ドライブ中におけるさまざまな花粉症対策を施してきた自動車ライター、マリオ高野です。
花粉症や黄砂、北九州エリアにおけるPM2.5など、大気中の異物の侵入を防止、または除去をする必要性が高まったことから、最近のクルマは室内の機密性やエアコン用フィルターの性能向上が目覚ましく、車内の空気を清浄に保つ能力が以前よりも高くなっております。
そんな最近のクルマの室内の空気をさらにクリーンにしてくれる強力な味方が、高性能エアコンフィルター。価格と性能バランスに優れた純正品も悪くありませんが、花粉をはじめとするあらゆるミクロの汚れの除去や脱臭、防カビ性の高さをアピールする製品がキラ星のごとくそろっているので、これらを利用しない手はありません。
この時期に山の中を走ると、クルマのボディにうっすらと黄色い粉塵(じん)が積もるほどなので、できるだけクルマから降りずに外気に触れないようにするのですが…(涙)
そもそもカーエアコン用のフィルターとは、その名のごとく、車内でエアコンを使う際に循環する空気をキレイにするパーツ。取り入れた外気を車内に入れる前に粉塵(じん)などを取り除く役割も持っています。家電のエアコン用パーツが機種によって異なるように、カーエアコン用のフィルターも、車種や年式によって異なります。ですので、自分の車に適合するものを購入する必要があるのです。交換の目安は1年または走行1万kmといわれていますが、ドライバーの注意があまり向けられているものではありません。
しかし交換を怠ると、車外のほこりなどを除去しきれず、車内の空気が悪くなってしまいます。フィルターは純正品のほか、販売台数の多い車種、年式にはサードパーティー製のものも販売されています。
そこで今回は、筆者の愛車スバル・インプレッサG4(先代モデル)に適合するエアコンフィルターの中から、花粉などの除去に高い効果を発揮することが期待できる4製品をピックアップし、花粉をバンバン巻き散らかしている杉などの樹木が生い茂る山中をドライブしながら、その性能をチェックしてみました。花粉が多い場所へ行くとすぐに鼻水が出るなどして鋭敏に反応する筆者の体内花粉センサーは、はたして反応するでしょうか?
気温の高まりに比例して花粉の飛散量も激増する3月初旬、杉の木が生い茂る奥多摩エリアへ!(涙)
爽やかなはずの山の清浄な空気も、この時期ばかりは花粉の大量飛散により黄色っぽく濁って見えます。花粉症の人の目にはそう見えるはず!(笑)
今回選んだのは下記の4製品。トップブランドのデンソー製とボッシュ製、そして新興メーカーのエムリット製とパシフィック工業製です。価格は、デンソー製とボッシュ製が高めで、エムリット製とパシフィック工業製が安め(私の車の適合製品での比較)。その価格差は倍以上もありますが、性能の違いは素人にも実感できるものなのでしょうか?
4種類のエアコン用フィルターを花粉まみれの山中でチェック!
エアコンフィルターで重要なポイントは、肝となるフィルター部分の性能や厚み、そして通気性です。いかにフィルターのろ過能力が高くても、空気のとおりが悪くなるとエアコンの効きも悪くなってしまうので、通気性を落とさずにろ過能力を高めるという、二律背反した性能の両立が求められる難しさがあります。
今回はイメージ的な撮影も兼ねて奥多摩の山中に行きましたが、それぞれの製品を一定期間使用したうえでの印象をまとめました。
また、単純にフィルターの厚さを比較するため「光の透過具合」もチェック。光を通さないから粉塵も通さないとはかぎりませんが、光の透過度合いからフィルターの厚みがわかりやすく、判断材料のひとつにはなるかと思います。
かなり照度が高めのライトの照明を透かしてみました
このように、4製品を並べるとフィルター部分の質はそれぞれ大きく異なります。防塵性と通気性やいかに!?
4製品を横から見て比較すると、エムリット製フィルターが突出して分厚いです。こんなに分厚いと通気性が落ちるのでは!? と素人目には予想してしまいますがはたして?
まずは交換作業。エアコンフィルターの設置場所や交換手順は車種によって異なりますが、国産車の場合は、ほとんどグローブボックスの奥にあります。私の愛車もグローブボックスのふたをいったん外す作業が必要でした。車種によって多少の違いはありますが、だいたい手先が不器用な人でも簡単に交換できるよう作られているので、交換作業の難易度は低いといえるでしょう。愛車のトリセツをご覧のうえ、ご確認ください。
なお、2000年代以前の古めのクルマでは、エアコンフィルターの形状が異なったり、エアコンフィルターが備わらない場合もあったりしますのでご注意を。また、輸入車の場合は専門店による作業が必要なケースもあります。
スバル・インプレッサG4(先代モデル)の場合は、グローブボックスを固定する樹脂パーツを2か所外すとふたが外れました。エアコンフィルター本体も普通に引っ張ればすぐに取り外せます
デンソーは自動車部品世界シェア1位のトップブランド。その信頼性においては疑う余地はなく、実は今回のテスト以前にも長く愛用してきました。純正カーエアコンのメーカーでもあるので、正規ディーラーなどでも推奨されたりします。これを使用すると、室内の汚れ、特にウィンドウの内側が汚れる度合いが明らかに減ることを確認。難点はお値段がやや高いことと、活性炭層を採用する割には、新品時でも前を走るディーゼル車の排気のニオイは期待したほどカットされないことでした。エアコンの風量は体感時には純正と変わらず、というより、わずかに強くなっている感さえあります。春の奥多摩をドライブしても、私の体の花粉センサーはほとんど反応しないので、花粉の除去性能は高いと推察!
