2014-11-16 23:40:01

PWM制御ファン用ファンコントローラーの製作 (1)PWM制御とは?

テーマ:PC周辺機器

PWM制御ファン。




IntelがCPUクーラー用として採用して早10年近くになるでしょか。

ぱっと回顧してみるとどうもIntelとしてはsocket775世代、
AMDとしてはsocketAM2世代あたりから搭載が始まったようですね。


パルスセンサー付きが当たり前になりつつも、
案外PWM制御ファンは増えていない印象にあります。
実際、メーカー(産業用)のラインナップを見ても、
ここ最近になってやっとPWM制御ファンが増え始めた印象です。



○PWM制御とは?
PWM制御ファンの世界に限っていえば、
電源電圧を変えずに、PWM制御線のパルス信号のON幅を変えることで
ファンの回転速度も変える機能です。

PWM制御対応のファンのみがこの機能を使用できます。


PWMとはPulse Width Modulation(パルス幅変調)の略称で、
名前の通りパルスの幅を変調(変化)させることを意味します。
スイッチングDC-DCコンバータの制御にもよく使われる手法です。


一般にPWM制御というと周波数(1秒あたりのパルスの数)も決まっています。
このパルスのHigh側の割合を「Duty(デューティー)」と表現します
0%が最も遅く、100%で最速になります。

CPUクーラー用ファンなどのPWM端子は
Lowが0V、Highが+5V、周波数が25kHz(40μsecに1発)です。

※25kHzという仕様は
 
山洋電気の技術資料に記載されているものに準拠 、といたしました。
 リンク先の右側、DCファン技術資料より閲覧できます。

 また、Intelのリテールクーラーの仕様も同じく25kHzです。

 第4世代CoreシリーズのThermal Mechanical Design Guidelines

 Table 6などに記載されています。

後にわかったことです が、どうも実際には

 M/BのPWM制御の周波数はメーカーやモデルでばらばらの模様です。

 一応、ここではあくまでも25kHzとして説明を通します。



FAN Duty

 Duty=0%であれば、0Vの一直線。

 Duty=50%なら、0Vと+5Vがちょうど半々。
 Duty=100%なら、+5Vの一直線。


ちなみにPWM制御ファンのPWM信号端子(4番ピン、写真の青線)は
(ファン内部にて)オープンコレクタでHigh側にプルアップされる仕様
になっています。
以前、ぐるっぽで質問があがったこともありますが、
3ピンのファンコネクタに
PWM制御対応の4番ピンのファンをつないでも、まったく問題ありません

 ※ただし周辺部品に干渉なきこと。




このとき、接続されない4番ピンはファン内部でずっとHigh側にプルアップされたまま。

つまり自然にDuty=100%固定になり、普通のファンと同じ振る舞いになります。



○PWM制御ファンのメリット
(1)省エネ
最大のメリットは、速度可変に余計な電力を使わない点です。


従来のファンの場合、ファンの回転速度を(低い方に)変化させる場合、
ファンにとっての電源電圧を降下させる必要があります。
降下させるには
 ・抵抗をファンと直列に接続し、抵抗に電圧分担させる
 ・電源そのものをDC-DCコンバータで変換する
のいずれかが簡単ですが、いずれの場合も変換にロスが生じます。

ファンコントローラーは
 ①非常に簡易なもので可変抵抗(ZALMANの「FAN MATE 2」 など)、
 ②市販されているものの多くが電圧可変のシリーズレギュレーター(ドロッパー)、
 ③一部高級なものでスイッチングレギュレータ
と分類できますが、
①と②は電圧降下分をすべて熱(ロス)にしてしまうため電力の実使用効率が低く、
③でもDC-DCコンバータの変換ロスで概ね10%程度は無駄が出てしまいます。

たとえば、こんなファン。


ファンのモデル

これは以前作成した仮想ファンモデル (+12V定格時0.1A、消費電力1.2W)ですが、

仮にこのファンを8V(+8V時0.07A、消費電力0.56W)で使いたいとき、
 ①可変抵抗:(12-8)×0.07=0.28W
 ②シリーズレギュレーター:(12-8)×0.07=0.28W ←実は①とまったく同じ
 ③スイッチングタイプ:8×0.07×(1-0.9)=0.056W ※コンバータの効率が90%の場合
という変換ロスが生じてしまいます。


さて、PWM制御機能は、そもそもファン自体が

回転速度そのものをコントロールしてしまうため
電源電圧を+12Vから変える必要がありません
つまり、電圧変換ロスが生じないのです
しかも(比例ではないにしても)回転数が減少すれば消費電流もきちんと下がります。

よほどエコを意識するなら、PWM制御ファンを、PWM制御で用いるほうが得策です。
 ※強いて言えばPWM信号の吸込/吐出電流が最大1mAなので
  5mW(=0.005W)程度、信号に伴う消費電力がありますが、
  それでもスイッチングコンバータと比べても微々たる物です。
  Duty 100%のプルアップ時は、それも流れませんし。


しかもファンとしては従来品と何ら変わりませんから、
電源電圧によるファンコントロールを行うこともできますので、
PWM制御ファンは従来型のファンコントローラーでも使えるわけです

そういう意味では、イニシャルコストさえめどがつけば
積極的にPWM制御ファンを使いたいところです。
(ほしいファンにPWMモデルがあればよいのですけどね)

 ※PWM制御と電圧制御はプルアップが働く電源電圧が+5V+α以上であれば

  併用できなくはないですが、メリットが少なく避けたほうが無難です。

(2)絞りすぎによるファン駆動不良に悩まされない  ←追記あり
従来の電圧可変のファンコントローラーの場合、
電圧を低くしすぎるとファンが回らない可能性があります

