黒田総裁:物価2%を実現するまで適切な金融緩和を続けていく

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  • 出口について適切な時期に議論して示す必要はある
  • 長短金利操作は緩和の本質部分、マイナス金利中断は考えられない

日銀の黒田総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

金融緩和からの出口を巡る発言が円高を招いたことを受け、日本銀行の黒田東彦総裁は6日、参院議院運営委員会の所信聴取後の質疑で、「2019年度に直ちに出口を迎えると申し上げたわけではない」と述べ、自ら火消しを図った。

  黒田総裁は「2%の物価目標が19年度ごろ達成される可能性が高いというのが私どもの考え方」とした上で、「そういうことであれば、そのころには出口をどう進めていくか議論になっているだろうと申し上げただけ」だと説明した。

  2日の衆院での質疑では、物価目標について「19年度ごろには2%に達成する可能性が高いと確信している」と述べ、「当然のことながら、出口というものをそのころ検討し、議論しているということは間違いない」と明言した。発言を受けて為替市場では円高が進行した。

  一方、この日の質疑では、出口時には「短期政策金利とバランスシート調整が論点になる」との見解も明らかにした。具体的な手段や時期について議論するのは早いとしつつ「いろいろな手段を持っており、その時の経済雇用金融情勢を見て適切に動かしていく」と述べ、「適切な時期に議論して示す必要はある」との見方も示した。

金融緩和弱めること考えず

  また、2%物価目標まで「まだ道半ばで距離がある」とした上で、「目標を実現していない段階で、金融緩和を中止する、弱めるというのは考えられない」と述べ、金融緩和を継続する考えを改めて示した。

  短期政策金利マイナス0.1%、10年物国債金利0%に設定し適切なイールドカーブ(金利曲線)を形成することは、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の「本質的な部分」だと説明。金利は物価動向によって「調整されることはあり得る」ものの、「今の時点でマイナス0.1%の金利を引き上げる、マイナス金利をやめることは考えられない」と言明した。

  さらに「今の時点で長期国債が買えなくなる、というのは当面考えられない」とも語り、国債買い入れが限界に近づくとの市場の懸念に反論した。

  物価水準については「経済は大きく改善したが、2%目標に達していないのは極めて残念」と述べ、「日銀総裁をまた拝命することになれば、全力を挙げて目標を達成したい」と強調。そのために「賃金上昇が極めて重要なファクターになる」とし、今年の春闘の水準が3%になるかどうかを注視していると語った。

  黒田総裁は就任直後の13年4月、2年をめどに2%の物価目標を達成すると宣言し、異次元緩和を導入。物価が持続的に下落するデフレに歯止めはかかったものの、1月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.9%上昇にとどまり、達成時期は6回も先送りされた。

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