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三木駅全焼、沿線の住民からは路線廃止の引き金にならないかと不安の声

更新:03/05 19:21

 4日、兵庫県三木市の住宅で火事があり隣にある神戸電鉄三木駅の駅舎を含む3棟が全焼しました。三木駅がある神戸電鉄粟生線は乗客の減少が続き路線の存続が危ぶまれていて、沿線の住民からは火事が路線廃止の引き金になってしまわないかと不安の声が上がっています。

 建物をのみこみ、激しく燃えあがる炎。4日午後6時前、三木市の木造2階建ての住宅から火が出て隣にある神戸電鉄三木駅の駅舎に燃え移りました。5日の実況見分で、火元の住宅から1人の遺体を発見。この家に住む榎本俊郎さん(68)の安否がわかっておらず、警察が身元の特定を進めていますが、この火事で80年の歴史を持つ三木駅の駅舎も全焼。もともと無人駅で利用客や駅員にけがはなかったと言いますが、焼け落ちた駅舎を見た地元の人からは不安の声が上がりました。

 「なくなったら本当に困りますよね。若い子たちの交通手段なんで」

 というのも、三木駅がある神戸電鉄粟生線は乗客の減少が続く赤字路線で、以前から廃線の危機に瀕しているのです。

 田畑に囲まれた単線を走るあずき色とクリーム色の電車。粟生線は新開地をターミナルとする神戸電鉄の鈴蘭台から西に向かう路線で、終点は小野市の粟生駅。今回、火事があった三木駅はその途中にあります。かつては沿線のニュータウン開発が進み、乗客が電車からあふれるほどだったといいますが、今ではピーク時の半分以下に減少。昼間の運行本数は1時間に1本となりましたが、それでも赤字は解消できず自治体の支援などでなんとか路線を維持している状況です。

 この危機に立ち上がったのが沿線の小野高校に通う生徒たち。

【小野高校放送部『この窓から』より】
 「神戸電鉄粟生線。小野高生も約7割が通学に利用しています。私たちは神戸電鉄の鉄道事業本部を訪ねました」(ナレーション)
 「粟生線の赤字は10億円です。たくさんのお金を銀行から借りていて700億円あります。今だったら(粟生線事業を)辞められてしまう」(松本修治さん)

 粟生線の危機を伝えるための映像や絵本を製作するなど、路線を維持するため力になりたいと活動を続けてきました。

 「なくなってしまったら、もう二度と戻らないじゃないですか。私たちが頑張らないといけないなって…」(小野高校の生徒(2015年当時))

 しかし、その後も苦境は続いています。少子化で通学する若者が減り現役世代はマイカー通勤にシフト。さらには、三木駅の目の前から出発する三宮行の高速バス。乗り換えも必要なく料金も安いことから人気を集め、神戸電鉄の強力なライバルとなっているのです。

 「乗り継ぎがないんで、バスのほうが気分的に楽かな」(バスの利用者)

 地元で粟生線の存続運動に関わってきた中嶋さんは…

 「何とも言えへん、辛いな。乗らへんから(運行を)やめる。やめるから乗れへん。悪循環や。どこで辛抱するかや」(中嶋英雄さん・78歳)

 神戸電鉄は5日、粟生線の本数を減らして運行。三木駅では被害のなかった上り線のホームだけを使い上下線を運行しましたが、特に問題はなかったといいます。

 「バスの方が便利な面もあるかもしれないけど、街を象徴するものとして鉄道も大きな役割を持っている。粟生線を残したいという方がいっぱいいて、励ましも受けてますので、なんとか今回の被災からの復興を粟生線の存続につなげていけたら」(神戸電鉄 松本修治経営企画部長)

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