相場格言は「落ちてくるナイフは掴むな」と教えています。「上げ百日、下げ三日」と言われるほど、下落相場は速いのが普通です。よって、今日が底値だと思って買っても、数日違ったら大きな損失になることもあり得ます。
実際、2月のNYダウ平均株価は1日で1,000ドル以上も下落した日が2度ありました。その前日に投資していたらと思うと、ゾッとします。
このゾッとした感じや「落ちてくるナイフは掴むな」という相場格言は、実生活でも炊事場で包丁を床に落とした経験のある人なら実感が湧くでしょう。ただし、落とした包丁が床から跳ね返って宙を舞っている間も危ないことに変わりはありません。
相場でも株価がリバウンドしてきてしまうと、買いにくいものです。実際、NYダウはかなり戻していましたが、最近の4営業日で1,000ドル以上も下落してしまいました。
そこで底値で投資する方法が必要になります。“床に突き刺さったナイフ”を見つける方法です。今回は2つの方法を紹介します。
【その1】日本株の習性を利用
第1の方法は、米国株の底値に対して、ドルの底入れや日本株の底入れが3~4週間程度遅れることがあるという習性を利用した方法です。
株式相場の下落局面では、「リスクオフの円高」と呼ばれる現象が頻繁に発生します。日本は経常黒字の国ですが、それでも為替レートがある程度安定しているのは、日本から対外証券投資が積極的に出ているからバランスしていると考えてください。
ただし、証券投資は臆病で足の速い資金なので、市場が混乱すると萎縮してしまいがちです。そのため、リスクオフ時には、需給のバランスが崩れる懸念によって円高になりやすいメカニズムを内包しています。
そして、NY株式市場の値動きを決めている資金に比べても、日本からの対外証券投資資金は臆病なのだと思います。結果、米国株式が落ち着いても、ドルの底入れは遅れてしまいがちです。経験的には3~4週間程度遅れてしまうことがあります。
米国株式が2月上旬の安値を割れないなら、今週辺りがドルの底値となり、日本株も買い場ということになります。
【その2】チャートパターンを研究
底値で投資する第2の方法は、NYダウのチャートパターンを研究する方法です。今回NYダウが底割れしてしまうならば、1929年の大恐慌と同じように、ドナルド・トランプ大統領による保護主義政策が悪材料でしょう。
さらには、1987年のブラックマンデーと同じく、欧州が米国に経済政策で応戦することが拍車をかけることもあり得ます。加えて、1994年のように、米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げも悪材料かもしれません。こうした滅多にない悪材料を受けたNYダウの動きには、実は一定のパターンが観測されます。
5週移動平均線と13週移動平均線がクロスした場面を上抜けきれずに反落し、底を割れてしまうパターンです。滅多にはないと思いますが、実はドイツの株価指数はこうした底割れになってきていますので、注意も必要です。
ただし、これらのケースはいずれも底割れから約1週間で底入れするのがパターンです(上図赤点)。もし、NY株式が2月上旬安値を下回ったら、1週間後がNY株式に投資するチャンスと考えて良いでしょう。
この場合は株価の戻りが緩やかですから、慌てる必要はありません。その間にドルの底入れが遅れるかどうかを見極めて、日本株のエントリーのタイミングを考えてください。
なお、大恐慌の時(1番目のグラフ)のように、底割れ1週間後の安値をさらに下回るようだと問題は複雑です。ただし、今回は米国株の急落が米国経済や11月の中間選挙にとって良くない事と理解されると思うので、このケースにはならないと期待しています。
安値買いが急落リスクヘッジの最善策
「下げ三日」といわれる急な下落相場はベテラン投資家でも避けることが難しいですが、上記のように「上げ百日」の初めのうちに買う方法は存在します。安値で買うことが、今後の急落によるマイナスを事前に補う最良の方法だといえます。
筆者の担当回では、相場格言やマーケットのメカニズム、投資法に触れながら、現在の相場見通しを紹介したいと思います。読者の運用資金だけでなく、読者の相場リテラシーにプラスとなると幸いです。この相場リテラシーこそが、読者のより大きな財産になると信じています。
(文:大和証券 エクイティ調査部 兼 投資情報部 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治)