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六人の赤ずきん 作者:icecrepe
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3/17

18:00/誰も知らない牙の赤

 
 『今夜、たぶんみんなが死ぬ』。

 不吉な言葉を口にした血みどろずきんの表情は穏やかだった。

「どう、して?」

 私は呻くように尋ね返した。
 彼女の言葉に「どうして」を返すのは二度目だが、仕方がない。
 まるで意味が分からないからだ。

「あら。私のこと、誰にも聞いてないんですか?」

 血みどろずきんはさらりと黒髪を手で払い、他の赤ずきんに目をやった。
 答える者は誰も居なかった。
 ――――いや。

「しにがみ血みどろずきん」

 ぼそりと呟いたのはカエデずきんだ。

「死神?」

「はい、猟師さん」

 ルビーずきんが割り込む。
 その目は敵を見つけた番犬のように鋭い。

「血みどろずきんと一緒にオオカミから逃げた赤ずきんはみんな死んでいるんです」

「え」 

「でも彼女だけは一度もオオカミに襲われていないんです。怪我をしたこともない」

「何……?」

 赤ずきん達が一斉に猜疑の視線を向けた。
 が、当の血みどろずきんはどこ吹く風だ。
 手を後ろで組み、私に媚びるような、嘲るような笑みを向けている。

「そんな私ですが、どうします?」

「……」

「一緒に連れて行きます? それともここに残します?」

「連れて行く」

 私は即答した。

「今までは運が良かったのかも知れないけれど、今日はそんなもの通じない。君以外の全員が塔に行くんだ。君にも来て欲しい」

「ふぅん……」

 私の後ろに隠れた赤ずきん達は微かに不満らしき空気を醸し出していた。
 あいつとは一緒に居たくない。
 そんな無言の圧力をひりひりと感じる。

 その一方で、五人の赤ずきんが血みどろずきんの一言一句に注目している気配も伝わる。
 おそらく血みどろずきんは今残っている赤ずきんの中で最も強い発言力と存在感を持っているのだろう。
 何となく、それが分かる。

「猟師さんは怖い物知らずですね。私を一緒に連れて行ったら、みんなが死ぬかも知れないのに」

「……!」

 私はようやく彼女の意図を察した。
 彼女が「今夜みんなが死ぬ」と言った理由は「最後に残った六人の赤ずきん全員が自分と一緒に一夜を過ごすから」だ。

「去年、オオカミが地下壕に水を招き入れたの」

 ザクロきんの声には警句らしい響きがあった。

「私達、溺れ死ぬかと思った。出口を間違えてオオカミの前に飛び出してしまった赤ずきんは皆死んだ。なのにその子だけは服一つ濡れなかった」

「分かった。……血みどろずきん!」

 私は声を張り上げた。

「はあい?」

「台車を持ってないか? 日が暮れる前に塔に行きたい」

「私、まだ行くとは言っていませんけど?」

「行かないとも言っていないだろう? おいで。攫ってでも連れて行く」

 あら、と血みどろずきんは蠱惑的な笑みを浮かべる。

「強引ですね。狼みたい」

「嫌いになったかい?」

「いいえ。ゾクッとしました。いいですよ。行ってあげます」

 凄絶な笑みを浮かべた血みどろずきんは流し目に近い視線を残し、小さな家に引っ込んだ。
 おぞましいことに、彼女の住む小屋の屋根には狼と人間の頭蓋骨が飾られている。

「……本気であの子を連れて行くの?」

 ザクロずきんは不快昆虫を目にした時のような表情だ。

「連れて行く」

「ちみどろずきんはへんです」

 カエデずきんがザクロずきんに加勢した。

「悪い人ではないんですけど、なにかおかしいとおもいます」

「人は大なり小なりおかしいよ」

「私も、血みどろずきんは本物の魔女みたいだと思います」

 生真面目な上に不器用なルビーずきんは言葉を飾らなかった。
 おそらくザクロずきんとカエデずきんが避けていたであろう言葉を平然と口にする。

「仮にそうだったとして、オオカミに襲われる側であることに違いはないよ。なら助けてあげないと」

 もにゅにゅ、とルビーずきんが何か言葉を飲み込んだ。

「そーそー。大丈夫だって」

 バラずきんが私の傍に寄っている。
 彼女だけは血みどろずきんを恐れていないようだった。
 それにリンゴずきんもだ。彼女は私に肯定的な微笑を向けている。

「血みどろちゃん面白いよ? 突然ワオーンって鳴いたり」

(さっきの鳴き声はやっぱりあの子か……)

