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会社員の書籍化事情~開業届は出せません

作者:水有大豆
よろしくお願い致します。

書籍化が決まった会社員の手続きと決意とぼやきです。
 書籍化の波。それは、まさかの私にも。一昨年末に運営さまからの「書籍化打診」のメール。公募にもコンテストにも出したことないのに。書籍化詐欺?でも、相手は私もよく読ませていただいている有名な出版社。住所も電話番号もあっている。それに、運営さま経由だから。ちゃんとした話なんだろうなあ。

 書籍化…………、いずれは印税。これって、収入。収入が発生すれば副業となります。私は会社員です。勤め先の就業規定では副業は禁止されています。無断で副業した場合は解雇もあり得るのです。

 運営さまから連絡がきた出版社さまにまずメール。
 書籍化の打診はとても光栄で感謝していますが、当方会社員であり就業規定で副業が禁止されていること。印税が発生する場合はたぶん副業とみなされると思うこと。勤め先には副業の許可を申請するけれども、許可が下りない場合もあります。その時には、大変ありがたいお話だけれども、お断りしますという内容をつらつらと書き綴って、送信しました。

 翌日出社してから、こうゆうことって誰に相談したらいいんだろうとしばし悩みます。上司に言っても分かんないだろうし。本社じゃないから、事務部門もなあ。で、人事部の唯一の知り合いに聞いたら、本社の担当者(よく知らない部署だった)に話を取り次いでくれることになりました。取次の人に書籍化オファーの出版社名、ジャンルを連絡。とりあえずは、初日にできることはここまで。

 会社側からの取り急ぎの返事。書籍化はやはり副業に該当するそうです。

 家に帰ると出版社の編集長からお返事が来ていました。勤め先の許可がでるまで解答を待っていただけるそう。ほっとします。

 二~三日会社の方は放置プレイ。窓口の人に聞くと、こんな例はなかったので審査に時間がかかっている模様。
 ようやく会社から回答がとどきました。まず、いくつか確認させてほしいとのこと。確認事項は、小説の内容と、小説内に勤め先(業務内容)に関することは書いていないかどうか。プロフィール等に勤務先名を書く必要があるのかでした。
 これに対しては、完全なファンタジー小説で勤め先(業務内容)に関する記述は一切ありません。プロフィールも詳細は書かなくていいので、社名を出す必要はないと返答。

 次に勤め先から来た質問。今後会社のことを書くことは無いか。つまり書いてはいけないと言うことの念押しです。それは絶対に書かない。お約束しますと返答。

 次に来たのが、会社の仕事を疎かにしないで本を出すための作業ができるかという質問。本業に差しさわりがあるようなら許可しませんということですね。
 これには、「絶対に本業を疎かにしないことを誓います」と文書で誓約しました。

 ここまでやって、やっと勤め先から副業の許可が出ました。およそ一週間かかりました。
 メールの保存だけでは心配なので、許可を出してくれたメールを二部印刷して、一部は勤め先のデスクの中に、もう一部は自宅で保管です。後で、就業規定違反にされたら大変ですから。

 許可を得てから、初めて上司に書籍化、副業のことを伝えました。(仕事に支障が無いように)頑張ってと言われました。よし、これで勤め先はクリア!

 もぐりでやればいいのにと思う方もいるでしょうが、何かでばれたらクビです。何処から話が漏れるか分からないのです。うれしさのあまり、自分でポロリしてしまう場合もあるでしょう。安定した収入を捨てるわけにはいかないのです。

 ここで、ようやく出版社の方に正式に書籍化の話をお受けします。よろしくお願い致します。と、お返事をしました。

 ここから担当さんが決まり、書籍化への道がスタートしたのです。この辺りはいろいろな方が書いているので割愛です。いろいろあってオファーから発売日決定までに一年近くかかりました。

 なろうのエッセイで書籍化したら開業届を出しましょうってあります。私も、私も!!と、ウキウキと開業届を出そうとしました。憧れますよね、文筆業と青色申告。
 しかし、税務署に行く前にちょっと調べてみたら、あれは、会社員には無理です。全員が無理ではないでしょうが、少なくとも雇用保険を支払っている人はちょっとマテです。待ってください。私は待ちました。

 雇用保険。支払っているかどうかは給与明細を確認してください。「雇用保険料」と記載されていれば支払っています。
 事業主に加入が義務付けられているので、その事業主に雇われている会社員である皆さんはもれなく(強制的に)支払わされていると思います。

 雇用保険を一定期間納めていると、失業した時に次の職を探すまでの生活費として失業保険(失業手当ともいわれますが、失業保険と表記します)がもらえます。(失業後、ハローワークに行って再就職の意思を見せることが必要ですが。職探しの事実が必要です)
 これは、とても大切な失業中の命を守るお金です。
 支払期間によって受給金額や期間は決まってきます。私はかなり長く支払っているので、それなりの金額を一定期間受給できる予定です。(受給金額、期間などは失業保険で検索していただければ、詳しい表がすぐに出てきます)

 開業届を出してしまうと、この失業保険の受給資格を失ってしまうのです。失業保険は失業して収入のない人に支払われるものです。開業届を出している人は失業状態とみなされません。つまり、収入があるから失業手当はいらないだろうと言うことなんです。この辺りはとても厳しいので、例外はあまり無いようです。開業していることを申告しないで受給すると、かなりのペナルティが課されれるようです。ばれない様で、ばれるみたいです。ご注意を。

 開業届を出せば、事業者としての税制上のメリットもあるようです。しかし、まだ一作目の書籍化で、それで飯が食えるかどうかも分からないのに、会社員が開業届を出して失業保険受給資格を失うのは早すぎると思います。(開業届は義務ですが、届を出さなかった場合の罰則はないようです⇒ネット調べ)
 印税は特別収入として確定申告すれば大丈夫なようです。

 資料を一つ載せておきます。

 個人事業主のメリット→最大65万円の特別控除
 特別収入のメリット →経費を引いて20万円以下の収入の場合は確定申告必要なし・税金変わらず。
 20万円以上の場合、基本的に支払には源泉10%が引かれているため確定申告で還付あり。


 開業届を出して、「文筆業」という事業者になることには憧れますが、私は失業保険の受給資格を失うことは出来ません。正社員といってもいつ失業するか分かりません。病気や何かで会社を辞めることだってあるかもしれません。失業…………その時に私の生活を次の職に就くまで支えてくれるのは、失業保険です。印税ではないでしょう。景気がいい?それってどこのお菓子屋さんのケーキですか?って、言いたくなる位現実は厳しいです。

 重版がバンバンかかったり、コミカライズ、ドラマCD、最終的にはアニメ化。印税がっぱがっぱ。失業保険なんていらねえぜ。なんて、夢のまた夢。一冊で終わる可能性が高い(終わるだろうなあ)ので、私は堅実な道を選択します。

 開業届は会社を辞めてから。でも、自己都合で会社を辞めた場合、失業保険の支払い猶予期間が三カ月半あります。この猶予期間に開業届を出すと、受給資格が無くなるそうですよ。
 退職してすぐに開業届を出すと、これもまた失業保険の受給資格を失うみたいです。開業届を出すタイミングはよく調べてからが良いようです。世知辛いですね。

 現在の予定では、来年確定申告に行って何も言われなければ現状維持です。
 会社員は本当に得が出来ないようにできているんだなあと感じる今日この頃です。

 これはあくまでも私が調べたことを書き記したものです。
 詳しくは税理士さん等専門家に質問してください。



読んでいただきありがとうございました。

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