本連載では、最新のマーケティングテクノロジーや手法を正しく捉えるために、マーケティングに携わる先駆者に一歩踏み込んでインタビューして、「本来あるべきテクノロジーの利活用」に必要なことを紐解いていきたいと考えてます。
ここ数年、AI(人工知能)や機械学習というキーワードを取り上げたニュースをいたるところで目にします。
特にビジネス用途でAIを様々な業界・分野で活用する動きが少しずつ進んでいるようにも見受けられます。それでもまだ、少し未来の話のように聞こえてきます。
実際に企業はセールス&マーケティングの現場で、どのような手法を活用しているのか、利活用が進んだ、少し先の未来マーケターの仕事はどうなっていくのか。
その分野で自らも先んじて機械学習を活用し、営業プロセス改善にマーケターとして取り組んでいる有益伸一氏に話を聞きました。有益氏は、現在電通デジタルに在籍し、コンサルタントの立場で多くの企業の“機械学習”活用を支援しています。
現在、企業のセールス&マーケティングの現場で、”AI”はどのような手法や用途で使われているのでしょうか?
様々なデータを予測・分類をするために機械学習を使うアプローチは少しずつではありますが増えてきています。Web広告出稿の最適化やコンテンツの出し分けなど、ツールベンダーが提供しているソリューションの一部に機械学習が実装されており、企業が利用している例はあります。
しかし、セールス&マーケティングの現場で独自に機械学習を利用している例はまだ少ないのが実情です。
例えば、ある企業では「会員が優良顧客化する(企業にとって望ましい顧客になる)か」を予測し、キャンペーンを出し分けています。過去のWeb上での行動履歴や会員の属性情報が優良顧客化にどの程度影響したかを算出し、獲得した新会員が優良顧客化しそうであるかを予測し、優良顧客化しやすい人だけキャンペーンを出すといった活用をしています。
機械学習を使った予測と聞くと、自動でデータを取り込んで、しかも良いことを予測するものと勘違いしがちです。そもそも機械学習を使った予測を現場で実現するにはどんなステップが必要なのでしょうか?
実際に企業の現場で機械学習を利用して、予測をしていく手順としては、大きく下記の4段階のステップを踏みます。
1)予測したいデータの定義
予測したいデータが明確であることが前提です。売り上げの予測(数値)や商品を購入するかどうかの予測(True/False)なら分かりやすいでしょう。ところが上記の事例のように「優良顧客化するか」を予測する場合、優良顧客の定義は捉え方次第で変わってしまうことが問題となります。予測したいことを明確にデータとして定義する必要があります。