最初の仮想通貨とされるビットコインの起源は、2008年に発表された一つの論文といわれている。執筆者は「サトシ・ナカモト」。日本人のような名前だが、正体は分かっていない。英語で書かれた論文には、ビットコインの仕組みが紹介されており、結論にはこう記されている。
《信頼関係を必要としない電子取引システムを提案した》
これこそが、サトシ・ナカモトが描いた、通貨の新しい“世界”だ。一般的に通貨は国や中央銀行が発行する。ただの紙切れやコインに、「信頼」のある国などがお墨付きを与えることで、価値が生まれ、売買などの取引に活用される。
しかし、仮想通貨は実態もなければ「信頼」の裏付けもない。あくまでも「価値がある」と信じる人や事業者の間で取引が成立し、流通している通貨なのだ。
論文が発表されたのは、リーマン・ショックが発生した年に当たる。当時は米政府への不信から米ドルが大幅に下落。ジンバブエ政府の失策を受けてハイパーインフレとなり、同国の通貨が紙切れ同然となった時期とも重なる。そのため仮想通貨の利用者の中には国家などが介在しないという、考え方そのものに魅力を感じている人も多い。
既存の通貨への挑戦ともとれるサトシ・ナカモトの論文は、翌年には複数のプログラマーにより具現化された。しかし、実際には価格は乱高下し、通貨として決済に使われるというよりは投機的要素が強いのも事実だ。今年1月には仮想通貨交換業者コインチェックから、多額の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出するなどトラブルも絶えない。
形も信頼の裏付けもないモノに、なぜ価値を見いだすのか。サトシ・ナカモトが見た夢はどこに向かおうとしているのか。仮想通貨を多角的に検証する。(随時掲載)
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