なるほどね。

北海道民独身男性の日常

星野源の話ではない。

自分自身の話だ。

人の色恋沙汰は懲り懲り、という方はこれ以上読まないことをおすすめする。

以前の自分なら、「まるで砂糖を噛んでいるようだ」と顔をしかめたことだろう。

相手のことは、ここでは「彼女」と書いておく。

普段は下の名前で呼び合っているのだが、ここで書くわけにはいかない。

 

彼女と初めて会ってから、1ヶ月と少し経った。

初めてのデートは、映画館だった。

姿を見たその瞬間に、僕は恋に落ちた。

一目惚れだった。

 

他の人や彼女自身がどう言おうと、彼女はとても可愛い。

僕自身のタイプど真ん中だという以上の説明はできない。

とにかくまあ、そういうことなのだ。

 

初めて会った時は、頭の中が真っ白になってしまった。

本当にこんな可愛い相手と僕がデートしていいのかと思った。

時間的に、すぐ見られるのは「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」だけ。

初対面の相手を恋愛モノの映画に誘うなんて、本当に良いのかと思った。

下心があるように見られたら嫌だなあとか、そんなことを考えていた。

そんな僕の心中をよそに、彼女は美味しそうにチュロスを食べていた。

その様がとても愛らしかったのだが、それを楽しむ心の余裕はなかった。

上映中も、隣の彼女が気になってしょうがなかった。

 

その後、交換したLINEを使って僕たちは何度も通話をした。

今は本当にいい時代だと思う。

何百キロも離れた同士でも、まるですぐ近くにいるように話ができる。

話す度、もっと彼女のことを知りたいと思うようになった。

こんなに他者に対して興味を抱くことは、これまで無かったと思う。

彼女は割とオープンに色々なことを話してくれた。

時折話に出てくる元カレに嫉妬してしまう自分に驚いた。

自分にこんな気持があるなんて知らなかった。

何が好きで、何が嫌いなのかを聞いたけれど、まだあまりわかっていないと思う。

ブニュッとした食感のものと動物の内蔵が食べられないことだけは把握できた。

その反面、僕の好き嫌いは的確に聞き出されて完全に把握されている。

そうやって僕自身のことを知ろうとしてくれるのは、とても嬉しい。

僕の食生活が荒れていると、野菜を摂るように諭された。

一念発起して作った野菜の料理は割と美味しかった。

これまで頑なに自炊をしなかった僕が料理をしていることに、自分で驚いた。

こんな風に、変えられてしまうものなのかと。

時にワガママを言われても、甘えられるのが嬉しい。

こちらからも年甲斐もなく甘えてしまうことがある。

みっともない所をたくさん見られてしまったなと思う。

こんなに誰かに対して内面をさらけ出してしまう自分に驚く。

彼女はとてもしっかりしているようでいて、どこか放っておけないところがある。

それがとても愛おしいと思う。

 

これまでに僕は彼女と5回デートをした。

二人とも食事を楽しむタイプなので、美味しいものをあちこち食べに行った。

スープカレーとか、パンケーキとか、チーズフォンデュとか、ケーキセットとか。

彼女が勧めてくれる店はどれも美味しくて、食べに行く度センスの良さに惚れ直した。

本当は僕が行き先を決められれば良いのだが、街中の店はサッパリだ。

いずれは僕の知っている郊外の美味しいお店に行こう、と話をしている。

せめてお代だけは僕が出そうと思うが、全部出そうとするといつも止められる。

もっと甘えてくれてもいいのにと思いつつ、そういうしっかりしたところも好きだ。

一緒にご飯を食べる度、彼女の食べる姿が可愛くてつい見とれてしまう。

その度に、いつも怒られるのだが。

食べ物を美味しそうに食べる人が好きなのだからしょうがない。

 

デートでは色々なところに出かけた。

動物園とか、オータムフェストとか、絵本の図書館とか、お買い物とか。

彼女は疲れやすい身体にも関わらず、精力的に一緒に歩いてくれた。

きっと彼女となら、どこに行っても楽しいと思う。

僕は口数が少ない方だし、そんなに面白い話だって出来る人間じゃない。

彼女自身が楽しんでくれているか、時折ちょっぴり不安になる。

彼女の話を聞くのは、僕自身とても楽しいのだけれど。

2回目に会った時、初めて手を繋いだ。

僕にとっては、生まれて初めての経験だった。

とても恥ずかしい話だが、彼女から手を繋いでくれた。

飛び上がるくらいに嬉しくて、幸せだった。

繋いだ手からお互いの気持が通じるようで、世間のカップルの気持がやっとわかった。

最近は、自分からも手を繋ぐようになった。

まだ照れくさいけど、気持ちはちゃんと伝えなくちゃダメだと思うので。

こんな自分と一緒に居てくれてありがとう、とか。

できることならずっと離したくない、とか。

あまり言葉にできないので。

 

住んでいる場所が遠く離れているので、会う時は泊りがけのことがほとんどだ。

最近は中国人観光客の多さもあってか、宿を取るのもままならない。

彼女の部屋に泊めてもらうこともある。

不思議と彼女の部屋はやたらと居心地がいい。

初めて会った時は緊張で良くわからなくなっていたのに、今はすっかり自然体だ。

実家のような安心感、とでも言うのだろうか。

まるでずっと前から一緒に住んでいるような気持ちにすらなる。

トイレにウォシュレットさえあれば、ルームシェアだって出来そうなくらいだ。

一昨日は泊めてくれた上に、手料理までごちそうになってしまった。

僕が豚汁が好きだと言ったら、本当に作ってくれたのだ。

仕事で疲れているはずなのに、手間のかかる揚げ物まで作ってくれた。

僕の大好きなカボチャのデザートも用意してくれて、至れり尽くせりだった。

もちろん味もとても美味しかったのだが、それ以上に込められた気持ちが嬉しかった。

正直、泣きそうになるくらいだった。

せめてもの報いにと洗い物を手伝ったが、そんなことでは返しきれないなと思った。

これから先、受け取った気持ちにもっと応えて行きたいと思う。

 

今後のことは僕も彼女もどうなるかわからないし、見通せないことだらけだ。

僕自身こういう恋愛沙汰は初めてだし、きっと至らない所がたくさんあると思う。

でも、まずは今、お互いを想う気持ちを少しずつ育んでいけたら良いと想う。

良いことも悪いことももっとたくさん知り合って、それでお互い好き合えたら良い。

今はそう思っている。

 

この気持を代弁するかのような曲があるので、最後に紹介しておきたい。

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