 思った以上に不穏な子かも知れない。
 そんなことを思いながら彼女の家を見つめていた私は気付く。

「……君ら、親は?」

「います。私たちのお母さんも赤ずきんです」

 ルビーずきんの言葉をカエデずきんが受けた。

「大きくなったらオオカミには襲われませんから、その後でこどもを産むんです」

「なるほど」

 父親のことは聞かなかった。
 彼女達を善良な魔女「赤ずきん」たらしめているのは秘薬の製法であり、血筋ではない。
 行きずりの男か、村の男か。おそらく前者だろう。

「君らを助けてはくれないのかい?」

「はい。独り立ちできるぐらいまで育てると、お母さんたちはどこかに行ってしまうんです。だから私達を助けてはくれません」

 卵を産んでどこかへ去る。
 まるで動物だ。
 だが自分達もかつては「赤ずきん」だったのだから、オオカミの恐ろしさは分かるということだろう。

「あのね、私にはお兄ちゃんがいるの」

 バラずきんが私の腕にぶら下がろうとする。

「お兄ちゃん?」

「うん! ヘンゼルっていうの。今はいないんだけどね……」

(?)

 少しだけ寂しそうな顔をしたバラずきんは私の腕を掴む手に力を込めた。
 親から引き剥がされまいとする子猫のようだ。

 あ、とルビーずきんが矢庭に呟く。

「でも、一人だけ――」

 ルビーずきんが言いかけたところでリンゴずきんが咳払いをする。
 それ以上は言わないで、という制止の声のようだった。

「猟師さん。……急ぎませんか?」

 気弱なリンゴずきんが私の前へ。
 彼女の感じている不安は私の弛緩への警句のようにも感じられる。

(……)

 夕陽は既に雲に隠れつつある。
 空を覆うのはどんよりとした雨雲だけだ。
 少し風が吹けば雨粒が落ちて来るかも知れない。

「はあい、台車ですよ」

 からからと血みどろずきんが台車を持ってきた。
 ちょうど、子供が数人乗れる程度の大きさだ。

「私が一つ運びます」

 リンゴずきんが腕まくりをする。
 身体が大きいだけあって腕力には自信があるのだろうか。

「ではもう一つは私が」

 銃を帯に留めた私が台車の取っ手を掴む。
 と、すかさずザクロずきんが乗り込んだ。それに堅物のルビーずきんと無口なカエデずきんも。

「じゃあ私はこっちね」

 血みどろずきんが台車に乗ると、リンゴずきんは小さく喉を震わせた。

「じゃ私もこっち」

 バラずきんだけが血みどろずきんの胸に飛び込んだ。
 血みどろずきんは嬉しそうにバラずきんの頭を撫で回す。

「バラちゃんは可愛いねえ」

「でしょ~? よく言われる!」

 台車に乗った二人は実の姉妹のように顔を寄せ合った。
 微笑ましい光景だったが、他の赤ずきん達は怯えを隠していない。

「あ、猟師さん。これ、今の内に。みんなも」

 バラずきんが差し出したのは小さな香水瓶だった。
 塗りつける類のものではなく、噴霧する構造の香水だ。内容物の色は淡い薔薇色。
 しゅ、しゅしゅ、と香水を全身に振りかけていく赤ずきん達を見、私は首をかしげた。

(何だ……?)

「これが私の『秘薬』」

 バラずきんは私にも香水をしゅっと噴き付けた。
 色合いに反して香水は無臭だった。

「効果は、『一時間だけどんな匂いも消してくれる』こと。オオカミは鼻が利くから、これを振っておけばちょっとだけ逃げやすくなるよ」

「!」

 私は村長の話を思い出していた。
 赤ずきん達は世にも不思議な秘薬を造ることができる。
 製法は口伝で、村一つを養えるほどの見返りを期待できると言う。

(匂いを消す……)

 バラずきんの言葉が本当なら、確かにこれは様々な局面で役に立つ。
 刺激臭のするモノを紅茶の中に混ぜ込むこともできるし、番犬の鼻をごまかすこともできる。
 後ろ暗い仕事を生業とする者たちはこぞって欲しがることだろう。

 狼の持ち味は犬と同じ鋭敏な嗅覚、それに聴覚だ。
 それを一時的に無効化できるのは生き延びる上で大きな意味を持つ。
 私は他の赤ずきんたちと同じく全身に香水を噴き付けた。

(今までもこうやってオオカミをかわして来たのか)

 おそらく他の赤ずきんの薬にも不思議な効果があるのだろう。
 彼女達はそれらを組み合わせることで綱を渡るようにして生き延びてきたに違いない。

 ぽつ、と何かが頬を打つ。
 雨だ。
 とうとう降り出した。
 通り雨だろうが、それでも雨には違いない。
 雨は道に残る匂いを消してくれるが、ぬかるみに足跡が残ればオオカミはそれを辿るかも知れない。

(急がなければ……!)

