「相続対策が必要なのは一部のお金持ちだけ」ではありません。
確かに相続税対策は、「多くの資産を相続する一部の人」だけに必要なことかもしれませんが、相続対策は全ての人が念頭に置いておくべきことだと思います。
<司法書士法人ABC代表の椎葉基史さんは、自分の母親が連帯保証人になった借金問題を機に司法書士を目指し、いまでは相続の専門家として活躍している。
「突然1億円の請求が・・・『負債相続』故人の借金に苦しむ人が急増中』では、負債の相続に苦しんでいる人が増加している現実と対策とをお伝えし、2回目の「資産だと思ったらまさかの負債…『不動産相続難民』が急増中」で土地や家屋の価値がなくなり、相続しても不動産ならぬ「負」動産相続となりうることをお伝えした。
では「相続」を考えたときに本当に知らなければならないことにどんなことがあるのか? 今回は「負債相続で泣かないための基礎知識」を椎葉さんの著書『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」がわかる本』よりご紹介する。
故人には家族さえ気づいていない借金があるかもしれません。
家族も知らないうちに故人は誰かの連帯保証人になっていたかもしれません。
相続しようとしている不動産は資産であるどころか、財産を食いつぶす負動産かもしれません。
後になって、とんでもないものを相続してしまった! と後悔しないためにも、正しい相続の知識を持ち、他人ごとなどと考えずに、しっかりと相続対策をするようにしてください。
大事な人が亡くなった直後は、何もする気になれないという人も多いでしょう。
ただ、相続開始を知ってから3カ月以内なら状況に応じて、単純承認、相続放棄、そして限定承認という3つの選択肢を持つことができます。
それにより、負債相続のリスクからも比較的スムーズに逃れることができるのですから、こと相続において初動は非常に大事なのです。
被相続人が亡くなったあと、相続に関して最初にやるべきなのが、相続財産調査、つまり文字どおり、故人の財産の状況を調べることです。
不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借金などのマイナスの財産についてももれなく調査して、故人の財産の全体像を把握することが非常に大切です。
被相続人の資産が多岐にわたっている場合、当然ながら全てをしっかりと調査するには大変な労力を費やすことになります。その後の手続きに進むためには、一定の期限内にその作業を終わらせる必要もありますので、手に負えないようなら早めに相続に強い司法書士や弁護士、税理士などの専門家にご相談することも検討してください。
借金というのは決して自慢になることではないので、周りに知られたくないと考えるのが一般的な感情です。
その結果、被相続人の死後、債権者からの督促状が届いて初めて借金があったことを知ったというケースは決して珍しくありません。
その時すでに、3カ月の熟慮期間を過ぎてしまっていれば、原則として相続放棄することはできませんし、それを覆そうとすれば相当の労力を要します。
つまり、借金は一刻も早く発見するに越したことはなく、早期に発見するためには、積極的に探す姿勢が不可欠なのです。