まずちょっと気になっていたことなんですけど、『NANA』って登場人物それぞれの恋愛模様や心情が描かれているわけですけども、みなさんは『NANA』を読む時はどの登場人物に共感して読んでいるんでしょうか
シーンごとで違うんですよね。『この淳ちゃんの気持ちもめっちゃわかるけど、ハチ(小松奈々)の気持ちもすごいわかる!!』みたいな感じで!
時代というか、年代とか自分の置かれてる状況でも共感する対象が変わってきます!
なんか、歳を重ねるごとにどんどんハチへの理解が深まっていきます。最初に読んだ時は小学4年生だったんですけど、その時はハチの移り気なところが共感しきれてなくて
わかりみが深い!
『もっと一途な恋をすればいいのに』とか思っていたんですけど、歳を重ねるごとにハチの、"刹那的でも最高の夜を過ごしたい"みたいなのも気持ちがわかる時があって。年齢によって共感する対象は変わるし、それこそ場面場面でも変わるんです。恋愛のさまざまな心の機微が描かれているので男性でも読んでいて共感できるところがあるはずです
むしろ『NANA』は男性にも読んでほしい。『NANA』を読める男の人は強いですね
『NANAが好きな男の人』ってそれだけで恋愛強者感ある気がしますね……
いろんなタイプの女の子が出てくるので、男性が読んでも『この子が好き!』というキャラはいると思います。あとは、一回読んで挫折した人もいるんじゃないかなと思うんですけど、また試してほしいですね。その当時読んだ時と今とでは、『NANA』の受け取り方って絶対に違うから
常に一定の感想が出るわけではなく、読む度にだったり自分の置かれている状況によっても感想が変わるんですね
改めて思うと、『NANA』はその物語の中にリアルな登場人物の生活があって、その中で恋愛をしたりするんですよね。結構漫画は読むんですけど、その中に"生活がある漫画"というのは意外と少ないです。なので、"『NANA』は生き物"だと思ってます
私は小学生の時に『NANA』を読んで、大人の恋愛を学びました。そこから実際に自分が人を好きになってみて……そして『NANA』の見方もまた変わりました
『NANA』の恋愛観は、その後のみなさんの恋愛観にも影響を与えているんですね
『恋愛は、一途なだけじゃないんだな』ということは『NANA』で学びました。他の少女漫画は登場人物が決まっていて、その中でくっつくかくっつかないかみたいな、そのやきもき感を楽しむような漫画が多いけど、『NANA』は、ハチがいろんな人のこと好きになるし、1話の中で気持ちが移ろいでいったりもする。もちろん、ずっと同じ人を好きな人もいると思うけれど、ぶっちゃけ生きていると好きな人が変わっていくこともある。『NANA』を読んで、それでもいいんだと気づくことができました
少女漫画とかだと、綺麗なところだけを切り取る作品が多いので、結構パターンが決まっているんですよね。私たち、小さい頃から白雪姫とかシンデレラとかハッピーエンドで終わる話ばかりを読んでたじゃないですか。安易に『めでたしめでたし』で終わらない感じの作品にはじめて触れたのが、矢沢あい先生の作品で、衝撃的でした。そして、『そうだよね、私はディズニープリンセスじゃないもん』と
恋愛する相手が変わっていく中で、その人の哲学みたいのが出てくるじゃないですか。それがすごく勉強になりました
今読んでみると、初期のハチってめちゃくちゃわがままじゃないですか。でもいろんな男性との恋愛を経てハチの成長が見えるし、あと、淳子が『恋愛だって……人間同士の関わリ合いなンだから、相手を思いやれなきゃ上手く行きっこないよ』って言うんですけど、そこに付随する考え方とか、恋愛以外でも勉強になりました。……私、ついこういうの一字一句覚えちゃうんですよね
『NANA』は人生レベルでみなさんに影響を与えてるんですね
だからこそ私にとっての『NANA』は、"ちょっと今どこにいるかわからない行方不明中のお姉ちゃん"みたいな感じなんですよね。最初はあの物語を受け入れられたり、受け入れられなかったりした。でも、多大な影響を受けた思春期を経て、今はめちゃくちゃ会いたいのに行方不明中、という。すごいところで連載が止まっていますからね……
そろそろ本題の『NANA』で出てくる部屋やインテリアについて触れていきたいと思います。事前調査でみなさんに「『NANA』で印象に残ったインテリア」について聞いてあるんですけど、結構回答がばらけてるんですよね
えー、そうなんですか。みんな結構かぶっているのかと思いました
あやにーさんは「ハチの部屋のベッド、窓際のテーブル」、黒田さんは「レンの家の猫足の黒いバスタブ、ヤスの家」Mさんは「水越さんのお店(ハチが上京して最初にバイトする家具屋)の家具全部、レンの家(特に物件)」……
水越さんの家具屋さん! あれもかわいいんですよねー。ランプひとつ取ってもかわいくて、欲しくなる!