 私とリンゴずきんは目配せすると、一気に走り出した。



 田舎道からは人の姿が消えていた。

 民家の前を通り過ぎると、中からはぼそぼそという囁き声が聞こえた。
 それに、生贄を見つめるような視線。

 風は徐々に強くなっている。
 時折背の高い草が大きく揺れ、その度に私とリンゴずきんは息を呑んだ。



 血みどろずきんの家を発ってからしばらくして、私達は塔と村を結ぶ石橋の前に立っていた。
 雨はぱらぱらと世界に降り注ぎ、むっとするような土の匂いが立ち込めている。

 広大な堀に架けられた橋の横幅はあまり広くない。
 二頭立てまでなら何とか収まるが、三頭立てより数の多い馬車は通れないだろう。

(良し……)

 塔を目の当たりにした私は自分の判断が誤っていないことを確信する。
 橋向こうに見える塔は角柱型で、壁面には僅かな綻びも見受けられない。かなり堅牢な造りであることが窺われる。
 ちょっとした城郭ほどの敷地も籠城する上では役に立つだろう。

(後は茨を断って……鍵か)

 塔の前に繁茂する植物を見つめていた私の傍にカエデずきんが立った。

「どうやって塔に入るつもりですか」

「窓から中に入って閂を上げる」

「まどには鍵がかかっているかも知れません」

「板を張っているのなら壊すよ。鍵を使って塞いでいるのなら鍵を解けばいい」

 私は懐から小さな器具を取り出した。
 金属製の薄い箱で、中には数本の棒と液体が入っている。

「『問鍵といかぎ』と言う。その場で鍵の構造を調べて開ける道具だ」

「……そんなもの、どうしてりょうしさんがもってるんですか」

 答えようとしたところでバラずきんが声を上げた。

「うわぁ! たかーい!」

 私たちの立つ石橋は塔を囲う堀の上に架かっている。
 堀の水は半分ほど干上がっているため、橋は宙に浮かんでいるようにも見えた。

 ブーツの先で蹴った石が、かつっ、かつっと石壁を叩き、たっぷり数秒かけてようやく水面に波紋を立てる。
 ちょっとした井戸ぐらいの深さはあるようだ。
 目を凝らせば魚影も見える。人工的な湖に近いのだろう。

「意図的に干上がらせていると聞きました」

「意図的に?」

「はい。あそこです」

 ルビーずきんが指差す先には確かに水路らしきものがあった。
 堀へ向かう水は分厚い木の板に阻まれ、まったく別の方向へ流れている。

「子供をここに近づけさせないためだと聞いたことがあります」

 石橋から堀を見下ろした。
 ――――高い。
 大人の私でもこの高さは脚が竦みそうになる。
 子供ならまずここに近づかないだろう。

 だがそうまでして塔に近づけさせない理由が分からない。
 悪い魔女が居たと言っていたが、それは事実だろうか。

「『耳取り鼻剥ぎの魔女』」

 うっそりと呟いたのはリンゴずきんだった。

「ここには魔女が居たんです」

「どんな魔女だい?」

 聞くまでもなさそうだが。

「人を攫って、その耳を取って鼻を削いで殺していた悪い魔女」

 ザクロずきんが退屈そうに、私の予想通りの話を語る。

「ずっと悪さをしていたんだけど、オオカミが出てからしばらくしていなくなったんだって。食べられたんじゃないの?」

「赤ずきんでもないのに?」

「赤ずきんの薬で得られる富を独占してたの、その魔女。自業自得よね」

「あらあら。お喋りしている場合かしら?」

 橋の入り口に台車を置いた血みどろずきんがのんびりした口調で告げる。

「さ、みんなは先にどうぞ。後ろは私が見ます」

「……いいのか?」

 四方を堀に囲まれている以上、オオカミが来るなら背後からだ。
 それを分かっていながら彼女はあえて最後尾につくらしい。

 血みどろずきんは靴底で石橋をこつこつと叩いた。

「この橋は石で出来てますから、オオカミの爪がぶつかれば必ず音が聞こえます。私、耳がいいんですよ」

 それに、と死神は微笑した。

「この配置なら最初に殺されるのは私でしょうから、ね」

 私達は互いに頷き合い、橋を渡り始めた。

「下を見るな。小さい赤ずきんは大きな赤ずきんの手を握って」

 吊り橋を渡るような緊張感の中、私たちは着実に歩を進めた。
 うっかり下を見れば私とて意識を失いかねない。

「……」

 不安そうにカエデずきんが振り返る。
 だがオオカミの姿は無かったらしく、胸を撫で下ろして私を見る。
 次はルビーずきん。

「ほらほら。後ろは私が見てるから集中して。落っこちて死んだら痛いよ?」

 血みどろずきんが嘲るように言うと、ようやく少女たちは後方への警戒をやめた。



 どこか遠くで悲鳴が聞こえた。
 森から鳥が飛び出す。



「ッ!」
「っ!」

 カエデずきんとバラずきんがザクロずきんに飛びつき、リンゴずきんとルビーずきんが私に飛びついた。
 最後尾の血みどろずきんは腰を低くし、私は猟銃を掴む。

「オオカミか?!」

「ただの狼じゃないですか? まだ夜にはなっていませんし」

 痛いほどの静寂がその場を包んだ。
 ぱらぱらという雨の音だけが聞こえる。

「……急ごう」

 長い石橋を渡り切った私たちは草むらを目の当たりにしていた。
 向日葵ヒマワリに似た、幅広の葉をもつ植物群だ。
 この草が視界を覆いつくしているせいで塔の扉すら見えない。

