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「バーチャルビューティ」シリーズ
柴田氏が編集長を務めた元祖「CGアイドル」本。それぞれに多彩な作品集と、制作ハウツーが詰まって見たい人・作りたい人に大売れした歴史的ムック。海外版を含めて全7冊発行された。 |
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「アイドル」を好きになった経験って、男女問わずあるものです。かく言うワタクシも、ローティーン時代は“イヨちゃん”、ハイティーン時代はオニャン子の“マリナ”に熱を上げたものです。……おっと、かな~り正確に年がバレますなグググググ(笑い声)……。
まあソレはともかく、アイドルのあり方も時代とともに変化していくようで、世紀末から現在にかけて「CGアイドル」というものが激増したということですぞ。いったいこの10年足らずの期間に、どんな背景があったのでしょうか。
マッキー ……ふう、はじめまして。エキニュー総研のマッキーです。以後お見知りおきをグググググ(笑い声)……。
柴田さん ググ? あ、はじめまして柴田です……。
マッキー いやあ、夏はアツいですな。駅から歩いただけで汗が出てきますよ。ふー、アツいアツい。
柴田さん あ……それじゃ、落ち着くまでの間、「CGアイドル」の歴史を説明いたしましょ……。
●日本の「CGアイドル」は1986年の「オマケ」がルーツ
日本の「CGアイドル」を語る上で、「Shade」の存在は無視できないでしょう。「Shade」とは、モデリングからレンダリングまで、「CGアイドル」を制作するためのすべての機能が詰め込まれた3Dグラフィックソフトです。現在の「CGアイドル」作家のほとんどが、これを使っている、あるいは使っていたと言っていいでしょうね。
この「Shade」は今でこそ5万円ほど(「Shade7 standard」)で買えますが、1986年の登場当初は200万ほどする極めてプロフェッショナルなツールでした。これに「プロが作ったサンプル」として同梱されていたのが、SF画家として有名な加藤直之氏の「沈黙の美女」だったのです。フルCG、フルポリゴンで描かれているこの作品こそが「日本最初のCGアイドル」と言ってもいいでしょう。
以降18年(!!)も経った今でも「沈黙の美女」は、「CGアイドル」業界にて「これ以上の傑作はない」と言われている名作です。版権などの関係上、ここではお見せできませんが、今でも「この作品に影響を受けた」というクリエイターは後をたちません。
●CGアイドル世紀末(1998年~)の活躍
「Shade」は、日本の3Dグラフィック界において革命的なツールとなりましたが、プロ用という敷居の高さからか、以降10年以上にわたって、目立った「CGアイドル」が出現することはありませんでした。もちろん「CGアイドル」という言葉も概念もありませんでしたがね(笑)。
そして1996年に革命が起きます。「バーチャルガール伊達杏子」の出現です。
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伊達杏子
ホリプロの依頼により、VSL社で1年間にわたり開発され、1996年に誕生した元祖バーチャルアイドルとして話題になった。現在はバージョンアップされ「KIT金沢工業大学」のナビゲータとしても活躍中。2002年には妹も登場(調査リポート2参照)。(バーチャアイドル[DK96][伊達杏子])
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従来までも女性のCGグラフィックは多く制作されましたが、これほどまでに個性的で魅力的なCGは初めてでした。その後、彼女はなんとタレント事務所「ホリプロ」に所属。「CGアイドル」という概念が確立された瞬間です。
そして「CGアイドル」の存在を決定付けたのが、スーパーCGアイドル「テライユキ」です。
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テライユキ
グラビアにCMに歌手活動に大活躍した、漫画家くつぎけんいち氏の傑作CGアイドル。多彩な活動・認知度ともに、現在でもナンバーワンの座は揺るぎないトップCGアイドル。(Yuki
Terai Official Site)
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©Ken-ichi
Kutsugi / extage2003 All rights reserved. |
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「CGアイドル」を知らない人でも、彼女を記憶している人は多いでしょう。1998年から2000年にかけて、彼女は「ヤングジャンプ」などのグラビアを飾っただけでなく、写真集、CD(!!)、CMとまさに大車輪の活躍をしたのです。
●新世紀(2001年~)CG美少女の大量出現
彼女らの活躍を受けて、多くのクリエイターたちが動き始めます。この頃には3Dグラフィックソフトも一般ユーザーにも充分に手が届く価格になっていますし、全般的なハードの性能もアップしていますので、彼らも「趣味」の範囲でも制作に取り掛かることができたわけです。ソフトがウン十万もして、メモリ64~128MB程度のマシンでギコギコやっていたら、とても「気軽に」というわけにはいきませんよね。
とにかくこの時期から、有志のクリエイターたちが制作した、質のいい「CGアイドル」が激増します。ハイパーリアル(超写実的)のトップCGアイドル「飛飛(フェイフェイ)」もこの時期誕生。
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飛飛(フェイフェイ)
ハイパーリアル路線の金字塔。まるで本物の美少女である彼女は、誕誕生後、ニホンサムスン、上海東方テレビなどさまざまな企業のイメージキャラクターとして活躍し、さらには写真集や関連グッズ、DVDなども発売し、生身のアイドルと変わらない存在感をアピールした。(FEIFEIホームページ
)
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©FeiFei
1999-2004 Blue Moon Studio Inc. / e frontier, Inc. |
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写真集に関連グッズ、DVDまでもが発売され、生身のアイドルとの距離が最も近いCGアイドルとなりました。
マッキー なるほど。活動内容といい、ルックスといい、生身のアイドルとの境界線がどんどん曖昧になっている気がしますな。これで一気に「CGアイドルブーム」ですか。
柴田さん いや、正直にいうと、テライユキや飛飛(フェイフェイ)などが作り出した、一時の「CGアイドル」ブームに比べて、現在は沈静化していると言わざるを得ないですね。商業的に成功するにはまだまだ敷居が高いようです。3Dグラフィックソフトを使っても、個人レベルでできるのは、静止画が中心です。彼女らを生身のアイドルと同じような活動をさせるには、“動く”ということが絶対条件でしょう。そして、生身のアイドルと遜色なく動かすには、モーションキャプチャなど最新の設備が必要です。つまり、彼女らになんらかの商業的価値を認めて、多大なお金を出してくれる企業が必要、ということなんです。
マッキー 「CGアイドル」自体が珍しかった時代は、それなりに商業価値があったものの、さほど珍しくなくなった今、お金を出す理由がなくなってしまった……。言ってしまえば生身のアイドルの方が安上がりだということですな。
柴田さん ううむ、難しいですね。ただ、ユーザー数は確実に増えているというのも事実。ユーザーが増えたことによって、質もウナギのぼりに上がっていますよ。
たとえば、ここにCG美少女界の世界ミスを決定する「Miss
Digital Worldコンテスト」のオフィシャルサイトがあるんですが。…どうです?
日本のCGアイドルと比べて。
マッキー むむむ。確かに超精密で、相当な技術力は感じますが……。
柴田さん そうです。実際“かわい”くないでしょう? 世界ではリアルばかりを追求して、アイドルとして最も大切な“かわいらしさ”が足りない。
マッキー 確かに「すごい」とは思いますが、“ファン”にはなれませんな。
柴田さん あえて言いましょう。CGアイドルは日本が世界一です。なのに、このコンテストに日本人が参加していないんですよね。絶対優勝できると思うんだけどなぁ。
マッキー おおっ、優勝すると5000ドルですか!
柴田さん そうなんですよ。ぜひ日本の作家さんにも出場いただいて、日本の実力を世界に見せ付けて欲しいものです。私のサイトで日本語訳しておきましたので、興味がある人は、コチラを。 |