始動トルク不足が大半の理由です。
(基本的にPC用のファンは電源電圧(+12V±10%)以外での
 動作保証は謳われておらず、
 当然ながらどの程度まで電圧を下げても動くのかは
 ファンの種類だけでなく個体差によっても変わります)


ファンコントローラーによっては始動時に
数秒ほどフル回転(=12Vを出力)させるタイプもありますが、
そもそも始動トルクが賄いきれないような
低い電圧を常用にして無理に動かすことは
システム設計上、当方は過ちであると考えます。
(それなら、もともと低い回転数のファンを選定すべきです)

ファンコントローラーは汎用品ですから、
ファンの始動特性を考慮なんてしていません。
この辺りを考慮、設計、設定、運用するのはあくまでもユーザーです。


PWM制御ファンは、電源電圧はあくまでも+12Vで、
Duty0%~100%の間の、どの領域で常用しても問題ないように
メーカーが設計、保証したものですから、
どのようなDutyで動かしても、(故障時、汚損時を除き)
故障の心配をする必要がありません

 ※ここでいう「汚損」は、塵埃によってファンの軸周りが汚れ、
  回転トルクが上昇して回りづらくなった状況を指しています。


   !! 追記 !!

「常用しても問題ない」ことには間違いありませんが、

Duty0%時に回転数が0になるファンも存在します。

当方としてはどのDutyであっても回転数が0にならないような

ファンの選定をお勧めいたします。

というのも、回転数が0(=ファンレス)の環境下の放熱考察は

まったく別次元で考えなくてはならないからです。

ゆるゆるでも風がある場合とファンレスは雲泥の差になります。



(3)デジタル制御が極めて行いやすい
M/BのPWM端子付きポートは大半の場合、
M/BのBIOSや付属(もしくはダウンロード)する回転制御ツールで
スピードを任意に変えることができます。
M/B付属機能でコントロールすれば費用もかからず、場所も取らない
これだけでもメリットといえます。

PICを使いこなせる方なら非常に簡単に制御できるはずです。



(4)最小回転速度で動かすことが簡単
先ほど『PWM信号端子(4番ピン)はオープンコレクタで
High側にプルアップされる仕様』と書きました。
4番ピンをGNDに直結すれば、Duty=0%となり、
たちまちそのファンの最小回転速度にすることができます

GNDの1番ピンと短絡するだけでOK

これ、意外と使える技(技というほどでもないですが)だと思います。

 ※くれぐれもほかのピンと短絡しないようにご注意を。



...と、なかなか良いこと尽くめのPWM制御ですが、
残念ながらM/B上のPWM制御対応のFANコネクタは数が限られており、
また従来のつまみによる回転数制御を行えた方が
便利だなぁと思う方は少なからずいるはず。


そんなPWM制御ファンをPWM制御でき、
かつ従来と同じような、ボリュームによる使い心地である
そんなPWM制御ファン専用コントローラーを製作してみたいと思います。


が、すでに説明が長くなりましたので、
具体的な作成の話は次回に回すことにします

(というか、まだ回路検討しか行っていないのですけどね)


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コメント

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6 ■Re:無題

>MINIMIさん
どうも、コメントのほどありがとうございます!!

案外、「PWM制御」って言葉だけを聞いても
なかなかピンときませんよね。
コンバータ制御にも使用している言葉なだけに
混同してしまう方も少なくないと思います。

高速ファンを備え付けて、これを
普段使いではゆっくりまわす、といった方策こそ
今回のPWMファンコントローラーの
一番役に立つ使い方でしょうね!
始動にも気を使わずに済みます♪

5 ■無題

つい最近まで倉庫で動いていた自作7号機(Xeon E5410 x2)のLGA771純正ファンがPWM制御でしたが、組み上げた時はその意味を知りませんでしたw

制御されていても
無茶苦茶煩かったのは言うまでもないですがw

つまみでPWM制御ができるのは良いですねー
6000RPMや5000RPMの12CMファンがでっかいコンデンサを付けなくても調整できそうですしw

4 ■Re:無題

>bloomさん
どうも、コメントのほどありがとうございます♪

手軽で省エネなファンコントロール制御手法といえますが、
まだまだ対応ファンがさほど多くないのが
もったいないところですね~(>_<)

ごめんなさい、「PVM」の意味が
調べてもわかりませんでしたm(_ _)m

さすがbloomさん!!
この方法、ちょっと応用すればLEDの調光も可能です。
信号電圧は5Vですから、Dutyでそのまま
電流比をコントロールできてしまいます
(電流制限抵抗は必要です、念のため)。
ただし、今回考えている回路ですと、
吸込/吐出電流が数mAのレベルしかありませんので
そのままLEDをドライブするのはちょっと厳しいです(>_<)
一度トランジスタをかませることになりますね。

3 ■無題

完全に理解した訳ではないけど、更なる省エネシステムですね♪
PVMも何かどこかで電気をカットしてるねでしょうか?
LEDの調光には使えるのかな???

2 ■Re:無題

>みかんさん
いつもコメントのほどありがとうございますm(_ _)m

以前、電圧可変型のものや
ダイオードが複数並んだものは作っているのですが、
PWM信号をいじるものはこれが初めてですね。

とりあえず週末に組み上げて、
動きますかどうか(苦笑)
動かないことには記事になりませんので...(爆)

1 ■無題

おお~、自作ファンコンとは、これまたスズメさんらしいですね!
オレでは考えもしないことですよ。w
というか、PWMってこういうものだったんですね。全然気にしてませんでした^^;

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