 私は山刀をすらりと鞘から抜き、振り上げて――――

「待ってください」

 気弱なリンゴずきんが叫ぶ。
 彼女は血みどろずきんの隣で何かを話していたが、その会話を打ち切って割り込んだ。

「それ、トゲトゲの草!」

「え?」

 私はすんでのところで手を引っ込めた。
 そして目の前に広がっている植物をじっと眺める。

 よく見るとその植物の茎や蔓に棘は生えていなかった。
 イバラではない。
 これは――――

(イラクサか……!?)

 イラクサは一見するとありふれた植物のようにしか見えない。
 地方によっては菓子にすら使われると聞く。
 だがその平たい葉や茎には目に見えないほどの棘がびっしりと生えており、触れた者に激痛をもたらす。
 毒素を帯びているらしく、痛みは数時間から数日は引かない。
 種によっては嘔吐や発熱、幻覚作用を引き起こすものすらあるので、国が直々に禁踏地と定めることもある。

 私は思案せざるを得なかった。
 イラクサの棘はガラスの破片のようなものだ。
 例え衣服を被って突き進んでも衣服そのものに付着してしまう。

(火を使うか? いや……) 






 ――――微かな。

 本当に微かな獣の臭いが鼻をついた。








 じゃぐっ、と。
 硬く濡れた何かを噛み千切る音。


 ぱた、ぱたた、と。
 水より粘り気のある飛沫が地を叩く音。








 その瞬間、私はとんでもない勘違いをしていることに気付いた。

 『暗くなったらオオカミが出る』。
 村長は確かにそう言った。




 ――――『夜』だとは、一言も言っていない。




 振り返る。
 呼吸と心臓がいっぺんに止まりかける。

「――――!!!」

 私が目の当たりにしたのは村長が形容した通りの生物だった。


 荒ぶる雄牛よりも大きく、筋肉質な巨体。
 それを支える四肢は長く太く、尾は人間ほどの長さがある。
 全身は針金を思わせる深紅の体毛に包まれており、毛むくじゃらの顔にぽつんと浮かんだ目は汚れた炎のように黄色い。
 口は耳まで裂けており、顎からはみ出した乱杭歯には血の筋が伝っている。

 一人の赤ずきんの首から上をぼりぼりと咀嚼するオオカミは、知性を湛えた目で私を見つめていた。
 四つ足の獣でありながら、目の高さは私とほとんど変わらない。
 互いの距離は、ほんの数十歩。


 私はその一瞬、罪悪感を忘れることができた。
 代わりに、死ぬほどの恐怖を体感する。


「――――!!!!」
「――!! ―――――!!!」
「――――ッッ!!!」

 耳をつんざく五人分の悲鳴が嵐となって私を通り過ぎる。
 うずくまる者、泣き喚く子を抱きしめる者、堀に飛び込もうとして踏みとどまる者。

(馬鹿な……!!)

 私は慄然としていた。
 ありえない。

 狼には爪がある。
 土の上ならともかく、この石の橋を渡れば必ずちゃりちゃりという音が聞こえるはずだ。
 それを血みどろずきんや私が聞き逃すわけがない。

 なぜ今の今まで――――

「っ!!」

 私は気付いた。
 オオカミの四つ脚が白い何かに包まれていることに。
 丸みを帯びたそれは今や椀状に変形し、オオカミの爪と脚を覆っている。

(パン生地……?!)

 そう言えば水車小屋でパンをこねていた母娘が居た。
 まさかコイツは足音を消すためだけにあれを強奪したのだろうか。
 我々が進む先が石橋であることに気付き、普通に近寄れば足音で気づかれると悟って。

 そんな馬鹿な。
 畜生の考えではない。
 これは。これはまるで――――


「――きん! ――を、――!!」
「――――!! ――――ッ!」
「――!! ――!」


 少女達の悲鳴と怒号が飛び交う中、最後に村長と交わした言葉が耳に蘇る。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『オオカミには名前があるのです』

『名前?』

『ええ。アレから命からがら逃げだした者たちがつけた名です』

 老人の乾いた唇が動く。

『ヤツの名は――――』


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 ヤツの名は。




 ――――『ジェヴォーダンの獣』。


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