そういうシーンばっかり覚えているんですけど、ハチの妄想で『水越さんベッドが軋む』みたいなことを言って、やっぱり生活とベッドは共になってるんですよね。ケンカのシーンとか、ケンカしてるのにタクミとハチがエッチしちゃうシーンがあるんですけど、ナナが隣の部屋にいるのにエッチしちゃうって時に、古いベッドだからスプリングが軋む音が聞こえて、それにNANAが苛立って例のイチゴのグラスが割れる。あれもインテリアでは重要なシーンかなあと
あのイチゴのコップ、当時みんな持っていませんでした? 友達んちでも見かけた覚えがある
あれすごい見かけた覚えがあります……雑貨屋さんとかで見ました。時代かも
あと、私はハチの部屋のベッドがすごく好きで、あれっぽいのを探して今も使ってます! あと、ヤスの家は遊びに行きたい男の人の家
それもわかる〜! でも『NANA』といえば、ハチとタクミが住む白金の家ですよね。部屋もゴージャスな感じの
ハチがコーディネーターさんに任せたら、『なんか思ったより豪華になっちゃった』ってやつですよね。あれ、ハチがはじめてタクミとエッチしたスイートルームと雰囲気が似ていると思っていて。ハチは潜在意識の中で、あのスイートルームを白金の家に再現したんじゃないかなって思うんですよ
なるほどね〜
思い出の場所ですからね。すごく素敵でかわいらしくて、きらびやかで、でも品があって……という家具でそろえる。あの空間をそのまま白金に持っていきたかったんじゃないかなって私は考察しています
初期のレンの家で、ベッドの脇に灰皿があるんですけど、ただの灰皿がポンと置いてあるんじゃなくて、足が付いた灰皿なんですよね。ベッドに寝っ転がりながらトントンってできるような。あれもおしゃれで『うわぁ~!』ってなります
ぜっったいあの足つきの灰皿、ヴィレヴァンで売ってますよ、ぜっったいヴィレヴァンで売ってます!!
みんなに大事なことを伝えたいんだけど、足付きの灰皿、めちゃくちゃ”バンドマン部屋あるある”なんだよね……。バンドマンの家に実際にある
あっバンドマンとしかお付き合いしていないんですもんね! バンドマンの家を知っているんですもんね!
私は足の付いた灰皿を見る度に、ああ、女連れ込んでるんだなって思っていた。だって、一人で寝る前にそんなので吸わなくない? だから、あの灰皿見る度に、ナナと会ってないあいだ、何も無かったわけじゃないよなーと思っちゃってた
ごめんなさい過去の思い出を思い出させちゃって! 私は、スタッフとして一般的なバンドマンの家しか行ったことが無いんですけど、あんなおしゃれなのは見たこと無くて。もっと売れてなくて泥臭いバンドマンたちって、部屋は汚くて、ギターがバーーーって置いてあるところにこたつがあって、そこで5、6人住んでて、タバコだらけの机の上で、みたいな部屋なんですよ。だからNANAに出てくるバンドマンたちはおしゃれだなぁと
その泥臭い感じ、それはそれでいいですね!
