出したように寄せられたりして、私としては、そこのところに微妙なひっかかりを感じている。

 「なるほど。オダジマが政治ネタ離れすることを喜ぶ読者層が一定数存在しているわけだな」

 と思うと、面白くないわけだ。
 ツイッターのアカウントにも、その種の反応が届く。

 要約すれば、

 「あんたは身辺雑記を書き飛ばしている限りにおいてはわりと読ませるライターだけど、政治向きの話題を扱うととたんにバカさ加減を露呈することになっているから、その点は自覚したほうがいいぞ」

 といった感じの見方を、わざわざ本人に伝えてくるアカウントが、定期的にあらわれるということだ。

 今回は、オダジマに政治の話題を書かせたくない人たちについて考えてみることにする。

 政権支持層の中に、反政権的ないしは反安倍的な記事やツイートを、とにかく全面的に排除しにかかる活動的な人々が含まれていることは、ずっと昔からはっきりしている。

 彼らの罵倒には慣れている。
 風物詩みたいなものだとすら思っている。
 なので、気になっているのはそこではない。

 私が、しばらく前から対応に苦慮しているのは、必ずしも安倍シンパだったり自民党支持層ではない集合の中に、私を政治的な話題から遠ざけようと試みる人たちが少なくないことだ。

 これは、実は、当欄のテキストを書く時にだけ感じている感覚ではない。

 とにかく私としては、私が多少なりともかかわっているあらゆる社会的な場面で、私とやりとりするすべての人々が、私の発言を穏当な範囲に誘導するべく粘り強くはたらきかけてきている感じを抱いている……と、こうやって自分のアタマの中にある考えを文字に起こしたものをあらためて読んでみると、まるっきりの被害妄想に見える。とすると、あるいは私は精神のバランスを失いはじめているのかもしれない。

 「あらゆる人間がオレを黙らせようとしている」
 「オレの思考回路を非政治的な話題に誘導するための秘密組織が暗躍している」

 とは、さすがに思っていない。

オススメ情報

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「政治ネタが減っているとお嘆きの諸兄へ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

人間って、どうしても過去の実績や常識が心にこびりついて、変化を恐れてしまいがち。

杉山 恒太郎 ライトパブリシティ社長 元電通 取締役常務執行役員