社会とぎりぎり握手できる、ちょっと変な僕ら

湘南の海を見ながら編 第1回

2018年3月6日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

コアなファンの皆様、お待たせいたしました。クリエイティブディレクター、岡康道氏と、コラムニストの小田嶋隆氏。ふたりの高校時代の同級生が噛み合うような噛み合わないような話を繰り広げ、ジャーナリストの清野由美氏が慈愛に満ちたツッコミを入れる、独特のグルーヴ感でなぜかいつまでもゆるゆる続く「人生の諸問題」。今年も開幕いたします。ちなみに、前シーズン「還暦越えた人生の諸問題」はこちらからスタートしています。それでは、ごゆっくりとお楽しみください。

 2018年は星野仙一監督の訃報で幕が明けました。昭和のスターが、どんどん他界されていき、否応なく年齢を感じてしまいますね。我々もいい年です。今回は、なりたかった自分、なれた自分について語っていただければと思うのですが。

:じゃ、その前に星野さんについて一言。星野さんはエネルギーにあふれたアンチ巨人の人で、みずからの露出を考える広告的センスもある、スマートな方だったと思います。ご冥福をお祈りします。

小田嶋:だったら俺も。相撲協会は、もうだめだと思いますよ。

 あっ、小田嶋先生の蹴手繰りが、いきなり入りました。

小田嶋:相撲が世間を賑わせていますよね。相撲って、伝統文化だという話と、スポーツだという話の両方があって、あちらを立てればこちらが立たずの典型。まず、伝統を守ろうとすると、スポーツとしてのレギュレーションがフェアじゃなくなる。

:だって、同部屋同士は当たらないわけだし、あと、驚いたんだけど、行司って部屋に所属しているんだってね。それ、スポーツとしたら、あってはならない事態でしょう。野球でいえば、審判がチームに所属しているってことだから。

行事はプロデューサーであって審判じゃなかった

小田嶋:「行司」って字を見れば分かる通り、本来は審判ではなくて「行を司る人」、つまり興行を運営するプロデューサーなんだよね。実際、相撲って歴史的には興行が先にあったものなのだから、それは分かる。でも現在の世で、審判がプロモーターだったり、プロデューサーだったりするのは、理屈としてはあり得ないよね。

:審判でありながら、むしろ審判をしないことが務め、みたいなヘンなことになる。

小田嶋:相撲協会って、その非合理的な理屈がまかり通っているところなのよ。部屋というのは選手の育成機関であり、所属チームでもあるんだけど、相撲は個人競技にもかかわらず、部屋同士の人間が当たらないからオープンな個人競技にはなっていない。しかも、8勝7敗と7勝8敗では、力士にでかい差が付くわけだから、1勝がともかく重い。ということで、そもそも星の貸し借りが起こらざるを得ない仕組みになっている。だから、当然、そういうことは起きるよね。

:まあ、そうだよね。

小田嶋:そのような設定にしていること自体が、すでにどうかしている。じゃあスポーツとしてちゃんとルールを整えて、レギュレーションも整備して、ということになると、相撲の伝統が全部なくなっちゃうわけだから、どっちにもできない。そういう矛盾した枠の中で、改革だとか、膿を出せとか、耳当たりのいい適当なことが言われているけれど、できっこないよ。

:もう一つ難しい問題だと思うのは、相撲は神事だといっていることだよ。

小田嶋:そうね。神様に奉納する何とかだという建前になっていて、実際に奉納もしているんだけど、日本人が何かをやる時に、神様を巻き込むという形は、組織が責任を取らないエクスキューズの常道なんだよ。

:大日本帝国軍だね。

小田嶋:大日本帝国もそうだし、国家神道もそうだったし、やくざが盃ごとをすることも、日本では全部神事なんですよ。

:神聖というよりは、神様を持ち出して無責任の受け皿にしている。

小田嶋:要するに、これは神の名においてやるんだよ、だから誰の責任でもないんだよ、という話で、相撲もそういう構造になっているから、あの件はどこまでいっても、どうやっても解決しないと俺は思っています。

:その中において、貴乃花は何をしようとしているんだろうね。

小田嶋:貴乃花は、正々堂々と戦おうという意味のことと、違う部屋同士の人間が飲んだり、付き合ったりするのは、不透明だからやめろということを言っている。

:だったら正しいんじゃない?

小田嶋:この2点はフェアな勝負という意味では正しいんだけど、でも、あの人の言っていることの正しさに、俺が簡単に乗っかれないのは、あの人があまりにも変わり者だということがまず一つ。

:お前が言うのか(笑)。

小田嶋:それともう一つ、あの人はもしかしたら、外国人差別の感情を持っているのかもしれない。単なるフェアで言っているのではなくて、国粋主義的なものを信奉しているんじゃないか。そのあたりがどうも匂ってくる。実際、ブログを読むと、国体とか皇室とかについて、よく書いている。ちょっと思想的にやばい感じがするのよ。

:純粋な人なんだろうけど、純粋な人って要注意な人だからね。

オススメ情報

「人生の諸問題」のバックナンバー

一覧

「社会とぎりぎり握手できる、ちょっと変な僕ら」の著者

岡 康道

岡 康道(おか・やすみち)

クリエイティブ・ディレクター

1956年生まれ。佐賀県嬉野市出身。80年早稲田大学法学部卒。同年、電通に営業として入社。85年にクリエーティブ局へ異動。99年7月クリエーティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

消費者の「満足」の物差しが変わりつつある。

桑津 浩太郎 野村総合研究所研究理事