8割余りが「帰還順調に進まず」
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から7年になるのを前にNHKが福島県で被災した人や原発事故の避難者にアンケートを行ったところ、去年、一部を除き避難指示が解除された4つの町と村について、8割あまりの人が「帰還が順調に進んでいない」と感じていることがわかりました。
専門家は医療や商業、雇用などが震災前の状態に回復できるよう国や自治体が継続して取り組むことが重要だと指摘しています。
NHKは去年12月から先月にかけて、福島県で被災した人や原発事故の避難者、あわせておよそ1100人を対象にアンケートを行い、全体の4割余りにあたる477人から回答を得ました。
この中で、去年春に帰還困難区域を除いて避難指示が一斉に解除された浪江町、富岡町、川俣町、それに飯舘村について住民の帰還が順調に進んでいると感じるか尋ねたところ、「そう思わない」が56%「あまりそう思わない」が29%とあわせて85%に上りました。
また、このままではまちを存続できないと思うか質問したところ、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人があわせて76%に上りました。
さらに、若い人の帰還が十分に進んでいないという回答が95%を占めたほか、65%の人が買い物などの日常生活に支障があると答えました。
自由記述の中でいわき市で避難生活を続けている72歳の男性は、「若い人の帰還が進んでおらず町の存続すら危ぶまれる状況です」とつづったほか、半年あまり前に富岡町に帰還した68歳の男性は「夜の家庭の明かりがまったく増えない。この地域はこれからどうなるのかと思いますが、できることを前向きにやっていくだけです」と回答しました。
福島県や復興庁によりますと避難生活を送っている福島県の住民は、先月末の時点で福島県内で1万5420人、福島県外で3万4095人とあわせて4万9515人に上っています。
環境経済学が専門で原発事故による避難区域の復興について調査を続けている大阪市立大学の除本理史教授は、「医療や商業、教育、それに雇用など生活する上で必要な条件が震災前の状態に回復していないことに加えて、原発に近い場所で暮らす住民の不安などから現在の状況があると思う。国や自治体は生活条件の回復に継続して取り組むことが重要で、特に、若い子育て世代が帰還して暮らせる条件が整うかどうかが復興の試金石だ」と話しています。