北陸発庄川上流域 アユよ再び ダムできて90年 遡上する魚消えた
漁場拡大へ放流、調査アユ漁で知られる富山県西部の庄川の上流域で六月ごろ、ダムができて以来約九十年ぶりにアユの姿を復活させる試みが始まる。漁場の拡大を図ろうと庄川沿岸漁協連合会と県水産研究所(滑川市)が連携。稚アユを放流して三年間、成長や定着具合を調査する。 連合会を構成する七漁協の一つ、大門(だいもん)漁協(射水市)の水槽では新たな取り組みを待つ稚魚が育っている。二十八万匹いるうち多くは四~五月に県内の河川へ放流し、一部を水温が上がる六月ごろ、小牧ダム(砺波市)の上流に放つ。鏡時夫組合長は「キラキラ光るアユの姿が見られる庄川に復活させたい」と意気込む。 庄川では、一九三〇年に水力発電が目的の小牧ダムが完成して以来、海から遡上(そじょう)する魚が越えられず、アユは上流域から姿を消した。上流の各漁協が清流を泳ぐアユの復活を望む中、県水産研究所が稚アユを放流しての調査を提案。県内初の試みとして県予算や国交付金を活用して進める。 アユは秋に川の下流でふ化後、海へ下って成長。翌春に川をさかのぼり、秋に産卵を迎えて一生を終える一年魚。ダム上流に放すと海へ下れないが、滋賀県の琵琶湖など一部地域では、湖やダムが河川をせき止め水を蓄えるダム湖を海の代わりにして淡水のみで育つ「陸封アユ」がいる。産卵場所や水温など課題はあるが、庄川上流でも環境に適応できれば、ダム湖を海の代わりにして成長する可能性もある。 放流したアユを目当てに釣り客が集まれば上流域の活性化が期待できる。流域ではイワナなど川魚を食べる食文化があり、研究所の村木誠一内水面課長は「アユを放つことで地域活性化や食文化の拡大につながる」と話している。 庄川は、岐阜県北部の烏帽子岳付近を源流とし、富山湾に至る長さ百十五キロの一級河川。 (山本拓海) 今、あなたにオススメ
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