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道徳問題の本質を取り違えてはいけません

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。チンギスハンの肖像画に落書きしたマンガを載せた雑誌が回収された件。抗議したモンゴル人たちは、チンギスハンは国の英雄だからという理由をあげてますが、だったらネットで検索してみつけた無名の一般モンゴル人の顔写真になら、チンコの落書きをしてもいいのですか?
 ダメですよね。問題の本質を取り違えてはいけません。この問題の本質は、ひとの肖像画や顔写真にチンコの落書きをする、という下品で無礼な行為そのものにあるのです。それはいかなるひとに対してもやってはいけないことなんです。
 対象が国家の英雄だから、なんて歴史観は問題の本質とは無関係なので惑わされてはいけません。チンギスハンはモンゴルでは英雄かもしれませんが、他のアジア諸国やヨーロッパにとっては殺戮者です。じゃあ悪人の顔にはチンコの落書きをしてもいいのか。それもダメです。相手によって道徳律を変えるのは卑怯者のやり口です。
 全国の教育関係者のみなさん、こどもたちへの指導をお間違えのないように。ヘタするとこどもたちは今回の出来事から、エラいひとには無礼な行為をしてはいけないけど、エラくないヤツにならかまわないのだ、と歪んだ倫理観を学びとってしまうかもしれません。
[ 2018/03/08 17:53 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

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13歳からの反社会学(文庫)

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コドモダマシ(文庫)

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