医療・健康・食 週刊現代 日本

医者と病院と製薬会社だけがボロ儲け!「薬価の闇」をえぐり出す

こんな異常な国は日本だけ
週刊現代 プロフィール

医者は「薬価差益」で儲ける

川口 オプジーボは、承認されたがんに対して高額療養費制度が使えるので、自己負担は年間100万円ほど。そのため患者さんは「本当の薬」の値段にはあまり興味が持てないのかもしれません。

しかし、残りの3400万円は、我々国民が納めている健康保険料や税金から支払われているのを忘れてはなりません。

 病院や製薬会社からすれば、薬価を下げることはできるだけ避けたい。一人の患者にオプジーボを投与するだけで年間3500万円が入るわけですからね。まさにボロ儲けですよ。

 

川口 日本のGDPは'97年の523兆円がピークで、それ以降は下回り続けている。ところが医療費は増え続けています。'97年の医療費は29兆円であったのが、'15年は41.5兆円にまで膨れ上がっている。

他業界の人たちの給料は減っているのに、公的保険で強制的におカネを吸い上げている医療業界だけが「お手盛りで医療費を膨らましていいのか」ということです。

中医協の仕組みは、人口や経済が右肩上がりの時に、パイの奪い合いを調整する場として作られたものです。それを今の時代に採用し続ける神経が私には分かりません。

 医者も高い薬を出せば薬価差益(薬の仕入れ値に病院の利益を上乗せすること。オプジーボは7~8%)が増えるので、当然値段が高い薬を出したがる。そうなるとますます、医療費がかさみ、国民皆保険制度自体が崩壊する危険性があります。

川口 実は、今回のオプジーボに関しては、本当は特例を使わなくとも、もっと早くに値下げをすることができました。

今年の2月の段階で悪性黒色腫に対する使用量が2.25倍に増えたんです。使用量が増えると薬価を再計算するというルールがあります。そのルールに当てはめると55.6%引き下げることが可能でした。にもかかわらず、なぜこの段階まで引き伸ばし、特別ルールで薬価を引き下げたのか。全く理解できません。

 それは、彼らが何とかして自分たちの利益を守りたかったからでしょう。しかし世論の反発が大きくなったから、慌てて引き下げたのです。

川口 中医協が定める「薬の値段のつけ方」には、いくつか方法があります。たとえば今回のオプジーボのように「原価積み上げ方式」といって、新薬の開発にかかったコストに対して薬価を決めるやり方です。

 よく薬価を高く付けるのは「製薬会社が新薬開発にかかったコストを回収するため」「そうしないと誰も新薬を開発しなくなる」と言いますが、原価を積み上げて薬価を決めるのは難しい。

なぜならメガファーマ(巨大製薬会社)が、ベンチャー企業を買収して新薬の権利を手に入れるので、開発費を厳密に計算することなんてできないのです。

川口 確かにそうですね。オプジーボを開発した小野薬品もアメリカのベンチャー(後に大手製薬会社BMSが買収)との共同開発ですからね。

他には「類似薬価方式」といって、同じような薬と比較して、決める方法もあります。しかし元々日本の薬価水準は高いので、のちに続く薬も高くなりがちです。

また外国平均価格を参照する際に、非常に薬価の高い米国薬(一部の薬)に引っ張られて、おかしな値付けになってしまう。

 でもなぜか中医協はそれを疑問に思っていない。オプジーボが高すぎることは、医療関係者なら誰もが最初から分かっていたはずです。

記事をツイート 記事をシェア 記事をブックマーク