間違いだらけの“うなぎ報道”…「日本は世界のうなぎの7割を食している」のウソを正す!
最近、やたらと目にするうなぎの報道。稚魚であるシラスうなぎの不漁が背景にあり、メディアもこぞってこれを取り上げる。正しい情報を流す分には良いが、その一方では “歪んだ”、あるいは“間違った”情報が平気で垂れ流されている。
■「世界の7割のうなぎを日本人が食べている」のウソ
近年、メディアの報道でよく使用される“世界の7割のうなぎを日本が消費”というフレーズ。これは2000年当時のデータで、実に18年も前のもの。野生生物の取引を監視・調査するNGOであるTRAFFICの当時の資料に、『世界の生産量に対する日本の消費率』というデータがあり、世界のうなぎ生産量の約20万トンのうち、日本の消費量が約15万トンと記載、これらをもとに日本が約7割を消費していると言われるようになったのだろう。ちなみに最新データとなる2015年は、当時とまったく同じ計算式(国連食糧農業機関[FAO]参考)で算出すると割合は世界の18.7%のうなぎしか消費していないことになる。7割という数がいかにかけ離れているかは一目瞭然。この古いデータを検証もしないで平気で取り扱う専門家もいるから情けない。
■「日本のうなぎ大量消費」報道…実はむしろ、減少している
2000年当時、うなぎの日本国内総消費量はピークの約16万トンを数えた。近年、うなぎ資源の減少要因のひとつとして“うなぎの大量消費”を掲げる動きがあるものの、最新データのうなぎ消費量は2016年でみると約5万トンで、2000年の実に1/3に減少している。つまり、消費自体は増えているどころか、逆に減っているのである。
訂正前の「シラスうなぎ漁獲データ」を平気で扱うメディアも未だに多い。このデータを見ると、シラスうなぎ漁獲量は昭和30年代後半に250トンにも迫り、近年の10数トンに比べると、あたかも“激減”しているかのように見える。しかし、実はこれ、昭和30年代から40年代後半に至るまでシラスだけではなく、シラスが成長した“クロコ”も含まれて重量も大きく変わってくるのだ。現在はすでに訂正が加えられている※が、訂正前のデータを用いる一般メディアも多く見受けられる。水産庁も当時、「このデータには、シラスうなぎだけではなく、クロコの漁獲量も含まれており、これを差し引いて考える事が必要」と回答している。
■来年5月はワシントン条約締約国会議。規制されればうなぎはますます手の届かないものに
こうしたデータに関する、間違った、歪んだ情報が一人歩きし、日本のうなぎの扱いに対する世界の目が厳しくなっているのなら、非常に残念でならない。来年5月、スリランカで開催されるワシントン条約締約国会議を前に、うなぎ資源保護管理への働きかけは継続しつつも、改めてうなぎに関するデータの再検証も必要ではないだろうか。度重なる間違った情報の垂れ流しにより、日本のうなぎに対する心証を一段と悪くさせ、世界に誇る日本を代表するうなぎ文化の継承を途絶えさせ、また多くの人たちの笑顔を奪う事があってはならない。
うなぎに関する歪んだ情報がなくなることを切に願いたい。
【うなぎ豆知識】
国内で流通する活鰻(生きたうなぎ)は、国産=アンギラ・ジャポニカ種、中国産=アンギラ・ジャポニカ種、台湾産=アンギラ・ジャポニカ種で、すべて同じ種類です。