「女王蜂」上司が女性部下を潰す不都合な真実

男性陣も嘆く女性幹部が増えない真の原因とは?

2018年3月6日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(写真:Ardea/アフロ)

 書こうか書くまいか、この期に及んで悩んでいる。

 先日、女性上司を持つ30代の女性たち数人にフォーカスインタビューを行ったのだが、その内容がかなり衝撃的で……。書き方をちょっとでも間違えると、ややこしい問題に発展しそうな気がしているのだ。

 テーマは「女王蜂症候群」──。
 もちろん、銀座のクラブの名前ではない。

 「女王蜂症候群(クインビーシンドローム)」は、今から50年近く前の1970年代、米ミシガン大学のグラハム・ステインズ、トビー・エプステイン・ジャヤラトナ、キャロル・タブリスの研究論文「The queen bee syndrome」( Psychology Today, 1974)で使われた言葉で、男社会で成功した女性が、自分の地位を守るために他の女性の活躍を快く思わない心情を表している。

 “女王蜂”は、男社会の中で必死で頑張ってきたエリート。育児も仕事も完璧にこなすスーパーウーマンで、仕事もできるし、身体もタフ。職場のマチョタイム(会社人間時間)に適応し、夫とも対等な関係を築いている。

 「この地位を手に入れられたのは、自分ががんばってきたからだ」という自負が強く、今の地位も気に入っているので女性全体の地位向上には至極冷淡というのが当時の解釈だった。

 で、数年前。米国で再び「女王蜂症候群」という言葉が注目され、様々なメディアで特集が組まれるほど話題となる。

 そのきっかけのひとつが2013年3月に出版され、瞬く間にベストセラーになった『Lean In: Women, Work, and the Will to Lead (邦訳:リーン・イン:女性、仕事、リーダーへの意欲)』。

 著者のシェリル・サンドバーグ氏は2012年、Facebook初の女性役員に就任し、同年『タイム』誌が選ぶ、世界で最も有力な100人に選出されている超エリートである。

 米ハーバード大学経済学部を首席で卒業し、ハーバード・ビジネス・スクールを修了後、米マッキンゼー・アンド・カンパニーで勤務。ビル・クリントン大統領時代に財務長官のラリー・サマーズの下で働き、2001年にGoogleに移籍。2008年にFacebookに引き抜かれた。

 と、書いているだけでため息が出るような華々しい経歴なのだが、やさしい夫(2015年に他界)、2人の子どももいて、facebookなどの保有株で10億ドル以上の資産を持つとされるなど、仕事も家庭も社会的地位も、すべてを手に入れているような女性である。

 その彼女が、
「男女平等を実現するには、リーダーとなる女性がもっと増えなければならない。働く女性たちはもっとキャリア構築に前のめりになるべきだ」と説き、「女性が自分の野心を成し遂げたいなら、対等な立場のパートナーが必要」
 と断言。

 前のめり……か。個人的には、ほっといてくれ、と思うが、キャリア志向の高い女性たちからは圧倒的な支持を得た。

オススメ情報

「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

一覧

「「女王蜂」上司が女性部下を潰す不都合な真実」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

消費者の「満足」の物差しが変わりつつある。

桑津 浩太郎 野村総合研究所研究理事