いかにも密度感の高そうなフィルター。取り出してたたくとろ過された花粉などが飛散するせいか、くしゃみが止まらなくなりました
フィルターのヒダヒダ部分の数は49で、今回の4アイテムの中では最多です
1年ほど使用しましたが、室内の汚れにくさは期待以上でした
光の透過具合は、今回の4アイテムの中では2位のボッシュ(後述)とわずかな差で3位。
・集塵力:★★★★★
・消臭力:★★★★
・通風力:★★★★★
・コスパ:★★★
※★5つが最高、以下同
BOSCH(ボッシュ)は、欧州車好きが絶大の信頼を寄せるドイツのブランド。植物由来の天然ポリフェノールが花粉やウイルスなどを包み込むようにして抑制。活性炭での脱臭も行うためか、デンソー製とボッシュ製は、手に取るとズッシリ感があります。中国製ながら、今回の4アイテムの中では最も高額。逆にすごさを感じさせますが、防塵性能は期待どおり高く、これもウィンドウの内側はほとんど汚れませんが、デンソー製と同じく、前を走るディーゼル車の排気臭は意外と侵入してきました。エアコンの風量は、ほんのわずかに落ちる感じながら、エアコンの効き自体に影響を及ぼすものではありません。花粉の除去能力は期待どおりにて、窓やドアを開けたりしないかぎり、クリーンな室内がキープできます。
欧州車好きが抱くボッシュのイメージを裏切らない質感です
フィルター素材のゴツさが印象的。フェルト的な密度感の高さを感じます
フィルターのヒダヒダ部分の数は38。素材がゴツイ分、通気性を考慮しての設計でしょうか
光の透過具合は、今回の4アイテムの中では2位。やはり素材が剛健な感じがします。
・集塵力:★★★★★
・消臭力:★★★★
・通風力:★★★★
・コスパ:★★★
今回の4アイテムの中ですべてが個性的。フィルター部分の厚みがほかの倍以上もあり、フィルターの繊維素材も非常にゴツイ印象です。フィルターのヒダヒダ部分の数は25と最少ながら、ろ過面積の大きさは素人目に見てもすぐにわかるほど。前を走るディーゼル車などの異臭が強烈に低減される(ゼロではないが低減量はダントツに高い印象)ので、内気循環派の私も、エムリットフィルターの装着時は外気導入にしっ放しで問題がないことに驚きました。これだけフィルター部分が分厚いのに、エアコン風量にほぼ変化がないことも驚きです。100パーセント国産品というのに価格の安さにも驚かされますが、パッケージを極限まで質素にするなどの工夫で値段を抑えているようです。フィルター部分だけを交換できる、つまり2回目以降はさらに安くなるという配慮もすばらしいですね。
今回最も感動したのが、こちらのエムリットフィルター
フィルター素材と本体との間はゴムで密着されています
ヒダヒダの数は少なめですが、これ以上増やすと通気性が悪くなるのかも。現状では通気性への悪影響はなし
パッケージは唯一の単色ながら、スバル用はスバルファンの心をくすぐる配慮がなされている点もニクイ!(笑)
強めの光も大幅にカットし、ほとんど透過しません。室内の汚れの付きにくさもピカイチです
・集塵力:★★★★★
・消臭力:★★★★★
・通風力:★★★★★
・コスパ:★★★★★
パシフィック工業製のエアコンフィルターは、活性炭入りと活性炭なしの2種類が展開されていますが、今回はよりシンプルで低価格な活性炭なしをチョイス。フィルター素材はきめが細かく、かつ硬いのが印象的です。活性炭なしなのでニオイに対する遮断効果は低いもようですが、集塵効果はかなり高く、使用後の汚れ度合いはこの製品が一番でした。白いから汚れが目立つという面もあるかと思いますが、コスパの高さはなかなかです。通気量がやや落ちるようで、エアコンの風量設定が弱めだと、わずかに減少する感じがしますが、エアコンの効き自体に悪影響を及ぼすほどではありません。
表面部分(ろ過する前の空気が当たる面)が2分割されているのも特徴です
フィルター部分は一見すると華奢(きゃしゃ)なように感じますが、触ると意外とゴツイ手触り
ヒダヒダの数は49と、デンソー製と並んで最多です
色が白いせいもあるかと思いますが、光はかなり透過します。
・集塵力:★★★★★
・消臭力:★★
・通風力:★★★
・コスパ:★★★★
今回試した4アイテムは、いずれも「花粉などの粉塵の除去」には非常に効果的で、花粉が大量に飛散する場所でも室内のクリーンさは高いレベルで保たれます。ニオイの侵入と、エアコン風量への影響ではわかりやすい差が出たので、参考になれば幸いです。
装着後1か月ほど経過してからウィンドウの内側の汚れをチェック。純正品では意外と黒っぽいスス状のホコリが付くものですが、今回チェックした4アイテムはいずれも汚れが激減することが確認できました。
ウィンドウの内側の汚れのチェックについては「車内 マイクロファイバーモップ ガラス拭き 内窓用ワイパー 車用内窓モップ」を使用。相変わらず便利なモップです。
いかに高性能なフィルターを装着しても、花粉が大量に飛散する場所では窓やドアを開ける機会を最低限にとどめ、できれば外で着用した上着などは脱いでビニール袋に収納してしまうなど、花粉を車内に持ち込まない工夫が必要となります。車内への大量の花粉の侵入を許したときは、エアコンを全開にしてなるべく多くの車内の空気をフィルターにかけてろ過するようにしましょう。
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。