『NANA』は共同生活を描くシーンも結構あるじゃないですか。物件の話でいうと、ナナとハチもあるけど、寮とか! 最後の方はマンションとかですけど、でも絶対集まるところがあって、その感じとかも好きです。椅子と机があって、そこで生活がある。机とかも丸いデザインでいちいちかわいいんです
Mさんは女同士でシェアハウスもやられていたんですもんね!
そうです! 『NANA』に憧れてやりました。『NANA』みたいに真ん中にリビングがあったりはしないんですけど。ナナとハチの部屋は本当に羨ましいです、シェアハウスを探してた身からすると。両サイドに部屋があって、鍵も付いていて、おしゃれで、東京で多摩川7万というのはなかなかない
あのナナとハチの部屋って、確か事故物件なんですよね?
そうなんです! だから家賃が安いんですけど、私はそれについても物語に関係あるエピソードとして描かれるんじゃないかと思っていましたね
そもそも、洋室が2つ付いている物件て珍しいよね。普通1つは和室とか。あとはもっと間取りが違ったりとか
ほんっとおしゃれですよね。『NANA』に出てくる家って、窓がおしゃれなんですよ。窓越しからの視点でナナと二人、みたいなシーンが多いんですよ。私も”『NANA』みがある物件”を東京中探しているんですけど、なかなか無くて。最近やっと一軒、外観がそれっぽいものを見つけたので目星を付けています
”『NANA』みがある物件”もかなりパワーワード感ありますね
私は物件に”『NANA』みがあるかどうか”は参考にしちゃいますね。なかなかそういう物件って無いんですけど
あとは、私レンの家にあった黒の猫足バスタブを探していて。10年探しても見つからないですよね、アレに入るのが夢です。『NANA』を読んで以来、猫足バスタブの呪いにかかり、探しています
『NANA』はお風呂でのコミュニケーションもシーンによく出てくるんですけど、みなさん、好きな人とお風呂はいるの好きですよね?(あやにーさんの目を見て
ぎゃあっなんで私!?? びっくりした(笑)
お風呂の中での会話って、作中に結構ありますけど、ナナとハチはすごく小さなバスタブの中でしゃべっていたのに、タクミとハチの家のお風呂は大きくて、二人ともゆっくりできるようなところとか、上京したての時も、スイートルームに薔薇を敷き詰めているところで、レンとナナが再会したりとか。結構『NANA』の話の中ではお風呂もキーワードになってるような
本当に『NANA』はお風呂で会話しがち! 最初ハチは恥ずかしがっていたので、ショージとお風呂に入るシーンはないんじゃないかと
なんか高校生ぐらいの時の感覚からすると『一緒にお風呂に入る=大人』って思いながら読んでました。一緒にお風呂に入るって、なんかすごく大人じゃないですか
改めて『NANA』ってすごいですね……。今日話を聞いていて、いろんな女の子の、いろいろな感情が詰まっている作品なんだなと。思春期にしっかり通っていたら別の人生があったのかもしれないなってなんとなく思いました
でもなんか、『NANA』は果たして万人におすすめなのかというと、そういう作品ではないんですよね。人にもよるし、”出合う時に出合う漫画”だと思っているから。『超おすすめ!』というより、何かしらのタイミングで向こうから来るみたいな作品です
『本』というもの自体そういう面を持っていると思いますね。私が『NANA』でおすすめしたい点は、読む時期によって感想が違うから、とりあえず持っていてほしいんですよね
確かに。教科書的に持っていてほしい
もうね、バイブルって仰いましたけど、『NANA』には自分が助けられるシーンがあるんですよ。仕事系なら何巻、男にフラれた系なら何巻、恋を始めた時は何巻と、気持ちに合わせて読める
『NANA』はショック療法ですよね。あんなにおしゃれな世界観の中で繰り広げられるドロドロの恋愛模様で、今の恋愛の悩みがバカバカしく思えるし。あとは登場人物と共感して自分の気持ちが癒やされたりとか、絶対あると思うんですよ。なので、”迷ったら開け“みたいな!
レンタルとか、電子書籍ももちろんいいと思うんですけど、自分の本として手元に持っていて、いつでも開いてみてほしい。きっとみなさん勇気づけられたり、癒やされたりする
© Mynavi Corporation