アメリカのエンターテイメント界が1年で一番盛り上がるイベントのひとつが、1月から3月にかけて断続的に行われる一連のアワード(賞)番組、ゴールデン・グローブ賞、グラミー賞、アカデミー賞だ。3つ終わったところで、今年最大の話題は#Me Tooムーブメントだった。そしてこの勢いはまだ止まりそうもない。
一応、ことの経緯をおさらいしておこう。2017年10月5日に、ニューヨーク・タイムスが大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ疑惑を、ローズ・マッゴーワンやアシュリー・ジャッドなど大物女優を含む複数の被害者の証言をまじえて報道した。
10月15日に女優のアリッサ・モレノが「セクハラや暴行にあったことのある女性全員が#Me Tooと書いたら、問題の深刻さが伝わるかもしれない」とツイートしたことで、#Me Tooのハッシュタグが一気に拡散した。ワインスタインは辞任し(現在、当局によって捜査の対象にもなっている)、#Me Tooはエンターテイメント界から、アート界、ファッション業界、スポーツ業界、その他多数の業界に飛び火し、数え切れないほどの辞任者を出した。
「私も被害にあった」が軸となった#Me Too運動に大きな転機が訪れたのは、1月に行われたゴールデン・グローブ賞の直前だった。「ハリー・ポッターシリーズ」や『美女と野獣』のエマ・ワトソン、『プリティ・ブロンド』のリース・ウィザースプーンを始めとするハリウッドのパワフルな女性たちの集団が、共同でTime's Upという団体を立ち上げを発表した。
「時間切れ」という意のこのフレーズに、女性たちに対する不当な扱いや暴力が許される時代はもう終わった、という意味を込めて、被害者の弁護費用の基金を設立し、被害者の支援を行う団体は、ゴールデン・グローブ賞に女性たち、そして賛同する男性たちに、団結の決意を表明するために黒を着て出席するように呼びかけた。
いつも華やかなドレスで埋まるレッドカーペットは黒が主流。賞本番では、アメリカでもっとも影響のある女性と言われるオプラ・ウィンフリーが「素晴らしい女性たちと、フェノメナル(同じく、「素晴らしい」の意)な男たちが、もう誰も「me too」と言わなくてもいい時をもたらす指導者になるために懸命に闘っている」と演説し、スタンディング・オベーションに。盛り上がりついでに、彼女が大統領選に出馬するのではないかという希望的憶測すら出た。
次の動画はそのときのオプラのスピーチの抜粋である。