北朝鮮の核開発や麻薬密輸の問題をめぐり、米上院政府活動委員会の小委員会は20日、北朝鮮の元技師や元高官、米政府高官らを招いて公聴会を開いた。弾道ミサイル開発などにかかわっていたという元技師は「部品の90%は日本から来た」「万景峰号で3カ月ごとに運ばれた」と証言。麻薬の密売に関与したという元高官は「北朝鮮は世界で唯一、麻薬の生産と密輸を国策事業にしている国家」「主要な市場は日本」などと語った。米国防総省高官は国際的な取り締まりを強化するため、各国と捜査・軍事部門を通じた連携の用意があると表明した。
北朝鮮のミサイル問題で日本との接点が浮上したことで、両国を結ぶ万景峰号の積み荷検査の強化に向けた動きが強まる可能性もある。
いずれも97年に亡命したという元技師と元高官は、安全確保のためとして黒い布をかぶり、金融管理・予算・国際安全保障小委員会の公聴会に臨んだ。
元技師は、北朝鮮の北部・慈江道にある「青年電気連合企業所」という軍事企業で、ミサイルの開発や製造にかかわっていたという。89年、行き先を告げられずに15日前後の航海の末に中東らしき場所に行かされ、ミサイルの発射実験に成功。帰国してから、行き先がイランだったと知らされたと証言した。
一方、麻薬の密輸に関与していたという元高官は「北朝鮮が国家ぐるみでケシの栽培に乗り出したのは70年代後半」で、その理由は「金日成が現金を必要としたからだ」と述べた。ケシは山岳地帯で栽培され、厳重に警備された施設でアヘンに精製後、政府の直轄工場でヘロインが生産されたという。
さらに「90年代は麻薬と日本の中古車の密輸だけが、外貨を稼げる手段だった」とも指摘した。元高官が亡命前、麻薬は中国との国境で1キロあたり1万ドル(約117万円)、黄海や日本海での洋上取引では1万5000ドルで売買。また、海外では「(北朝鮮の)外交官やビジネスマンも麻薬の密輸に動員された」という。
一方、ホリス米国防次官補代理(麻薬対策)は北朝鮮の麻薬密輸が「米国の安全保障に対する潜在的脅威」と指摘。「国防総省は、捜査や軍事部門で各国と連携の用意がある」と語った。
北朝鮮のミサイルや麻薬の密輸問題は、主要な外貨獲得源になっているとして、米政府が核問題と同様に日韓中ロの周辺諸国などと包囲網の構築を目指している。22、23両日にテキサス州で予定されている日米首脳会談でも、主要な議題のひとつになる見通しだ。
(05/21 11:11)
|